今週のマネジメント 成長する企業が人を動かす際に工夫しているポイントとは?

先日、ある親方日の丸の団体からいくつかの資料の提出を求められました。

その中で「なぜこの資料も要るのか?」疑問に思ったので聞いてみたところ、担当者は「私も詳しくはわからないので、調べてから折り返し電話します」とのこと。その後、電話をいただいたのですが説明がちぐはぐで、ただ誰かに言われたことを理解もせずに話している感があった為、正直に「よくわからないんですが」と言って詳しくお聞きしたところ、何故か

 「出していただきたくないというわけですか?」

まるで自分の説明がうまくいかない点を棚に上げ、理解してくれないあなたが悪いと言われているようでした。一体この担当者は今まで何人に対してそんな対応を繰り返してきたのだろうか?と心配になりました。

 

企業内にこんなことを口にする方はいませんか?

 「会社の方針なんだから」

 「まず言われたことを素直にやりなさい」

 「業務命令だ!」

 「口の前に手を動かせ」

 「右腕をつくりなさい」

 「彼は全然ダメだね、長距離異動で確定」

  

ある社長はこうおっしゃいまいた。

 「伊東さん、従業員の従って、従うという意味なのにそんなことも分からない人が多いんですよ」

企業のトップが社員やスタッフに対して判ってもらおうとせず、自らの地位や権力で人を動かそうとしていますと、自然にその考え方も、社員やスタッフには伝わっていきます。

それはまるで

 「君達は私のように、伝えるという行為に磨きをかける努力はしなくていいんだよ」

 「権力を手にしたら、それを振りかざして部下達を従わせればいいんだ」

と公言している事と同じくらいに。

そんな企業には、伝えるというアクションに磨きをかけないのが当たり前、更にあらゆる仕事に対しても創意工夫するといった視点が欠如したままのまるでロボット?と思ってしまうような人達ばかりが次々に誕生していってしまいます。

社員やスタッフは言われたことしかやらず、次の一手を考えるのはリーダーだけ。

日常に交わされる言葉は

 「〇長、困ったことがありました。どうしますか?」

 「大変です。すぐ来てください」

自己解決するという意識もありません。

思わず「それは自分で解決しなさいよ!」と叫びたくなる方もいらっしゃることでしょう。

しかし彼らは今まで自分で考える、工夫するといった努力をしてこなかった方ばかりなので、いわば身から出た錆なのです。

組織のリーダー達が「自らの伝え方に疑問を持って、より分かりやすくしなければ」という努力を後回しにしてきたツケが「いざ会社を大きくしていきたい」という重要な局面になって返ってきてしまうということです。

普段から「素直に言われたことをやりなさい」という環境でも何とか結果を出してきた人達も数年経過すればそこそこの役職につくことになるでしょう。

しかし彼らの繰り出す次なる一手はコケることが多くなります。何せ自分が打つ一手の精度を上げなければ・・・という考えが弱いからです。

その損失はバカになりません。やがて会社の業績を上げられる有効な一手が途絶え、成長がストップしてしまうことになるでしょう。

 

では成長している企業は何が違うのか?

よく勘違いされるのは

 会社のトップが自らの伝え方の精度を上げていこうと努力を重ねている

です。

残念ながらこれだけでは社内の人達全員が「社長のように自らを鍛え上げていかなきゃ」とはなっていきません。

重要なのは

 会社に「社内で働く誰もが、自らの伝え方の精度を上げていく努力を重ねたいという流れ」をつくりあげる

ということなのです。

 

流れができあがっていますと、各リーダーは権力や権限を振りかざして人を動かそうとせず、どうやったら社員、スタッフにうまく考えを伝えられ、動いてもらえるようになるのか?「理解しない部下が悪い」などと決め付けることはなく、自らのマネジメントがまだまだ弱い、もっともっと鍛えなければ、と努力と工夫を重ねていこうとなっています。

社員やスタッフ達は会社から「またやりたくない事を無理矢理指示された」など窮屈感、やらされ感を感じる事はありません。

「なるほど! じゃあこうしてみよう」と誰もが深く理解した上で、自分の強みを上乗せでき、高い結果を出すようになります。 

また、常に上司のわかりやすいマネジメントを直接受け続けていた人達は、いざ自分が人を動かす立場になった時

 「そういえば○長の〇〇さんはこんな表現をしていたな」

と自省することが基本となり

 「自分の伝え方はまだまだ未熟だ」

 「わかりやすい伝え方にもっと磨きをかけなければ」

というスピリットが会社に根付き、誰もが権力や役職の力に頼らないマネジメントを実現できていくのです。

更にその考え方はマネジメント面だけに留まらず、日々繰り返している仕事にも直結します。

 「自分は何のために、何故この仕事をやるのか?」

それが良く理解できている人には「努力や工夫をするのは上層部の仕事!」「会社や幹部、〇長が悪いんだ」という概念はありません。誰かに指摘されなくとも

 「結果が出ないのは自分のやり方が悪いんだ」

 「もっと自分で考えて何とか解決策を見つけよう」

と考えます。

人を動かす立場の人達がいちいち

 「どうしたら結果を出せるのか? 君達はもっと考えなさい」

など、何度も何度も口にする必要さえありません。

彼らが上長に向けて発する言葉の多くは

 「〇長、こうしたいんですがよろしいですか?」

そこには「リーダーに手を貸して欲しい」という甘えは無く

 「GOサインさえいただければ結果を出しますから」

と責任を持ったビジネスマンとして独り立ちできています。

 

流れが出来上がっている組織の一番の強みは「そんな方法もあったのか!」と経営幹部さえも参考にしたくなる工夫が社員や店舗で働くスタッフから日々生まれ続け、会社全体としての次なる一手の精度も日々強化されていくサイクルが確立する点です。

このサイクルは会社の業績を上げていく上で最も重要な要素です。

組織全員の視点や工夫が社歴、役職の壁を飛び越えて凌ぎあえる組織は次の一手が当たる確率も高く、致命的な大コケも少なくなります。

 

人に伝える、動いてもらうことは簡単ではありません。

たった一言を理解してもらうのに一週間、一か月かかることもあります。

更に、社内の誰もが「自分の伝える力を磨かなければ!という流れをつくる」はもっと大変です。

下手をしたら数年~数十年かかることもあり得ます。

 

成長している企業のトップには口下手な人は1人もいません。

「口が達者な人だから社長になったんじゃないの?」という方もいらっしゃるかもしれませんが、私は実際にそんな社長にはお会いしたことはありません。

ただ、どの社長も「どうやったら自分の考えをうまく伝えられるのか?」自らの伝え方を常に客観的に視て「より分かりやすくしなければ」と日々努力を重ねてきている方ばかりです。

そんな方々だけがやがて

 「まてよ、じゃあこうしたら社内の誰もが私のように『自らの伝える力を磨き上げよう』となっていくのではないか?」

と会社を大きく成長させられる「流づくりのヒント」を掴むのです。