今週のマネジメント いまだに店長がシフトINしているチェーンばかり。だから勝っていられる

 「御社では一人の店長に、何店任せてるんですか?」

質問した方の社長は、信じられないといった様子。
「だって〇〇社なんか、朝『店長が居るな』と思ったら、その日の夜まで働いている店ばかりですよ」

 

チェーンビジネスで業績を上げていくには「社員一人で複数店見れる」という要素はとても重要です。
これが実現できれば、得られる利益が跳ね上がるからです。

 

しかしこれは「〇〇君。君は明日からもう一店見なさい」などと「変えられる」ことではありません。
「変えられる」というより「変わってくる」の方が正しい表現と言えます。

実際にそうなった企業では、各店の店長達の仕事がスタッフ達に次々に奪われていき、社長から「〇〇君、もう一店見れるか?」と言われた店長は、まるで待ってましたと言わんばかりに「ハイ!」となっているからです。

 

ここで私は単に「チェーンビジネスの店長は、現場仕事をしていてはいけない」とか「店長には多店舗担当させるべきだ」などと言いたいわけではありません。

組織のマネジメントにおいて重要なのは「一貫性」だからです。

 

会社の方針は各社、それぞれ違います。

自社の方針に沿って、店長はどうあるべきなのか? 「我が社の方針は〇〇だから、店長はこうあるべきなんだ」 という一貫性が無ければ「今でさえ大変なのに、何故もう一店見なければならないのか?」などの疑問の声が挙がることになります。

よって、一貫性が保てないまま「店長にシフトINさせるな」とか「複数店見てもらおう」という行為はお薦めしません。

 

しかしそうはいっても、社長の視点には入れておかなければならない現実があります。

それは
 「店長がいち労働者として動いている間、誰が店舗組織のマネジメントをするのか?」
です。

 

組織のリーダーがマネジメントそっちのけで、いち労働者として動き続けていては、様々な「害」が出てきます。

代表的な例を挙げますと
 ・いつもより努力をした人が「リーダーは気が付いてもくれないじゃないか」と、へそを曲げてしまったり
 ・「さすがにここまで手を抜いたらヤバいかな?」とビクビクしている人が「あれ?平気だったぞ?」「なんだ、もっと手を抜いても余裕じゃないか!」と捉えられてしまったり。

そのようなケースにおいて、果たして

 ・いつもより努力してくれた人は更なる努力をしてくれるのでしょうか?

 ・手を抜いて、楽をしている人が「さすがにもう止めよう」と反省してくれるのでしょうか?

 

 

しかし不思議なのは、それが大手含め、多くのチェーンビジネス企業がいまだに実現できていないという点です。

まるで「スタッフがいないんだから、店長がシフトINするのは当たり前」という企業ばかり。

中には「マネジメントがうまくいかないと店長自らがシフトに入らなければならなくなるからこそ、彼らは本気を出さざるを得ないんだよ」と、安心されている経営者も・・・

 

さて、何故多くのチェーンビジネス企業が、いまだ店長がシフトINして当たり前となってしまっているままなのでしょうか?

 

その理由は
 「マネジメントの仕組みは、社長以外には創れないから」
です。

 

チェーンビジネスは規模が大きくなる程、働く人が多くなり、知名度も比例します。

よって優秀な従業員も採用しやすくなりますし、社長に就く人も優秀な人である確率も高くなります。

その為、こう見る方もいらっしゃることでしょう。

 「優秀な人達ばかりなんだから、店長が複数店見れるように変えるなんて、すぐできちゃうんじゃないの?」

 

しかし断言しますが、マネジメントの仕組みは従業員が創ることはできません。

仮に従業員の中に
 「社内や、店舗のマネジメントはこのような形に変えたらいかがでしょうか?」

 「そうすれば各店長はマネジメントに専念できるようになり、利益もぐっと上がるでしょう」

と提案してきた人が現れたとしたらどうなるでしょうか?

 

その結論は「何も変わらない」です。

 
なぜなら「マネジメントの仕組みの発案者が、社長に指図する」という壁が必ず立ちはだかるからです。

 

マネジメントの仕組みが良い出来かどうか?

それは「社長がいかに少ないエネルギーで、全員の本気を引き出せるかどうか?」で決まります。

つまり社長と発案者には、やがてこのようなやりとりが必ず生まれるということです。

 

 「社長、ここではこれをこのように使っていただけますか?」

 「いえ、違います。こうです」

 「それでは効果がありません」

 「こうするんです」

 

・・・すでにこのやりとりに違和感を感じた方もいらっしゃるでしょう。

そうです、「リーダーに指図するメンバー」という図になってしまっているのです。

さてそんな組織、世界のどこに存在するでしょうか?

これはもはや組織とはいえません。

 

しかし、そこで社長が

 「なるほど〇〇君、もっと教えてくれ」

という姿勢だったとしたらどうでしょう?

 

その場合は、マネジメントの仕組みは創れるかもしれません。

しかし、その代わりに社長は指導力を失います。

さて、指導力の無い社長は、一体何を成し遂げられると言えるのでしょうか?

 

そもそも人は誰かに指図されて、良いものを創りあげる事などできません。

その人が自ら生み出し、創り上げることが重要なのです。

当社のコンサルティングも社長への指図や業務代行ではなく、「社長の仕組みづくりのお手伝い」としているのもその為です。

 

 

別の視点で、なぜいまだに店長がシフトINしているチェーンばかりなのか?

こう見る方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「大きなチェーンほど社長も頭がキレる人なんだから、店長が複数店見れるように変えるなんて、すぐできちゃうんじゃないの?」

 

これを本コラムで詳しく述べますと長くなってしまいますので、結論だけ言いますとマネジメントの仕組みづくりに社長の頭がキレるかどうか?とか、社長の学歴が高いかどうかは、あまり関係がありません。

それまで上手にマネジメントの仕組みを創ってこれた社長の傾向から言えることですが、重要なのは社長ご自身に「社内のマネジメントを変えるぞ」という強い意志があるかどうか?です。

 

もしもマネジメントの仕組みづくりがうまくできなかった場合、社長に待ち構えているのは「〇〇さんは社長に向いてないのでは?」です。

従業員から社長に向けられる不信感は会社の規模が大きいほど高くなります。

よって

 ・苦労の末、やっと社長の座についた人ほど

 ・頭の回転が他の人より早く、リスクを明確に想定できる人ほど

それは恐ろしく見えるもので、ますます社長は「マネジメントの仕組みを創って改革をするぞ!」という決断から遠のいてしまうのです。

 

しかし、社長に「複数店見れる店長が生まれてくる組織にしたい」「何が何でも成し遂げてやる!」という意志があるとすれば、何に気を付けたらいいのか? やってはいけないのはどういったことなのか? など、ポイントをおさえておけば創り上げる事は可能です。

詳しくはこちらをご覧ください。

複数店見れる「店舗経営者」「エリア経営者」の育て方 オンデマンドセミナー
https://www.jcpo.jp/archives/63250

 

 

さて、いまだに店長がシフトINしているチェーンばかりという現状を貴方はどうご覧になりますか?

 

「各店長がマネジメントに専念できる体質に変えるなんて、そんな怖い事はとてもできない」ですか?

それとも「大手や他社がいまだにできていなんだから、チャンスじゃないか!」ですか?