今週のマネジメント リーダーが常にいなければ回らない組織など、誰が望んでいるのか?

 「ここなら(社長に)見られる事は無いですから」

少し前の事ですが、ある会社の女性従業員から話を聞いて欲しいと呼び止められました。

 

彼女は私のクライアントは社長だということをご存じで、特別に何かしてもらえるわけではないとわかっているようでしたが、それでも社内組織に抱いている疑問を聞いてもらいたいとのことでした。

 

「もしかしたら、この会社はきっとこんなマネジメントをされているのでは?」

 

彼女のおかげで、事前にクライアント企業のマネジメントのスタイルを予測することができました。

その為、社長に話を聞いて「やっぱりか」となり、スムーズなコンサルティングへとつながったのです。

 

 

その企業のマネジメントはどういったものだったのか?

 

社長からは「誰もが本気を出し続ける組織」を築き上げたいとのことで、これまで妥協せず苦労してきている背景が伺えます。

しかし残念な事になかなか実現できず、現行の利益率にもご満足されていなかったのです。

 

 

多店舗型ビジネスにおいて、1~2割の従業員しか本気を出さなくなる状態となってしまう原因の1つを挙げますと、それは 「社長が、社内に問題が無いか?不穏分子が居ないか?と常に監視に目を光らせ続ける」 があります。

 

きっと、そんなアクションを目にした方はこう思われることでしょう。

 「社長なのに、そんな細かい事に血眼になる必要ってあるの?」

 「いたとしても、たかが数人でしょ?」

 

しかし、このマネジメントはあながち「間違いですよ」とも言い切れません。

なぜなら、たかが数人といえど不穏分子は軽視できない存在だからです。

 

先日、あるテレビ局の幹部がチャリティー金を着服していたと報道がありました。

系列社員数1,380人のうちのたった1人なのに、その人の行動だけで会社を傾かせてしまうということは十分にありえることなのです。

よって会社の業績を上げていきたい社長が、不穏分子を放っておくことなどできません。
監視に目を光らせ続けたいお気持ちはよくわかります。

 

ただ、残念ながらこの社長の一手には2つの弱点があります。

 

1つ目は多店舗型ビジネスに相性が悪いという点です。

 

多店舗型ビジネスにおいて、業績を伸ばしていくということは店舗を増やしていくこととほぼイコールです。

よって必要なのは、「店舗をいくら増やしていっても揺るがないマネジメント」です。

 

もし社長が現在「問題が無いか?不穏分子が居ないか?と常に社内の監視に目を光らせ続ける」というアクションをとっているとしたら、果たして、会社の店舗数が今の倍、5倍~10倍以上になっていったとしても、そのマネジメントを続けていられるでしょうか?

 

 

2つ目の弱点、それは社長が拘束されているということ。

 

成長している企業の社長の中にはこんな方がいらっしゃいます。

 「私は四六時中、会社にいますよ」

 「仕事が好きなんです」

 

ここで気を付けなければならないのは、その社長は「常に自分が会社にいなければまわらないから、会社にいるわけではない」ということ。

 

多店舗型ビジネスの業績を伸ばしている、ある社長がおっしゃいました。

 「私は本当はずっと会社にいたい」

 「できれば店舗にもいたい」

 「お客様に『いらっしゃいませ』と笑顔で言いたい」

 「店舗の駐車場清掃をしつつ、いろんなお客様と言葉を交わしたい」

 

 「だけどそうしてしまうと、みんな気が散って良い結果が出せなくなってしまう」

 「だから私はしょうがなく、なるべく居ないようにしている」

 

 

リーダーがいて、歓迎される組織は伸びていきますが、

リーダーがいて、やっと正常に機能しはじめる組織が伸びていく事はありません。

 

これは似ているようで全然違います。

ここを間違えて捉えてしまうと「組織のリーダーとは、常に組織にいなければならない存在なんだ」となってしまいます。

その末路は「じゃあ監視していよう、そうすれば常に会社にいられるし、不穏分子もすぐ発見できる」・・・です。

 

今まさに、会社の社長として、または組織のリーダーとして「私がいなければまわらない」と奮闘されている方々に質問したいこと、それは

 社長が常にいなければ正常にまわらない会社など、誰が望んでいるんですか?

リーダーが常にいなければ正常にまわらない組織など、誰が望んでいるんですか?

 

多店舗型ビジネスの業績を、他社よりも伸ばしていきたい社長とは、会社はもちろん、各部署長、また各店舗の店長など、社内の各組織のリーダーがしばらく不在でも、業績を上げていける組織を築き上げなければならないのです。

 

 

しかし、これは簡単ではありません。

その為か、たまにこんなマネジメントを目にすることがあります。

 

 「自分(リーダー)が常に居なければ皆、本気出すだろ」

 「全部、君達がやりなさい」

 

これはハッキリ言って論外です。

マネジメントではなく放置です。

あまりにも短絡的すぎます。

また、お客様や社員、スタッフを馬鹿にしすぎです。

時代錯誤と言わざるを得ません。

 

多店舗型ビジネスの社長、または組織のリーダーとして

 「どうしたら自分がしばらく不在でも、誰もが本気を出し続けてくれるのか?」

 「1~2割の従業員しか本気を出さない組織などダメだ、10割にしなければならない!」

そんな熱い想いを持って「あぁでもない、こぅでもない」と挑戦し続けられる方だけが、やがてその方法を確立でき、多店舗型ビジネスというレースにおいて自社、もしくは自分の組織だけが独走体制を維持できるのです。