今週のマネジメント 伸ばすより整備する

「言われた事を10やってちゃダメなんだよ!」

「12か13まで努力して、初めて結果が出るものだ」

社員、スタッフにはこのように言い続けているのに

都度、進捗状況を確認すると大抵は8か9までしかやっていない。

 

 「どうしてそれしかやってないの?」

と聞いても

 「これから取り掛かろうと思ってました。」

 「他の人、他部署待ちで、それから進めるつもりです。」

などと、あの手この手でうまい言い訳ばかり。

 

しかし、それはまだいい方で

何度もチェックして、たまにお尻を叩いてあげないと、8か9どころじゃなく

 「全く進んでいないじゃないか!」

と7か6でゴールしようとしている事もあるんですよ! 

全く気が休まりませんね。

 

そうおっしゃるのはD社の社長でした。

先日、コロナ禍においても

 「当社の優秀な社員が考えた販売方法が、前年比120%を実現できましてね」

 「伊東さん、ぜひ見て下さいよ」

ということでお招きいただいたので

 「これは凄いですね!」

と素直に驚いたのですが

しかし社長は

 「本当は全社員、全スタッフからこんな素晴らしい努力がどんどん出て欲しいんですよ」

そして話の方向は優秀な社員から、次第に他の社員への不満へと移っていき

 「私が、逐一確認しないと良い仕事をしない」

 「数字を出せる人が現れてもほんの一握りですよ」

と冒頭の不満へとつながっていったのでした。

 

 「ところでD社長、おもしろい話がありまして」

ある会社の事例ですが

その会社は元々、特定の人だけが努力してきた状態だったのですが

経営方針を少し変えたんです。

その結果、誰もが努力し続けるようになり、

それまで社員が2人、店長と副店長とで一店を担当してた状態から

1人で3店見れるようになりまして、利益が6倍にまで跳ね上がった会社がありますよ。

 

 「へえ、一体何をしたんですか?」

経営方針はそれまで各部署のリーダーは 

 「いかにメンバーの優れた努力を誘い出せるか?」

だったのですが

変更後は

 「いかにメンバーの努力の過程における障害を取り除けるのか?」

ヤル気は、特定の人にしかあるのではなく

ヤル気は、全員にはあるけれど、行動に移す過程において何かしらの障害があって我慢しているのではないか?

と考えたからです。

 

これは例えば学校の先生が簡単な問題を出して

 「答えがわかる人は手を挙ましょう」

と言っている状況に似ています。

なかなか手を挙げる生徒は少ない様子を見て

 「もしかしたら、答えはわかっているけど手は挙げたくない」

という人が何人もいるんじゃないか?

彼らはどうしたら手を挙げてくれるのか?

とそこに着目したような感じですね。

 

 「それはおそらく、恥ずかしいから手を挙げないんじゃないですか?」

 「私がそうでしたから」

 

社長がおっしゃるその可能性もありますが、人の考えは様々です。

中には

 「答えたら『何調子乗ってんだよ!』と誰かに後で言われるのが怖い」

という人もいるでしょうし

 「積極的に手を挙げるクラスの雰囲気にするんじゃないぞ!」

という空気がクラスにまん延している可能性もあります。

 

 「あ~ 確かに・・・恥ずかしいだけじゃないですね」

だからその会社は、ありとあらゆる障害をとにかく取り除き続けたというケースです。

 

この経営方法のメリットは

 「一度障害を取り除いて、整備された環境には再び似たような障害は長い間発生しなくなる」

という長期的な効果が見込まれることです。

 

経営陣は最初こそ苦労しますが、その後は

 「放っておいても、誰もが勝手に努力し続け、数字が次々に生み出されていくようになる」

という点です。

 

 「それはいいですね~」

 「あらゆる障害を・・・ですか~」

その後、D社は各部署のリーダーが 

 「いかにメンバーの努力の過程における障害を取り除けるのか?」

にご変更されたそうです。

 

チェーン事業は働く人の数が一般的な企業に比べて多いです。

人が多い分、それぞれ考えていることも千差万別です。

どんな人でも力を発揮しやすいチェーン企業ほど業績は躍進していきます。