今週のマネジメント 店舗経営者が持つべき、組織の透明度向上の視点とは?

 「伊東さん、この方法ならみんなが本気を出すのでは?」

ある社長から、次にうつ一手にブレが無いか?のご相談でした。

会社は順調にまわっているのですが、社長はそれで満足しているわけではなく、大きくしていきたい。それには稼げる人材を増やしていくのは必須。しかしなぜか定着せず、ある程度育つと会社を離れてしまう。そんな事態が何年も繰り返され続けている流れを断ち切りたく、今までとは違った一歩を踏み出さんとしているところです。

 

組織の収益を上げていくには「社内統治面にいくつかの視点」が必要になります。

代表的な視点を一つを挙げるとすれば、組織の透明度を高めていこうとする視点です。

何故その視点が必要なのか?

例えばリアル店舗で会社の収益を上げていっている企業があったとすれば、会社の所有している店舗が少ないうちは、なんとか全体を見渡しつつ課題を拾えて解決していけますが店舗数が多くなってくると難しくなるからです。

その理由は単純に「管理者が動けるエリア、時間に」限界がでてくるから。 

そして困ったことに、昔は「もう少し店舗が増えて困ったら対応すればいいか~」で問題は無かったのですが、今の時代はたった1店だけでもその必要性がでてきました。

その理由は営業時間が昔より長くなったからです。

今や365日営業は当たり前、中には24h営業が一般的という業種もあります。

そして店長は管理者にあたらないという判例が出てから「店長は店に居て当たり前」「俺は店で寝泊まりしてたんだぞ」と言う人が賞賛されていた時代が終わりをつげ、時間内に成果を出さなければならない。そして会社は店長に必ず残業代をつけなければならない、などと大きく変化しました。

そこで店長のマネジメントに割ける時間を考えてみますと、1日8時間労働としてまるまる1日をマネジメントに充てることは不可能です。やはり「売る」といった攻めも必要ですし「雑務」もあります。

とすれば多く見積もってもマネジメントに費やせる時間は1日4時間程度ではないでしょうか?

いまやお客様の生活スタイルにあわせた営業時間をとっている企業が多い為、店舗の1日の営業時間は午前10~午後10時などの12時間程が一般的でしょうか?

もうこれだけで店長の目の届かない時間は1日8時間も出てきます。

更に年中無休だとすれば店長にも休日が必要ですから、週に2日間休むとなると単純にまるまる2日分は目が届きません。

週単位で計算しますと、営業時間トータル84時間のうち店長の目が届く時間は20時間。半分の半分にも満たないのです。

よってスタッフから見ますと「店に店長がいなくて当たり前」ということです。

これが24h営業ともなると「店長が居る方が珍しい」となります。

よって会社から電話がある度に「今日店長はいないの?」というセリフばかりだとそれは危険信号なのです。

 

経営者としては願わくば「よし、社長や店長の目の届かない職場なんだから気兼ねなく時間を有効活用できるぞ!」とコツコツ努力を積み重ねてもらい、報告を受けた方は「君はそこまでやってくれたの?」と驚きの連続・・・となってもらいたいところです。

しかし残念なことに「目が届かないから手を抜かれる」という怠慢の方が多くなってしまいがちなのが現実です。

ある社長がおっしゃいました。 「へ~そんな、まとまりのない企業もあるんだね~ 可哀そうに。」 「その点、うちの従業員は皆が真面目だから、怠慢なんてされるわけがないよ」ところがその数年後「うちでも怠慢や不正が後を絶たなくなりまして・・・」となってしまったケースも・・・。

 

目の届かない職場に対してどんな一手を打っている企業が多いのか?

よくあるのは、管理者を増やす、新たなシステムを導入するといったところでしょうか。

しかし、経営者にそもそも「組織の透明性を高めなければならないという視点」が無ければ、新しく管理者を任命したとて「どうしてここまで見ていないんだ?」と指導することもできませんし、新たなシステムを高いお金を払って導入したとてうまくいかなかった理由にさえ気が付く事が出来ません。

それで良い結果が出なかった場合「あんたのところのシステムは全然使えないぞ」と文句を言っても払ったお金は戻ってきませんし、最終的には「使う側が悪い」と結論付けられて終わるのが関の山です。

 

ここで「怠慢ってさぼられることでしょ?」とざっくりと捉えられている方もいらっしゃいますが、一言「怠慢」とは言葉で括れていたとしても、その内訳は様々です。細かい内訳にどういったものがあるのか?経営者がしっかり捉えられていないと組織の透明度の重要性さえ認識できません。

例えば、リーダーが気が付きにくい怠慢の1つを挙げますと「ピンハネ」があります。

ピンハネとは、お金を不正に横領するというイメージが一般的ですが、何もお金に限ったことではありません。ピンハネは案や成果、努力にも手を染められるのです。

実例を挙げるとすれば最近の自民党の動きにあります。

他の政党から「なぜ旧統一教会を調査しないのか?」とさんざん指摘された後、今月の17日になってからようやく「文部科学総相と会談し調査するよう指示した」と発表がありました。

一応「自ら考えて動きました感」を出していますが、国民から見れば「言われたから、気が付いたので動きました感」が否めません。

こうした「誰かの指摘をヒントにして自分の行動、成果、案とする」という行為も1つのピンハネです。経営者に透明度を高めていかなければ!という視点が無いと、このピンハネは横行します。

 「あれ? これって私が考えた案ですよ・・・?」

ある社員が何日も考え抜いて、斬新な次の一手を閃き、それを信じて努力し続け、やっと成果を出した末に

 「よし、これを社長に報告して認めてもらおう!」

と意気揚々としていたところ

 「実は私がそうしろと言ってたんです」

 「だから彼が良い結果を出せたんですよ」

本人の知らない場所で、一瞬にして上司や先輩の手柄になってしまうことも。

その後は何を言っても権力者には敵いません。

挙句には

 「なに言ってんの? それは●●さんの成果でしょ?」

というイメージが企業内に定着してしまいます。

そこで

 「冗談じゃない! 命を懸けても私の版権は守るぞ」

と動ける人は果たしているのでしょうか?

仮にそう動ける人がいたとて

 「君はいつまでもそんなことに拘らなくていいから」

 「まず目の前の結果を出しなさい」

と一蹴されて全ての努力が水の泡どころか、ライバルに持っていかれてしまった・・・となってしまいかねません。

そんな状態が続く組織ではやがて優秀な人達はこう思う事でしょう

 「この会社では自分がいくら努力しても実ることはない」

 「自分が育てた案や努力は全て上司や先輩に盗まれ、その人の手柄になる」

 「この会社で私が活躍できることはないだろう」

 

では逆に経営者に透明度を高めていかなければ!という視点があるとどうなるのか?

その企業はたとえ社長が長期不在となっても、各部署長がその場にいない現場が当たり前の組織であったとしても、誰もが必死に努力したくなります。

なぜなら 自分の案や努力、成果をピンハネされることがなく、そのまま自分のリターンとなるから です。

 

なぜか組織に優秀な人達が定着しない。

その為に管理者も増やしたし、新たなシステムも導入したのに・・・

それはもしかしたら、管理者の努力が足りなかったわけでもなく、システム開発業者の見落としでもなく「企業の透明度を高めなければならない」という視点が無かったからかもしれません。