今週のマネジメント 社長があれこれ実験したい事を、全店の店舗スタッフが実行し続けてくれる法
「今月の利益は、前年の倍になりました」
ある小売業の店舗で起きた事です。
何をしたのか?
それは発注方法を変えただけ。
自社の、ある店舗で長く働いているベテラン女性スタッフTさんが行っていた発注方法を、他の店舗でもマネしてみただけです。
多店舗型ビジネスでは社内で働いている人の中に、社長の欲するアクションをすでに実行していて、しかも良い結果が得られていたという事に、長い間誰も気が付かなかったという事例はよくあることです。
この企業もまたTさんの行為に、長い間誰も気が付くことはありませんでした。
どのくらいの期間、気が付いていなかったのか?といいますと10年以上にもなります。
ではなぜ、気が付くことができたのか?
その理由は、社長がある仕組みを構築し、その仕組みを通じて発見することができたからです。
ここまでで、他の方から意見をいただくとしたら2種類あることでしょう。
「そんな簡単な事ができなかったの? よほど人と人との交流が無い薄情な会社だったんですね。」
「いや、その人を発見できたこと自体が凄い事」
後者のような意見をおっしゃる方には共通点があります。
それは、「社長の欲するアクションを実行してくれる人をどうしたら増やすことができて、その結果を会社の業績にまでつなげることができるのか?」その課題を解決せんと、日々奮闘していて、難しさを実体験されている方です。
これは一見、簡単そうですがとても大変な事です。
その理由の1つにあるのは、「社員やスタッフは、自分自身のどのアクションが社長に求められてて、会社の役に立つのか?自らで判別ができないから」です。
この課題を解決し、うまく結びつけることができれば、新たなコストをかけなくとも企業の業績を伸ばしていけます。そして、もしそれが多店舗型のビジネスであったとしたら、ただ業績を伸ばせていけるどころか、他社を圧倒し続けることさえ可能です。
その理由は「働く人が多いから」です。
人が多いということは、それだけで確率が高くなるからです。
実際にうまくその課題をクリアできた、ある多店舗型ビジネス企業の社長に「最近休んでいますか?」と質問したところ、こうおっしゃっいました。
「休みですか?要りません。寝る暇も勿体ないです。」
「グッスリ眠りたいというより、疲れさえとれたらそれでいいんです。」
「だから休みなどしばらく取ってません。」
「もし無理にでも休んでしまったら、『この時間も仕事に充てられたらなぁ・・・』とばかり考えてしまって、きっと休みにならないでしょう。気苦労が増えて、逆に疲れちゃいますよ」
さて、ここで1つ疑問が生まれます。
それならば、いまさら多店舗型ビジネスに力を入れても、すでに展開している大手や他社にいつまでも追いつくことさえできないのではないか?
実はこの、社長が欲するアクションを全従業員が行ってくれて会社の業績につなげられる仕組みを上手に確立できている企業はほぼ皆無なのです。
そう言える理由は私の経験上からでもありますが、確立できていないという証拠があるからです。
結論から言いますと、その証拠とは「お客様相談室が設置されている」からです。
どういうことなのか?
ここで私から貴方に2点質問です。
ある方が社長として、数人で起業しました。
創業期の大事な時に、社長はメンバーに対して
「お客様から頂いたご意見やご相談、お困りごとについての情報交換や意見交換はしなくていいよ」
「君達を介さずに、お客さまから私に直接届く窓口を別に設置したから」
と伝えました。
Q:あなたがその社長だったら、同じ事をしますか?
Q:あなたがメンバーの一人だったら、社長の発言をどう思いますか?
私が何が言いたいのか?と言いますと、
「大切な仲間達を信頼していない社長の率いる企業が、業績を伸ばせていけるわけがない」
ということです。
本来、順調に成長していく組織とは、リーダーを中心に全員が様々な情報と意見を交換するという「場」があってこそ成り立つものです。
その場があるからこそ、組織のメンバー達は
「そうか、リーダーはそういう事を求めていたのか」
「ということは、こんなことを欲しているのでは?」
と、リーダーが求めていた事、あれこれ実験したい事を全員がブレなく行ってくれるようになります。
一方、リーダーとしては
「何?そんなことがあったのか、それは意外だった」
「うーん、それは私の考えている方向性とは異なるね」
「おお!それこそ求めていた事だ!」
「君はさすがだ、ありがとう」
となり、組織は一丸となることができて、成長が加速していきます。
つまり社長が、自分のやりたいことを全従業員が行ってくれて、その結果を業績に結び付けられる組織をつくりたいのであれば、たとえ組織の規模が大きくなっても、店舗がいくつ増えていったとしても、こういった場を何とか維持しようとする「工夫」が必要だという事なのです。
ところが大手や他社はそうしていません。
まるで店舗で働く社員やスタッフ達に
「君達は、お客様を見なくていいんだよ」
「耳を貸さなくてもいいんだ」
「だって、君達の代わりとなる専用の窓口を設置したから」
「それでも見たい聞きたいとするのは別にいいけど、その口は閉じてなさい」
「我々がやりたいことの、手足であってくれればそれでいい」
さて、このように組織の経営陣が大切な仲間達の感じた事や意見に向き合おうともせず、別のルートを設置している、いわば一方的シャットアウト状態に、何も疑問を持っていないままの企業が他社よりも業績を伸ばせていけるのでしょうか?
店舗で働く人達は、お客様に最も近い位置にいらっしゃる超重要な人達なのです。
そのポジションは、会社の業績を大きく上げられるヒントをいち早く掴める位置でもあり、時にはお客様からの強烈な叱咤、激励を真正面から受けなければならない過酷な第一線でもあります。
そんな第一線で体を張っている仲間達の感じた事や意見を聞こう、経営に役立てようともせず、窓口を設置しているから「これでいいんだ」としている企業など敵ではありません。
商売とは、お客様のニーズをいかに的確に捉えられ、手をうてるか?です。
そのお客様の声にならないような、細かくも小さなニーズを、肌でしか感じられない第一線ほど大事なポジションはありません。
第一線から離れ、お客様からの厳しい意見が届くことも無い安全な位置で日々机に向かっていて、「ヒントは現場にあるものだ」など口にしては、たまに現場に足を運んでいるような人達が会社の次なる一手を考えている企業など、後から追い越すことなど簡単なことなのです。