今週のマネジメント 上層部がたるんでいるからと、社長が常に突きまわる必要はあるのか?

 「上司から、クリスタル灰皿を投げつけられました」

 

ある社長が、かつて社員として働いていた会社での体験談です。

 

会社の思惑は

 ・目標未達成がどれほど悪い事なのか? リーダーに厳しく指導することで、全員に伝えたい

 ・たるんでる上層部達に緊張感を与えたい

だったようです。

 

それよりも私が気になったのは、灰皿を投げつけられたその後。

 

社長いわく

 「私はよけたんですよ」

 「そしたら後で呼び出されたんです」

二人きりになると

 「君が一番優秀だから、わざとあぁしたんだ」

 「だけどなぁ~、あそこでよけるなよ」

 「他の奴らへの戒めにならんだろ」

 

社長は心の中でこう突っ込んだそうです

 「いや、よけるだろ!」

 

 

今の若い方からすればこの会社の指導は、にわかには信じがたいことでしょう。

しかしこれは実話です。

激動のバブル期を駆け抜けた人達であれば、「わかる、わかる」となってしまうのではないでしょうか?

 

社長が抱えるマネジメント面の悩みの一つに

 「上層部がたるんでる」

があります。

 

本来、彼らは社員やスタッフ達にとって

 「さすが〇〇さんだ」

などと、見本となるべき存在です。

 

しかし残念な事に、まるで自らの地位にあぐらをかいているような人が現れ

 「あぁはなりたくないよな」

となってしまうことがあります。

 

問題なのは、人のまとめ役が手を抜いているということ。

 

それはメンバー全員に伝播してしまいます。

また厄介なのは、本人自身があぐらをかいていることに気が付いていない事です。

 

これは一見、

 「社長が悩む程の問題ですか?」

と見られるかもしれません。

 

しかしこの問題の怖いところは、人々の負の感情を増幅、連鎖させていってしまう点にあります。

 

たるんでいる上層部を会社が放置していると

 「なんなんだあいつは?」

 「偉いからって、いつも楽しやがって」

 「会社を支えているのは私達じゃないか」

 「ばかばかしい、やってられるか」

 

過去の事例には働く人達の不満が高まり、会社組織を崩壊させることにつながってしまった、ということはたくさんあります。

常に会社の将来を考えている社長にとって、これは脅威なのです。

 

有効な一手がうてないままだと、いずれは社長を含めた上層部が手足となって働かなければ、会社を回せなくなるかもしれません。

これまでそれが原因で、指揮系統が機能不全に陥った組織をいくつか見てきましたが、持ち直すことは困難です。

 

しかしだからといって、いきなりそこらへんにいる幹部を呼びつけて

 「お前、最近たるんでるよな?」

 「自分の地位にあぐらをかいているだろ?」

 「いい加減にしろよ」

などと詰められるものでもありません。

 

さて、たるんでいる上層部問題。

社長はどうするべきなのか?

 

 

多店舗型ビジネスにおいて、私がお勧めしない対策は「社長が常に突きまわる」です。

 

上記のクリスタル灰皿の事例は特殊ですが、同じように「上層部の人達に緊張感を与え続ける」というアクションをとる社長もいらっしゃることでしょう。

しかしこの一手が問題なのは、会社の規模が大きくなっていくと対応できなくなる点にあります。

 

 「会社の規模が大きくなっていったとしたら、今やっている仕事の効果は薄れていく。」

 「そんな仕事を続けるべきではない。」

これは常に私が多店舗型ビジネスの社長に言い続けていることです。

 

つまり社長は、自分が拘束されてしまうようアクションを続けるより、

そうならない手を考え、独自に創り上げるべきである、ということです。

 

 

ここで1つ考えなければならないのは、なぜ会社という組織が生まれたのか?

 

そもそも組織とは

 「誰かが指揮しなければ・・・」

 「任せろ、私がリーダーをやってやる」

 「待ってました、〇〇さん、頼んだぞ」

という形で成立します。

 

危機感を強く抱いている人がいたからこそ、組織が生まれるのであって、

危機感さえ無く、日々たるんでいる人達が「ここは力を合わせよう」となって、組織が出来上がる・・・そんなことはあり得ません。

 

会社の上層部ほど危機感を抱いている。

これは前提条件なのです。

 

残念ながら、そんな基本的な組織形態になっていない企業が多数存在します。

私は、多店舗型ビジネスの上層部ほど危機感を感じなくなってしまっている形態がはびこっている現実がとても心配です。

 「本当にそんなマネジメントでいいんでしょうか?」

 「社長は、働く誰もが『よしよし、みんな本気を出せているな』と思えていますか?」

 

まるで多くの人達が

 「こんなもんでいいでしょ」

と、手を抜いているようです。

 

また

 「私のせいじゃないし」

と、いい加減な仕事をしています。

 

恐い事に、そんな異常事態が繰り返されているのに

 「これはどこかおかしいのでは?」

と、気が付かないまま、手をうっていないままの企業が多い現実です。

 

まるでどの企業も

 「多店舗型ビジネスって、こんなもんじゃないの?」

 「手抜きやいい加減を許容してあげましょうよ」

と捉えているようです。

 

多店舗型ビジネスの社長が持つべき視点は

 「自社の組織形態に問題があるのでは?」

です。

 「働く人達自体に問題がある」

 「だから社長自らが目を光らせ、突きまわる」

ではありません。

 

最悪な事にそういった視点を持たないまま、大手の真似をする企業も現れるほどです。

 

たとえば大手で働いていた人が転職してきた場合、

 「へぇ~、あの大手の〇〇社はそんな形をとっているんだ」

 「なるほどね」

 「参考にしよう」

など・・・。

 

しかし、それとは逆の

 「会社組織とは本来どうあるべきなのか?」

他社には一切目もくれず、自ら黙々とゼロからつくりあげていった社長の会社はとても良い数字を出していきます。

 

なぜなら上層部の人達ほど緊張感を感じているからです。

 

店長や店舗社員、店舗スタッフの何倍も危機感を抱きながら仕事をしている為、その真剣さは人を魅了します。

 「さすが〇〇さんだ、凄すぎる」

 「私もあの人のようになりたい」

そんな憧れが渦巻く魅力あふれる企業となっているのです。

 

人の強み。

それは人だけが有する「感情」です。

人の感情は気まぐれです。プラス方面に作用したかと思えばとんでもないマイナス方面に働くこともあります。

そんな気まぐれな人の感情を、プラス方向だけに流れるようにできた企業。

そんな企業だけが、他社よりも爆発的に業績を押し上げていけるのです。

 

 

御社はいかがでしょうか?

 ・上層部ほど危機感を感じて真剣に仕事をしている。

となっていますか?

 

それとも

 ・上層部ほどたるんでいる。まるで地位にあぐらをかいているようだ。

 ・社長がいちいち突きまわってやらないと真剣になってくれない。

になっていませんか?