今週のマネジメント 「社長の指示など無視していい」店舗ビジネスに潜む、皆を扇動し続ける存在とは?
「口約束で3ヵ月先までの仕入れ予算が使われていた」
ある企業の店舗で起きた事例です。
いつまでも死筋商品が減っていかない、ある店舗に疑問を抱いて調べたところ問題が発覚しました。
その店舗独自のルールは数年前のオープン当時から取引先を巻き込んだまま、ずっと続いていたとのこと。
その後は社長指導のもと、各店舗の仕入れ担当者が口約束で契約ができないような形が取り入れられ、再発防止がなされました。
店舗ビジネスでは、リーダーから強い号令が出たにも関わらず、反応が遅かったり足並みが揃わず、思ったほどの結果が出せなかったりします。
不思議なのは、指示や情報が届いていないからというわけではなく「情報は届いているのに、あえて軽視、無視されているのでは?」という感覚です。
何故なのか?
まるで社長よりも強大な存在が、組織内のどこかに潜んでいて
「社長の指示?」
「いらんいらん! そんなの無視していい」
「代わりにこっちを優先しなさい」
などと、皆をそそのかしているのではないか?と思ってしまうほど。
実際にそう感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一体、そのリーダーよりも強大な存在の正体とは何なのか?
結論から言いますと、その正体は
「ローカルルール(店舗や、各組織内部に古くから根付く決まり事、しきたり等)です」
もしかしたら、ここで
「は?何言ってるの?」
「伊東さん、意味が分かりません」
「社長の指示より店舗のルールが強大ということですか?」
「そんなことはあり得ない」
といった反応をいただくかもしれません。
しかし長年店舗ビジネスを経営されてきている社長であれば、これを完全に否定することはできないのではないでしょうか?
残念ながら
・社長の指示よりも、古くからの現場のルールを優先されてしまう
・各部署長の指示が軽視、無視される
こういった事は店舗ビジネスにはありえることです。
そう言い切れる理由はつい最近、世間を騒がせた事件からもわかる事でしょう。
自衛官 218人を処分 海幕長交代(24年7月12日)
特定秘密や潜水手当の違反、不正
「一体何があったのか?」
何らかの組織のリーダーをされている方であれば、この事件の詳細が気になり、調べた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
私がこの事件の原因を一言で表すとしたら
海上の自衛艦という現場のローカルルールが、組織全体のルールよりも優先されていた
です。
この事件と店舗ビジネスには共通点があります。
それは「閉鎖的空間」が存在しているということ。
今回の事件では、海上の自衛艦。
店舗ビジネスでは、各店舗がそれに当たります。
店舗ビジネスのように閉鎖的空間を抱える社長には
「もしかしたら各店舗には、私(社長)の指示を無視されるほど、おかしなルールが存在しているのではないか?」
といった視点が必要となります。
冒頭でご紹介した口約束の事例は、残念ながらその視点が欠けていたのです。
会社としては発注については独自のシステムを取り入れたり、これまで何度も改良を重ねてきていた為、「これはいけない。いい加減、口約束はやめなければ」と、気が付いて変えようとするタイミングは何度もあったのですが、残念な事にこれまでの長い間、一人も「これはおかしいのでは?」と、問題視して変えようとしてこなかったのです。
閉鎖的空間が厄介なのは、「社長だけが知らなかった」があり得る事です。
「実は社長に報告してなかったルールがありまして・・・」
などと、誰が言ってくれるでしょうか?
現実の姿は
「やばい」
「本部にバレちゃいけない」
「隠せ隠せ」
です。
・いかに社長の死角に潜んでいるローカルルールに気が付けるか
・どんなおかしなルールがまかり通ってしまっているのか
そんな視点が必要なのです。
では社長に事前にそういった視点がある企業はどうなるのか?
ある社長はおっしゃいました。
「当社は、私の指示よりも優先されるルールが残っていたとしても、また新しく生まれたとしてもすぐに判ります」
「これのおかげで社員やスタッフに懲戒を出すことが無くなりました」
「伊東さん、私はずっと疑問を持っていたんです。『なぜ古いしきたりをそのまま守っていた人が責められるのか?』」
「本来はそこで『これはおかしい』と本人が動くべきでしょうが、そんな事をしたら孤立してしまいかねない」
「だけど会社としてもお咎め無し、というわけにもいかない」
「ずっと、考えていました」
「だったら事前におかしなローカルルールが発覚、排除される形にできればいい」
「それが実現できて本当に良かった」
店舗ビジネスにおいて
「時に、社長のルールより、店舗のルールの方が強い」
これは戯言ではありません。
実際に起きている問題なのです。