今週のマネジメント 第485号 社長が欲する人材だけをブレ無く集めてくれる会社とは?

「『電話のコード抜いておけ』なんて言ってましたから」
ある社長がおっしゃいました。
バブルの頃は従業員応募の電話が鳴り止まなかったため、こう指示したことがあったそうです。
当時は電話応対の良し悪しだけで大半をお断り。
会社が欲している人材だけを厳選して採用することができていたのでした。
店舗型のビジネスにおいて、社長の欲する人材が採用できているのか?
業種にもよりますが、それは減っているのではないでしょうか。
そう言えるのも、昔に比べて応募者数が減っているからです。
会社によっては
・もし応募があったら、欲しい人材とは多少違っていてもまずは採用。
・会社が欲する戦力には、後からなってもらえればいい
そんな形をとっているところもあることでしょう。
なぜ応募者が減っているのか?
時代が違うからと言ってしまえばそうかもしれませんが、それではビジネスとして何も得られません。
前進するためには原因を特定して、改良していくことが重要です。
この問題は複数の要因が重なりあって出ている結果といえますが、本コラムでは1つの要因に注目してみました。
それは
「ミスマッチが繰り返されたから」
求人広告において、よく目にする表現があります。
例えば
「明るく元気な方、募集」
他には
「スキマ時間を活用したいなら」
「1時間からでも勤務可能」
「◯◯が好きな方にぴったりの・・・」
「話さなくてもいい職場」
など。
私はこういった表現自体に問題があると言いたいわけではありません。
しかし疑問に感じる点はあります。
それは
「社長の想いが込められた表現になっているのか」
例えば「明るく元気な方募集」
このワードにはどんな社長の想いが込められているのか。
それはもしかしたら
「当社では明るく元気な方ばかりなので、あなたも仲間になりませんか?」
かもしれません。
しかし、こう受け止めることもできるのではないでしょうか?
「当社には暗くて疲弊した方ばかりなので、あなたが変えてくれませんか?」
さて、ここで「それの何が問題なのか?」と言われるかもしれません。
しかしこれが大問題なのです。
はたして、社長の思いが正しく伝わらないまま採用された人は、良い結果を出していくことができるのでしょうか?
もし、採用された人が
「この会社は明るく元気な人ばかりだろうからきっと私も活躍できるだろう」
と思っていて、一方社長の想いはそうではなく
「実は当社には暗くて疲弊した方ばかりなんですが、誰かがこれを変えてほしい。弊社ではそんな挑戦ができる人を歓迎、応援する体制が整っています。チャレンジャーよ来たれ」
だったとしたら・・・?
自分が感じてた社長の想いと、実際の社長の想い。
それが一致しているかどうかは、日々仕事をしていればわかっていくことでしょう。
やがてこうなるのは明らかです。
「あれ?・・・なんか思っていた職場と違う・・・」
できればその時、本人には
「自分が感じていた社長の想いは違っていたけど、それは仕方がない」
「私は社長が欲している事をするだけだ!」
など、前向きに捉えてほしいところです。
しかし、それは「採用された人達全員が同じように捉えてくれる」と言えるでしょうか?
当たり前ですが、社員はもちろんスタッフであっても
「すいません、私がイメージしていた会社と違っていたので退職したいです」
などと口にされることはありません。
社長の想いと採用された人が感じていた想いがズレていた場合、どんな感情を抱くことになるでしょうか?
人はロボットではありません。
良くない感情を抱えつつも、仕事で良い成果を出し続ける。
それは難しいことです。
気をつけなければならない点は
その良くない感情は、その人だけにとどめられたままになるのか?
人気のある業界や誰からも注目されている企業があります。
そこで
「お願いですから、もう当社に応募しに来ないで下さい」
と言っても、ハイそうですかと応募者がピタリと止むことなどありません。
逆もまた同じです。
人気が無くなってしまった業界、注目されなくなってしまった企業において
「お願いですから、もっと当社に応募して下さい」
と言っても、ハイ行きますと急にはなってくれません。
それは
「ああ、その業界ってそういうところだよね」
「あの会社か〜」
そんなイメージが世間に定着してしまっているからです。
大事なのは、社長の想いがブレ無く込められた表現を徹底することです。
社長の想いが込められていない発信を続けていたり、十分な打ち合わせも無しに、安易に他社にお願いし続けていると、そのブレは返ってきて自らを苦しめてしまいます。
ではすでに
・業界全体に良くないイメージを持たれてしまった。
・自社の評判が悪くなってしまった。
その場合はどうしようもないのかと言われますと、そうでもありません。
私はむしろチャンスだと言いたいです。
なぜなら他社を差し置いて、自社だけ独壇場になれるからです。
「この業界はひどいと思ってたらそんな事は無かった」
「この会社は評判が悪かったけど、デマなのでは?」
「だって、すごく居心地が良いのに」
人は意外性に惹かれます。
そして、日々良い刺激を受け続けている人はその喜びを自分だけにとどめておこうとはなりません。
溢れ出た喜びは必ず周囲にも波及していきます。
やがてこうなることでしょう。
「ずっと前から、この会社で働きたいと思ってました」
「この店のうわさを聞いてから気になっていました。私はここで頑張りたいです」
