今週のマネジメント コラム第500号記念特別号②:僕の名前はカズ

株式会社ピアーズは創業以来、代表伊東のコラムを配信し続け今回で500号目となりました。
日頃お読みいただいている方々にはこの場でお礼を申し上げます。
ありがとうございます。
今回の内容はいつもと違う特別号の第2弾です。
第1弾と同じく、ビジネス中心の内容ではなく息抜き的な回となっています。
会社社長という立場の方が張り詰めた日々の中、少しでも視野的に、精神的にくつろげる時間を提供したいと伊東が思い綴りました。
どうぞ御覧ください。
僕の名前はカズ
僕の名前はカズ。
人間じゃない。
自分が何者か、よくわからない。
なぜか生物は皆、僕を求める。
なぜか人間もまた僕を求める。
僕は求められたら嬉しい。
だから手に入れた人の為に力を尽くす。
すると、その人には次々に仲間ができていく。
みんなで協力し合って大きな事も成し遂げられるようになっていく。
みんなが喜んでくれる。
できればこんな状態がずっと続いてほしい。
だけどそれは長く続かない。
未来を見る力はないけど、予想は当たる。
いつかは終わりがやって来る。
だって、今までずっとそうだったから・・・。
僕にはたくさんの仲間がいる。
みんな優れた特徴をもっている。
例えばホノオは熱を出すのが得意。
温度調整や料理など人々の暮らしには欠かせない。
ヒカリは明るく照らす。
夜も活動ができるようになり植物も育つ。
デンキは後になって現れたルーキー。
半導体やAIなど今、誰よりも成長し活躍している。
仲間達は皆、人に求められている。
そして、それは僕達の喜びでもある。
人は完璧じゃない。
僕達をうまく扱って豊かな暮らしを手に入れてきたけど、制御に失敗する時がある。
その時、大きな不幸が訪れる。
多くの人が亡くなってしまう時もある。
それは人間達にとって、どんなに悲しいことだろう。
もう二度と僕らを使おうとしない人もいるだろう。
だけど、それでも人はまた僕達を求めてくれる。
これまで何度も何度も不幸を経験しているのに。
今日また初めて僕を手に入れた人がいる。
嬉しいけど、その時だけ。
僕は力を尽くす。
きっといつか、その人が不幸になるとわかっていても・・・。
100年が過ぎた。
僕の願いはまた叶わなかった。
やっぱりダメだった。
また辛い別れの日がやってきた。
最初に手に入れた人とその周りの人達は幸せだったのに。
もう人間達は僕を求めなければいいのに。
そうすれば不幸にならなくて済むんだから。
僕を見てホノオは言った。
悲しんでいても仕方がない。
失敗しても人は次はそうならないように学習してくれるから。
そしてもっと上手く扱ってくれるんだから。
人はいつかもう失敗しなくなるかもしれない、と。
ヒカリもデンキも、他の皆も僕を心配してくれた。
そう、僕達には寿命が無い。
人には寿命がある。
最初に僕達を手に入れた人はいつか死んでしまう。
だけど人は凄い。
僕達の扱い方を仲間達に受け継いでいくから。
そして人は僕らをもっと上手に使えないかと工夫を重ねる。
どんどん扱い方が進化していく。
失敗も減っていく。
人類が誕生して何年も経った。
人々の暮らしは今もどんどん良くなっていってる。
仲間達も、多くの人々の役に立つことができて嬉しそうだ。
だけど・・・それは僕以外の仲間達のことだ。
僕は違う。
嬉しく感じているのは仲間達だけ。
僕は嬉しくない。
だって、僕だけが昔から進化していかないんだから・・・。
「ありがとう」
僕は仲間達に声をかけられる度に、その言葉を口にした。
だけど、心はこもっていなかった。
口だけの感謝。
きっとみんなもそう感じとっただろう。
そして陰でこう言われているに違いない。
カズにいくら声をかけても無駄だと。
なぜ僕だけ進化していかないのか。
僕は振り返ってみた。
僕を手に入れられるのはチームやグループなどと言われる組織のリーダー。
中小企業や巨大企業の社長も手に入れる。
しかし、それは長く続かない。
老舗など、何百年も続く企業など稀にあるけど、永遠ではない。
武力で構成された軍隊や、王族国家、歴史に残る栄えた文明もいつか終わりがやってくる。
僕を手に入れたらいつか破綻する。
それはどんなに優れた人でも。
どんなに巨大な国家でも。
そして集まった人が多いほど失敗した時の不幸も大きくなる。
なぜ僕だけ進化していかないのか。
僕は分析してみた。
人は多くの人の意見に逆らえない。
親や親戚は子供達に常識を押し付け、
友人や知人は常識外れな人を見つけては笑い、攻撃する。
ビジネスでは、うまくいくと多くの人が予測しやすい行為が許可され、前例の無い行為は少数派となり否定される。
マスコミは多くの人から共感される記事を報道し、共感が得られない報道を控える。
ネットでは多くの注目を得られる工夫が重ねられ、少数意見はみんなで袋叩きにする。
その形はいつまでも変わらない。
何百年、何千年、いくら時代が進んでも。
だけど人類の文明は大きな発展を続けている。
それは僕ではなく、僕の仲間達の扱い方がどんどん進化しているからだ。
仲間達の扱いの失敗例はもうほとんど耳にしなくなってきた。
だけど僕だけ未だに失敗ばかり。
今日もどこかでいくつもの組織が崩壊している。
僕だけが時代遅れ。
それなのに、なぜか人間達はこんな僕でもいまだに求めてくれる。
最後には多くの人達が不幸になるという歴史を知っているはずなのに。
僕はこのままでいいのだろうか・・・
ある日、僕は人に期待を抱くことをやめた。
人がどうなろうが、どうでもいい。
ただ単に僕は求められたら力を尽くすだけ。
そうしていれば悩む必要もないんだから。
今日、また僕を初めて手に入れた人がいる。
この人もまた、きっと同じ運命を辿るに決まってる。
「僕を手に入れてくれた◯◯さん」
「幸せなのは今だけですよ」
「きっといつか大変な事になります」
「だからすぐ手放した方がいいですよ」
僕の声は人間には聞こえない。
嫌な言い方をすれば聞こえるのならいくらでもやるのに。
不幸な連鎖を断ち切れるかもしれないのに。
僕はまだどこかで人に期待しているのかもしれない。
ある日、その◯◯さんが誰かとお酒を飲んでいた。
僕の耳に二人の会話が聞こえてきた。
「■■さんはこうおっしゃいましたよね」
「『経営を教える事なんてできない』と」
「ということは、創業者が苦労して会社を立てて多くの人達を幸せにできたとしても、その跡を継いでいってくれる人の誰かが、いつか経営に失敗するということですよね」
「せっかく積み上げてきたのに」
「これはどうしようもないんですか」
その人はこう返した。
「◯◯さん」
「だからこの世は平等なんです」
なぜ僕だけが仲間達と違って、人から人へと上手に受け継がれていかないのか。
僕は今までこれを欠点だと思っていた。
だけど・・・。
違うんじゃないか・・・?
僕は考え方を変えてみた。
僕を手に入れた人達は、いつまでも優位な立場でいることはできない。
もしそれが可能だったら、人にはいつまでも格差が無くならない。
もしかしたら僕は悪い存在ではないんじゃないか。
だって僕を手に入れられるチャンスは誰にでもある。
僕を手に入れた人には次々に仲間ができていく。
みんなで協力し合って大きな事も成し遂げられるようになっていく。
そしてみんなが喜んでくれる。
これは一部の人達だけにしか所有できない特権ではないんだから。
その日から僕は変わった。
何百年、何千年も悩み続けてきた僕はもういない。
ここにいるのは自分の存在を肯定している新しい僕だ。
期待していなかった暗い世の中。
でも今は輝いて見える。
僕は・・・僕のままで良かったんだ。
人は凄い。
色んな人がいる。
それぞれが違った考え方を持ち、違った視点がある。
僕はそんな人間達に求められ、近くにいれる存在で良かった。
さぁ今日もまた楽しい1日が始まる。
きっとどこかに僕をはじめて手に入れる人が現れるだろう。
たとえ世界中の何人もの人が僕を一斉に手に入れられたとしても、
その人達の未来に悲しい結末が待っていようと、僕は喜んで力を尽くす。
誰も僕を縛り付けておくことはできない。
すでに大きな権力を得て、不動の地位を築き上げた人であっても。
僕は一部の限られた人だけが手に入れられる特権ではないんだから。
僕は人類の希望だ。
いつでも、誰でも僕を手に入れられるチャンスがある。
今日もまた、誰かが僕を手に入れて幸せになってほしい。
僕というカズの力を。