今週のマネジメント 「売上を上げなさい」と言うから利益が上がらない

 「みんなで長時間残業して、やっと目標の数を売る事ができました」

 「急遽、無料サービス券を配布したのでなんとか予算達成しました」

私が求めているのはそんな行為じゃないんだよな~

ある社長はそう思いつつも

 「みんなお疲れさん。頑張ったな」

 

とは言ってるものの

 「伊東さん、私の本音は『売上』はもちろん『利益』を上げて欲しいんですよ」

 「日頃から売上を上げなさいとは言いつつも、利益が大事なんだぞと言ってるのに・・・わかってくれない社員が多いんですよね~」

 

私が返した言葉は 

 「シンプルに『利益を上げなさい』とだけ言ったらどうですか?」

 

私は「利益を上げていきたい」と願う社長には、ストレートにそう言ってるのですが

「この伊東って人は何にもわかってないんだな、ヤレヤレ」

といった反応を示される方も・・・

 

しかし今回は、その社長からは呆れられることもなく

 「でも、それだと変に捉えられませんか?」

 

例えば 

 ・楽して結果を出そうとばかり追求し、チャレンジをしなくなる

 ・「頑張ってるヤツはバカ」 と努力している人達を見下し、ダラダラ仕事される

 ・いかにお客様から利益をむしり取れるのか? とガメツくなる

こんなことが横行したらたまったもんじゃないですよ

 

では

「社長はなぜ社員、スタッフに対して『売上を上げなさい』とは平気で言えてるんですか?」

 

「売上を上げなさい」と言った時に危ないのは「お客様の笑顔よりも売上優先なのね」など、悪い意味で捉えられることです。

 ・接客なんかしない。 声掛け、お勧め販売もせず、ただ単に並べてりゃ売れるでしょ

 ・「接客に精を出してるヤツはバカ」 と見下し、冷徹なマシンのように仕事をされる

 ・いかにお客様からお金を搾り取れるのか? と執着されガメツくなる

特に社会経験が浅い新入社員や初めてアルバイトした方にはそう捉えられるかもしれません。

 

社長は

 「そりゃ伊東さん、意にそぐわない行動をしたらすぐ発見され、修正されますよ」

 「また、大きく道をそれた場合は当然報告が上がってきますから

  上司に注意を受けたり、場合によっては懲戒もありますからね」

 

 

数日後、社長と再びお話をする機会がありました。

 「伊東さんが前におっしゃってたことをよく考えたんですが、私は売上を上げなさいとは言ってるのに、利益を上げなさいと堂々とそれだけを言えないのはなぜなんだろうか?と」

 「本音としては社員には利益に注目してほしいのに、口では『売上を上げなさい』と言ってしまっている」

 「このこと自体が問題なんじゃないか?と」  

 

 

普段から社員やスタッフに「売上を上げなさい」と言ってる企業が、なぜ間違った意図が伝わってしまうことを回避できつつ、経営者の欲している正しい意図が社員やスタッフにうまく伝わっているのか? 

この理由をきちんと把握していない企業は、いつまでたっても売上は上げられていくけど利益が上げていくことができない状態になってしまいやすいです。

その理由とは

 脱線はすぐに発見され、軌道修正がなされる仕組みが有るから

 

仕組みがあらかじめ存在するかどうかで結果は大きく変わってきます。

例えばチェーン事業の現場においては「仕組みをきちんと用意していないとうまくいかない事」が何点かあります。

その一つに「全員が力を合わせる場面」が挙げられます。

 

一般的な企業は部署のリーダーは必ずしもそこに居なくてもメンバーの脱線はメンバー同士でも軌道修正される仕組みがどの企業にも備わっています。

 

例えば一週間後に、とある商品を90%まで完成させて、次の企業に納品しなければならない場合、メンバーA君が本来担当すべき箇所を無視して、全く別のことを進めていたらどうなるのか?

たちまちこうなるでしょう。

 「A君、君は先週まで一体何を進めていたんだ?」

 「いい加減にしてくれよ、君のせいで私達がまた納品日前に残業確定じゃないか!」

メンバーの誰もが「自分が手を抜いてしまうと迷惑をかけてしまう」という考えがあるから放っておいてもメンバー達は自分のやるべき事には必死になります。 

 

ところがチェーン事業の場合はどうなるのか?

大事なセール日に目標数を販売しなければならない場合、店長不在の夜間担当のスタッフが

 「今日はヤル気がおきないや」

 「休憩長めに取ってスマホ見てよ~っと」

企業として何も対策がなされていなければこの脱線は防ぎようがありません。

 

  

自社の利益を倍増できた企業には

脱線はすぐに発見され、軌道修正がなされる仕組みが有ります。

仕組みが有るからこそ、社長は社員やスタッフに求めたいニュアンスをストレートに表現できているのです。

 

そんな企業の中の1社の事例です。

社長は普段から「利益を上げなさい」とシンプルに発言しています。

ある日誰もが知ってる「とある有名な上場企業」から1名の社員が転職してきました。

 「え? あの企業で働いていたの?」

 「すごいノウハウを持っているに違いない」

彼の周りにいる社員達は期待のまなざしで見つめていたのですが

何故か彼はいつまで経っても過去を話したがりません。

 

飲み会の日に彼の上司が聞いてみました。

君はなぜ前の会社のことを話さないの?

普通は

  「私は〇〇社のノウハウを持ってるんです」

  「何でも聞いてください」

  「全ての疑問に合理的に説明できます」

とか言いたくなるもんじゃないの?

 

彼はこう言いました。

 「前職で私が覚えてきたノウハウが幼稚すぎて口にすることが恥ずかしいんです」

 「前の職場では誰もが『売上!売上!』と売上ばかり追求してました」

 「この会社に入って驚いたのは全員が『利益!利益!』と追及し続けているところです」

 

そんな中、前職のノウハウを披露しようものなら

  「へえ~ そんなレベルなんだ」

  「ふ~ん」

  「〇〇社もたいしたことないんだね」

と蔑まれるだけですから。

まるで掛け算を習った2年生の中にいるのに「足し算をマスターしてきました」と言うような行為です。 恥ずかしくて言えません。

 

 

強い企業、強い組織をつくりあげるには、いかにリーダーの考えをクリアに全員に伝えられるか? は重要です。

 

 「よく頑張ったね」

とは言いつつも

 「求めているのはそれじゃないんだよな~」

など、経営者自身にモヤモヤがある状態では業績も伸びていくことはないでしょう。