今週のマネジメント 「少しアレンジしてみました」ばかり

「最近、誰もが驚くくらいの数値結果を出してくる人がいないんですよ」
 「私が下積み時は、どうやったら会社の上層部を『あっ』と言わせることができるだろうか? ばっかり考えていたのに」
今から3カ月ほど前、コロナ禍の中でも大きく業績を伸ばせている企業の話題になった時、N社長がおっしゃっていました。

 

私も
 「社長のおっしゃることはよくわかります。」
 「組織には、合格ラインまで頑張ればそれでいいんでしょ? と考える人はどうしても現れてしまいますよね」

 

「そうなんですよ~」
 「だから予算目標を決めること自体やめようかな?とも考えてますよ」
 「予算周辺の結果しか出してこないですからね」
 「私は『腰を抜かすほどの結果を出してやる!』という血気盛んな肉食系の人間が欲しいんです。」
 「伊東さん。そんな考えの人を多くするコツはありませんかね?」

 

N社長がおっしゃるような「このくらい頑張ればそれでいいんでしょ?」という方は多いです。
それはテレビやネット、SNSのメディアでもよく見かけます。

 

世の中に既に出回ってしまっている情報や行為を、アレンジして俺流にしてみました 等、
まるでどこかのお店で買ったお弁当にふりかけを振って新しく「当店オリジナル弁当です」と言って売ってるような状態です。

 

私は質問に答える前に、N社長が下積み時代を詳しく知りたかったので逆に質問してみました。
 「社長は過去にどうやって会社の上層部を『あっ』と言わせることができたんですか?」

 

 「うーん。・・・一番結果が残せたのはスキーが流行っていた時代に、シーズントータルで会社で最大の売上を出せた事ですね~」 

 

 「売れそうなものは片っ端から仕入れて、狭い店内にこれでもか!と陳列したんです。」
 「在庫もすぐに補充しやすくして、一番混む時間帯にシフトを厚くして・・・」

 「そうそう、他社が売ってないような商品を自ら仕入れてきて売ったりもしました」
 「もう家に帰れないくらい売れて忙しくてね。 家に帰っても寝るだけでしたね」 

 

そこで社長に、寝る暇もないほど頑張れたのは何故か?質問してみたところ
 「それは・・・う~ん、数字を出すといろんな人から評価されたからでしょうか?」
 「『あいつはスゴイ』『とんでもない奴がいるぞ』とか噂されるのが嬉しかったですね」

 

そこで 「社長の会社は今でもそうなってるんですか?」
 「社員やスタッフの誰かが、いつもと違う結果が出した時、社長からはもちろん
  幹部や他の社員からも『アイツは凄いぞ』って噂される環境になってるんですか?」

質問したところ、N社長は深くお考えになっていました。
先ほどまで過去の経験談を生き生きとしていたのに、険しい表情です。

 

「う~ん。私は直接「よくやった」とか評価はしてますけど・・・・そうか 他の人達からは無いかもなぁ・・・」

 

その3カ月後にあたる、先週N社長から急に
 「伊東さん、あの時はいいヒントをもらいましたよ」
 「おかげ様で肉食系社員が増えましてね」
 「ありがとうございました。」 

私はただ質問しただけだったのですが、
N社長はご自身で対策を講じてうまく結果を出せたようです。

 

誰もが驚くくらいの数値結果を出してくる人と同じように
ライバル企業と、圧倒的に業績を引き離せる企業には共通点があります。

それは、どこかで見たような、聞いたような世の中に既に出回ってしまっている情報や行為を
少しアレンジして「俺流にしてみました」という、自分のセンスで勝負しているわけではなく、
世の中にまだ存在しない、見たことも聞いたことも無いような
物や事、システムを0からせっせと創り上げて、会社の強みにできている点です。

簡単に他人の情報や努力を見る事ができるネット社会の今こそ
そのしがらみから離れて、無から有を生み出せた企業だけがより成長できるチャンスをものにできる時代なのかもしれません。