今週のマネジメント せっかく育った社員がいなくなってしまう企業と、定着する企業。違いは「社長のカウンターパンチ」

 「うちはまるで社会人養成学校ですよ」

社員やスタッフを手塩にかけて育てては、居なくなってしまう状態が何年も続いてしまっている、ある社長がおっしゃった言葉です。

 

居なくなってしまう。

その形は様々です。

転職や暖簾分けもそうですし、「やりたい事がありまして」の独立、「実は知り合いに手伝ってくれと言われてて」・・・など。

 

本人にとってはネクストステージへと進めるわけですから、そんな人達の幸せを願っている社長であれば嬉しい出来事でしょう。

ある社長は「そんな人達が一人でも多く輩出できたら私はそれで満足なんです」とおっしゃっていました。「だって、こうしてまた私に会いに来てくれるんですからね」と。

 

社長が会社のマネジメントの形をどう変えていくか?は、自由です。

私は「必ずこんな形にしなければならない!」などの「定型」を押し付けるつもりは全くありません。

 

しかし、社長が「我が社のチェーンビジネスを、より高みにもっていきたい!」「従業員達にもっと給料を多く払ってあげたい」「お客様の笑顔をもっと見たい」というお考えなのであれば、話は違います。

いつまでも一人前に育ってくれた社員やスタッフがいなくなってしまう状態では、業績にプラスになるわけがありません。

とんでもないマイナス効果です。

よって「育った人達が定着しないままの企業」など、あってはならない姿なのです。

 

では育った社員やスタッフがいなくなってしまう企業と、定着し続ける企業。

その違いはどこにあるのか?

 

それは「社長自身が誰にも負けない強みを、ビジネスに盛り込めているかどうか?」です。

 

私は過去に「目上の人だろうがお構いなしに『論破してやる』と、実際に行動にうつしてきた、まるで狂犬のような男性」と一緒に仕事をしていた経験があります。

当時の彼は「とにかく白黒はっきりさせたい」という、わかりやすくも強引な性格だった為か、常に一匹狼状態でした。

しかし、彼はその状態を恥じている様子は全く無く、逆に「これが俺の生き方だ! 文句あるか?」と言わんばかりに堂々と胸を張っているその姿に、私は清々しさ、男らしさを感じていたくらいです。

そんな彼に、10年以上経ってから、また会う事となりました。

 

私は「彼はきっと今も強烈な持論を掲げていて、独自路線を歩み続けているのでは?」と思っていたのですが、実際に会って話したところ、そうではなかったのです。

彼はこう言ってきました。

 「伊東さん。私はこの〇〇社長にだけは、これからもずっとついて行きたいと思っているんです」

私はその理由を聞いてみたところ

 「実は〇〇社長にだけは、私はグゥの音も出せなかったからなんです。」

 

何があったのか?

 

それは、ある日その〇〇社長が、彼に対して

 「私はね、この■■という分野においては誰にも負けない自信があるんだよ」

とおっしゃったそうです。

 

普通の社員やスタッフであれば、社長がこうおっしゃっているのなら「聞く」に徹する場面でしょう。

しかし、この言葉は「何事も、白黒はっきりさせなければ気が済まない彼」にとっては、グレーなワードです。

そしてやはり狂犬な彼は、その社長の言葉にすかさず反応してしまったのです。

 

 「社長、なぜそう言い切れるんですか?」

 「優秀な人は世の中にゴマンといるじゃないですか?」

 

 

さて、ここでコラムをご覧の貴方が〇〇社長だったら、どう切り返すでしょうか?

 

 

 「きっとこう言ったのでは?」

その切り換えし方が、社長の返した言葉と一致していなくとも、とっさに返せる言葉がスッと出てくる方は、きっと只者ではない方でしょう。

 

 

さて、実際に社長が彼に返した言葉は以下です。

 

「だって、その■■という分野自体をゼロから創造したのが私なんだから」

 

 

 「私は、なんにも言い返せなかったんですよ」

 「まさにグゥの音も出なかった、です」

 

 「そして、言い返せなかったから私はイライラしたのか?と言われるとそうでもなかったんですよね。」

 「しばらく経ってからなんですけど、逆に感動しちゃったんです」

 「私は初めて、自分とは格が違う人に会う事ができたんだ・・・って」

 

 

社長が返した一言は、まるでボクシングのカウンターパンチのようです。

相手が繰り出してきた攻撃を華麗にかわし、全身が攻撃態勢となってしまっている防御力ゼロ状態の相手に、社長のカウンターが見事に決まりました。

これまで誰も彼もに噛みついてきた狂犬の彼は、社長のたった一発の攻撃でノックダウンしてしまったのです。

 

 

貴方はこのエピソードをどうご覧になりますか?

 

会社を率いる社長であれば

 「どうしたら、たった一言で育った社員や育ったスタッフをも魅了できるのか?」

そこに目を奪われるかもしれません。

しかし、すでにお気づきの方もいらっしゃるように、このカウンターパンチは誰でも繰り出せるわけではありません。

〇〇社長のように「結果」が伴っていなければ、繰り出すことさえできないからです。

 

もし、その結果が無いのにも関わらず 「私も一言で社員やスタッフを変えてやる!」と、真似をしたら?

その後はとんでもない結末が待っていることでしょう。

なぜなら、その相手とは「育った社員」「育ったスタッフ」だからです。

彼らはすこぶる優秀なのです。

会社からの発信がはっきりしていなかったり、グレー色、曖昧な要素が少しでも含まれていたら「ハイ、わかりました」などと、素直に飲み込んでくれるような人達ではありません。

結果が伴っていない発信は、簡単に見透かされ、余裕でかわされます。

それどころか、逆に強烈な反撃を貰ってしまうことになるでしょう。

たった一言で育った社員や育ったスタッフを変える・・・それはとても難しいことなのです。

 

しかし、このエピソードはこう見ることもできます。

社長自身の強みを上手にビジネスに盛り込むことさえできれば、十分に育った優秀な社員やスタッフでも、そしてたとえ目上の人に対しても「論破してやる」という狂犬な人であっても、彼らはその分野最強である社長に魅了され

 「この社長は計り知れない。ずっとついて行きたい」

となってくれるということです。

 

よって、もし社長が「育った社員やスタッフが定着してくれるには?」という課題を抱えているとしたら、あれこれ気を揉んだり、もっともっと積み上げていかなければいけないのか?と焦り続けることも不要になるのです。

例えば

 「育った社員やスタッフらよりも、私はこれからも常に勉強し続けなければいけないのだろうか?」

とか

 「うちの会社の規模がもっと大きかったらそうならないのでは? 早くおおきくしなければ・・・」

とか。または

 「育った社員やスタッフの給料をもっと上げなければならんのか?」

 「これじゃいつまでも利益が出せていけないじゃないか・・・」

など。

心配する必要もさえありません。

なぜなら、この1手を打つだけでその課題は解決するのですから。

 

 

御社はいかがでしょうか?

育った社員や育ったスタッフは、居なくなっていますか?

それとも、定着してますか?