今週のマネジメント 上司や先輩は尊敬されるが、なりたいとは思われない?

 「やはり人なんですよ!」

 「うちはどの企業よりも人を大切にしている」

 「全員には『誰にとってもお手本となりなさい』と言っている」

 

その結果、嬉しい事に

 「会社は私たちの事を常に気にかけてくれている」

 「上司や先輩方は、困った時や失敗した時は本気で心配してくれる人ばかり」

 「そして待遇は他社よりも手厚い」

 「だから私はこの会社でずっとやっていきたいです」

なんて人もいるんです。

 

しかし

 こんなに親身になっているのに

 こんなに手塩にかけているのに

 こんなに好待遇なのに

なぜか、いつまで経っても

 人が育っていかない

 連鎖していかない

 数字を取れる人が増えていかない

 チェーン事業の業績が伸びていかない・・・

 

今までは

 「当社はまだまだ努力が足りないからだ」

と捉えて

 「きっといつか数字が上がる」と

信じて続けてきたんですが、最近は

 「何かおかしいんじゃないのか?」

と感じるようになったんです。

と、ある企業の社長がおっしゃった言葉です。

  

私が気になって質問したのは1点です。

それは、上司や先輩方が尊敬された後の次のステップのこと。

 「誰かの努力に腰を掛けようとする行為を防ぐ対策はありますか?」

例えば

 ・商品陳列が誰よりもうまくできる人がいるから、自分は楽をしてもバレないぞ とか

 ・清掃スキルが高い人がいるから、自分は毎日いい加減にできて、その分休憩を長く取れるぞ

などです。

 

 「それは・・・・えーと・・・」

 「各リーダーが発見し、きちんとマネジメントできていますから・・・」

と急に社長の歯切れが悪くなってしまいました。

 

こんなやりとりをご覧になった方の中には

 「うそでしょ?」

 「そんな対策も用意してないの?」

とおっしゃる方がいらっしゃるかもしれません。

 

実は、今回挙げた例は稀なケースではなく、よくあることです。

 

当たり前ですが

 「私も上司や、先輩のようになりたい」

と考えた人は

 「自分はその後どうなっていくのか?」

を頭に思い浮かべます。

 

そして、まずは

 「上司や先輩のように行動してみたらどうなるのかな?」

と考えた時、真っ先に不安に思う事はその境遇です。

 「上司や先輩は誰よりも走り回っているし、いつも残業してるんだよな~」

 「尊敬はするけど、自分もそうなりたい・・・とは思えないなあ」

とせっかくやる気になった人達に、会社が次のステップを整備していないが為に、

 「やっぱり現状維持でいいや」

などと、最初の一歩さえ踏み込んでもらえません。

 

これがどれほど滑稽なことなのか?

販売面で考えると、誰もがわかることです。

 

 ・どの企業よりも魅力的な商品を、必死になって用意することができました。

 ・多額のコストをかけてチラシを撒きました。

 ・その結果、多くのお客様がご来店されました。

しかし レジがどこにあるか?わかりません。

 「一体どこにあるんだ?」

 「店内のどこにもないじゃないか!」

 「もしかして外にあるのか?」

 「敷地内にはないぞ?、じゃあ敷地外なのか??」

こんな状態では

 「もういいや」

とせっかく手に取った商品を戻され、帰っちゃうお客様も・・・

 

こんな初歩的なミスをしてしまう企業はまずありません。

 

しかし、不思議な事になぜか

ターゲットがお客様ではなく、社員やスタッフに代わると、途端に

 「何とかなるんじゃないの?」

 「そんなもん、彼らが自ら考えて切り開いていくものでしょ!」

などと

社員やスタッフの次への成長のステップとなる土台、階段がごっそりありません

という企業は多いのです。 

 

当然、こんな状態ではせっかく何人もヤル気を出してくれたのに

 「もういいや」

 「自分は尊敬する上司や先輩のようにはなれなくてもいい」

 「やっぱりいつも通り、マイペースで仕事してりゃいいんだ」

と残念な結果になってしまっています。

 

中には、そんなレジが無いという異常事態にも気が付かず

 「なぜ社員やスタッフはヤル気を出さないんだ!」

 「一体いつまで、どこまで面倒を見て、手を掛けたらやる気を出してくれるんだ?」

 「甘え続けるのもいい加減にしなさい!」

などと厳しくしている企業もあります。

 

これではまるで

 「商品が売れないのは、客が悪いからだ」

 「そんな客は来なくていい!」

などと言っているようなものです。

 

 

チェーン企業が

 ・業績を伸ばしていきたい

 ・数字を取れる人間を増やしていきたい

と考えているのに、なかなか数字が上がらない場合

当たり前のように繰り返されている

 「お客様の立場に立って考え、手を打つ」

という行為が、果たして

 「社員やスタッフの立場に立って考え、手を打つ」

という行為もまた、当たり前のように繰り返されているのか?

 

その見落としに自ら気が付き

本部として「人にスムーズに説明できるほどの立派な対策が施されている」企業

は、他社よりも大きく業績を伸ばしていく事ができます。