今週のマネジメント 従業員の意識を全員、一気に変えたい社長が持つべき視点とは?

 「ミーティングに参加させるだけで一苦労ですよ」

ある社長が胸の内を語られました。

 

多店舗型ビジネスといっても多種多様ですので、業績を上げていく上で必ずしもミーティングが必須です、とまでは言えません。

ただ、社長の方針を一人残らず全員に伝えるというアクションはとても重要で、どうしたら全員に一気に伝えられるのか?という苦悩はよくわかります。

 

何しろ店舗で働くスタッフもあわせると、とても人が多くなるビジネスだからです。

社員であれば「参加しなさい」と社長の一言で済むかもしれませんが、スタッフまでもとなると簡単ではありません。

 

よくあるケースは、一人一人に「ぜひ参加してくださいね」「来れそうですか?」などと言いまわる、ですが非常に労力がかかってしまいます。

もし、その時間を接客、販売に使えていたら・・・と考えますと、稼げたであろう売上、利益の分が社長の頭をよぎってしまい気分を下げてしまうことでしょう。

 

だからといって、想定していた参加率より低いから中止!ともいきません。

もしそんなことをしてしまったら、従業員達から会社に対しての不信感を抱かれるかもしれないからです。

会社が実行を決断したことは、たとえお客様には直接関係がない社内政策だったとしても、何が何でもやり通すしかありません。

 

 

従業員の本気を引き出したいが、うまくいかない。

 

当社へ寄せられるこのようなご相談に対しての回答は、それぞれ会社によって異なりますが、多くの企業に共通する「見落とし」を挙げるとすればこちらです。

 

 「社長が打ち出した従業員向けの社内政策の一手に『魅力』はありますか?」

 

 

元来、商売は物々交換の1対1の取引から始まりました。

やがて誰かが「もっと効率が良い方法は無いものか?」と考え出したのが、特定の場所に商品、もしくはサービスを並べておいて、お客様から来ていただくという「店舗」の発想が生まれたのです。

 

この方法が画期的なのは、いちいち売り物の詳細を1つ1つ説明したり、お勧めをせずとも、ただ並べているだけでも買っていただける点にあります。

よって1対1で商売していた時とは、比較にならない程の量の取引が可能になりました。

 

ただし問題なのは、その前に一工夫が必要となることです。

その一工夫とは売り物自体に、見た目や直感で購入意欲をそそられるような「魅力」を盛り込んでおくことです。

なぜなら魅力が無ければ、お客様に店舗まで足を運んでいただけないからです。

 

「魅力」とはどんな効果があるものなのか?

 

例えば小売り業においては、お客様にとって

 ・あれもこれもと、ついでに買いたくなる

 ・家にストックもほしいと思われる

 ・バズっているから、売り切れになる前に自分も買っておきたい

 ・友人、知人にも配ってあげたい

 ・つい予算以上の性能の良いものを買ってしまった。だけど長く使うだろうから「まぁいいか」

 ・流行に後れを取りたくないから買おう

などと、感じていただけるようになることです。

 

また、飲食業であれば

 ・つい高いメニューを頼んでしまった

 ・ダイエットしてるのにオーダーしすぎて、食べ過ぎてしまった

 ・もともと軽く、間食のつもりだったのに・・・

 ・予算以上にトッピングを追加してしまった

 ・期間限定だからしょうがない

 ・居心地が良くて、長居したくなる

 ・持ち帰り用もいくつか買っておこう

 

サービス業であれば

 ・気が付いたら通い続けている

 ・まるでその企業の広報担当のように、報酬ゼロ円で友達にも宣伝しまくってしまっていた

 ・キャンペーン期間中なんだから、1回くらいは・・・

 ・高いコースに目が言ってしまった

 ・ワンランク上の自分になれるはず

 ・プロが使っているという商品なんだから間違いないだろうと、家用も買ってしまった

 

つまり元々1対1だった商売を、不特定多数との取引に変えられて業績を大きく伸ばせてこれた理由は、それまで接客、販売に向けていた労力を、「魅力を付ける」という方向に変えたからこそ実現できたということなのです。

 

よって、社長が従業員に対して、大きな結果を望むのであれば、一人一人に働きかけるという労力を別の方向、つまり「魅力を付ける」に変える必要があるのです。

 

今や店舗での販売が当り前となっている現在において

 「お店に客が来ないのは、客が悪いからだ」

という企業など、まず存在しません。

しかし、残念な事に

 「従業員が本気を出さないのは、従業員が悪いからだ」

という企業はまず存在しません・・・とは言い切れません。

 

社長としても、対お客様だと

 「もっと売れる商品にしなさい」

とおっしゃる方は多いのに、対従業員となった途端

 「もっと社員、スタッフに参加させなさい」

と、真逆の扱いになってしまっているのです。

 

従業員とは、「社長にとってのお客様」といってもいい存在です。

よって、社長が打ち出す社内政策は、従業員にとって、

 「居ても立っても居られない」

 「ついつい体が動いてしまう」

 「お金を払ってでもやりたい、参加したいぞ!」

となってしまうほどの「魅力あふれる政策」であるべきなのです。

 

 

逆に、打ち出した社内政策に「魅力」が無かったらどうなるのか?

 

それは魅力が無い商品やサービスを売っているのと同じことです。

その結果は「全然お客様がお店にいらっしゃらない・・・」という厳しい現実が待っているように、「全然従業員が動いてくれない・・・」という厳しい現実が待っているだけです。

 

 

とはいっても、社長が打ち出す社内政策に、魅力を盛り込むというアクションは簡単ではありません。

大変すぎて、つい「もっと参加させなさい」と指示にばかりパワーを注力するという方向に走ってしまったり、他社の一手をマネしたくもなることでしょう。

 

しかし、何も難しく考える事ではありません。

なぜなら、商売人が構成する組織のトップである社長とは、商品やサービスに魅力を付与するという行為を、これまで「数えきれないほど、何度も行ってきているよ」という方ばかりだからです。

社長は、普段やっている事のベクトルを変えるだけでいいのです。

 

 「従業員の意識を、いちいち一人一人に働きかけるよりも、全員一気に変えたい!」

社長がそうお考えなのであれば、「売り物に向けていた魅力の付与を、社内政策にも付与してみようか」

そんな視点で見てみてはいかがでしょうか?