今週のマネジメント 社内に「まず結果を出しなさい」と言ってる人がいると、どんぐりの背比べ界から抜け出せない

「伊東さん、当社の内情に興味があるという社長がいるんですが、できた仕組みはどこまで見せてもいいんでしょうか?」

会社の利益率を倍にされたD社の社長からの質問でした。

当社ピアーズもお手伝いして完成した仕組みとはいえ、創り上げられたのは社長ですので全てご自身の判断ですと返答したのですが、ここで社長と私とで共通している認識があります。

それは「見せたところでマネされることは無い」です。

仕組みをご覧になった方は「なるほど、だから各リーダーが奮闘せずともみんなが勝手に稼ぎまわってくれるのか!」となるのですが、いざマネして作ろうとしてもうまくいかないからです。

よってD社長は「仕組みを見せたら盗まれませんかね?」という心配でご質問されたのではなく「見た方がもしマネをしようとしたら大火傷してしまうかも?」「それは可哀そうだ」と老婆心からのご相談だったという事です。

 

世の中には様々な作品が日々生み出されています。

それは乗り物や映像、ゲームや高層ビル、アプリ、洋服、楽曲、食品等、直接目に見える物や見えない物など様々です。

中には「これはスゴイ!」と人を感動させ、大ヒットとなっている秀逸な作品もあり、生み出した人や企業には大きな利益が返ってきています。会社の経営者としては、自社の発展ためにそんな秀逸な作品をポンポン生み出し続けていきたいところです。

ここで注目すべきはその秀逸な作品の共通点です。

まず挙げられるのは、作品を見た人やライバル企業が「よし、ウチも同じことをして稼いでやろう」などと簡単にマネができない点です。

その理由は、モノによりますが完成するまで数年どころか何十年もかかっていたり、制作のべ人数が千人を超えたり、億を超えるお金がかかっているから。

もはや作品と言うよりも、芸術品と言ってもいい程の完成度で、とても「じゃあ私もやってみるか」などと気軽にマネして稼げるレベルではありません。

よって、企業が大ヒットする商品やサービスをポンポン生み出していきたいとするならば「簡単にマネされない」という条件は必須ということになります。

 

ところが「そんなことはもちろんわかってますよ」とおっしゃる方でも、いざ組織をマネジメントする立場になった時こんなことを平気で口にする方がいます。

 「まず結果を出してから物を言え!」

 

このようなマネジメントを行っていると最終的にどうなるのか?

結論から言いますと、その企業から生み出される作品やサービスは「素晴らしい」とは言い難く「これどっかで見たことあるよね」「聞いたことがあるね」と言われてしまう陳腐なものばかりになってしまうのです。

 

ここで質問です。

もし、あなたにこんな部下がいたらどうしますか?

 「大企業向けに工具🔨を販売する事業を始めたい」

そしてその人の発言から1年後、結果はほとんど出ていない状態です。

積み増したのは利益ではなく赤字。

しかしその人はこう言います。

 「当社のネット環境が遅いからです。(ISDNが主流の時代)」

 「データベースの性能も悪いからです」

 「工具のアイテムが30万点じゃ足りません」

 「もっと商品価格を安くしたい」

 「当初、在庫を持たない形でしたが、持つ形に変えたいです。だから物流センターを建ててください」

さて、あなたはどんな返答をされるでしょうか?

 

きっと多くの方はこう言うのではないでしょうか。

「NO!」と。 

実際にそんな人物が存在したわけではありませんが、新たな事業がこの例のように鳴かず飛ばずの状態であったにも関わらず、なんと「GO!」と判断された企業があります。

その企業とは工具通販大手のMonotaROです。

先月の29日に発表した連結決算は純利益が前年同期比12%増の93億円。13年連続で最高益を更新。とありました。MonotaROは見事に困難を乗り越え、大きな利益を上げ続けられています。

MonotaROが他社と違っていた点は

「まずはテストしてみて、うまくいったら拡大していけばいい。ダメだったら諦めよう」

ではなく、結果も出ていない「案」の段階でも「GO!」と会社を前進させられていたところです。

 

結果が出ていないのに人を動かさなければならない

これほど大変な事はありません。なぜなら

 ・長い間結果が出ていなければ「給料はちゃんと貰えるの?」と不安が募ります。

 ・30万アイテムでも足りないとなれば多くの従業員が必要です。

 ・「これチェック終わったの?」「なんで記録してないんだ!」など報連相の滞りにムカムカしてくるかもしれません。

 ・次々に打った一手が不発。どこに向かったらいいか?目標がぼやけ

 ・「ほら、売れてるでしょ? だから頑張ろうよ」とヤル気を引き出す根拠を提示できません。

 ・ネット環境が遅いとイライラしてきます。お客様も「使ってられない」となります

 ・データベースの性能が良くなければ「また一から入力し直しか」もあるでしょう

 ・物流センターが無ければ管理も大変。「あれ1本足りないぞ」などで貴重な時間はみるみる溶けていきます

 ・「頼むから、これ以上残業するな!」と唸りたくもなるでしょう

 

なぜ彼らは結果も出ないのに全員が「それでもやるぞ!」と団結し続けられ、やり通せたのか?

それは経営者に、企業の間接資材購買における課題・ニーズが目に見えていて“絶対にイケる!”という強い信念があったから。

 

このように、世の中に稀に存在する秀逸な作品は

まだ結果が出ていない「案」の段階でも皆「それでも頑張ろう!」となっているから

生まれているのです。

大きな収益を上げられている人達は未完成品を世に出してしまう事をとても嫌います。

「テストしてみて、うまく言ったら肉付けしていけばいいや」とは考えません。

 

組織のマネジメントにおいて「まずは結果を出しなさい」と言ってると、未完成品がどんどん世の中に流出していきます。その中には案のまま皆で力を合わせて創り上げられたら簡単に「億」を稼ぐ名作も存在しているかもしれません。

ところが

 「お?この会社はこんなことをしてるのか・・・いいヒントを得たられたぞ」

 「ウチはこの部分をこうやってみようか? もっと稼げるだろう」

会社の収益を上げる為に、仲間を納得させなきゃ。だからまずは結果を出して・・・という行動は、逆に他社にヒントを与えてしまっていて、将来得られたであろう莫大な利益を失っているかもしれません。

「まずは結果を出しなさい」というマネジメントは真似っこ競争が果てしなく続きます。

いつまで経っても会社の収益をドカンと押し上げる事が出来なくなってしまうのです。

 

 

「まずは結果を出しなさい」

そもそも、なぜ結果を出さなければならないのでしょうか?

同じ社内で働いている人達は結果を見せないと納得してくれないような「他人」なのでしょうか?

「他人じゃない!仲間だ!」というのであれば結果なんか見せてあげる前にわかってくれるはずです。

 「私はこうしたいと思ってます」

 「いい案じゃないか! それはイケる。私も協力するぞ!」

 「待て待て□□の部分を忘れてるんじゃないか?」

 「あ~ そうか。危なかった。確かにそうだね」

 「だろ? 俺もいないとダメそうだな」

など、まだ実現さえしていない絵空事にも、お互いに夢を語り合え、それに賛同、意見することは仲間にしかできないことです。

案のうちに肉付けが次々に続いていくからこそ、その作品は完成度が高く、いざ世間にお披露目した時には誰もが驚き、注目し、魅了されるのです。

やがてその反響は生み出した人や会社に、まるで

 「君(君達)はとても偉大な作品を生み出してくれましたね」

 「これはその報酬です」

 「これを元手に、より感動する作品が生み出されるのを期待していますよ」

と言われているかのように大きな利益となって返ってくるのです。