今週のマネジメント 第457話 社長の方針だと偽り、自分都合で組織を動かす人達を防ぐ一手とは?

「一体誰がそんな事を口にしたんだ?」

 「〇〇マネージャーです」

数日後、彼は降格人事を受ける事となったのでした。

 

 

これはあるチェーン企業で実際に起きた事です。

彼は社長の方針に沿った指示をすべき立場なのに、自己都合を優先。

方針の内容を勝手に歪曲させ、組織を動かしていました。

 

自社もそうならないようにと参考になるケースですが、こういった問題は発覚する方が珍しいです。

残念ながら多くの場合、社長の意に反した脱線は、社長の知らないところで発生するもので、気が付いたらとんでもない事態にまで発展していたというケースばかりです。

 

困ったことに、このような問題は店舗ビジネスにおいては、より発生しやすくなっています。

その理由として挙げられるのは、店舗というお互いに距離が離れていて、しかも働く時間帯もそれぞれが違うという「距離がある職場」だからではないでしょうか。

 

しかしこの脱線。社長にとって厄介な問題に違いはありませんが、実は予防策を打ちやすいという特徴があります。

それは、予兆が表れるからです。

それが何かといいますと「派閥の出現」です。

 

かつて、私がある企業の飲み会に同席した時の事です。

そこでは、社長の前でこのようなやりとりが社員間で交わされていました。

 「いやいや、私は根っからの〇〇っ子ですから」

  「え~ ■■君は違うでしょ。だって途中参加なんだから」

 「直系ではないかもしれませんが、そのスピリッツはずっと持ってますから!」

 

一見、社長にとって

 「この社員達は師からの恩義を忘れない、義理人情に溢れる熱い集団出身だな」

と見えるかもしれません。

 

ただ、少し見方を変えますとこういう事です。

 「我々は他の流派に疑問を抱くい」

 「独自路線を貫く、頑固な集団で続々とメンバーを増やしています」

 「その気になれば社長の方針にさえ従わない組織へも、変える事が可能です」

 

経営者が「一枚岩となってやっていくぞ」としたい場合、派閥の出現は残念な事です。

仲間意識を高めて結束していきたいんだ、というお気持ちは素晴らしいことではありますが、

社長としては望むのは

 「誰もが社長派」

となってもらいたいのが本音ではないでしょうか。

 

さて、そんな「社長の意と反して、組織を勝手に動かそうとする人達」に対して、どんな有効な対策があるのか?

 

私がお薦めするのは

 「誰もが社長の方針に沿っているか、確認しやすい環境を事前につくっておく」

です。

 

これは、ある組織の例です。

その組織だけは、他と比べていつも業績が悪かった為、打開策として新たな改革派のリーダーが選任されました。

 

新たなリーダーは「一刻も早く結果を出したい」

熱い想いを口にしては、全体をグイグイ動かそうとしていたのですが、なかなかスピードが乗りません。

 

何故なのか?

 

判明したのは、「ダラダラやってりゃいいでしょ」という考えを持つ古株のメンバーを中心としたグループの存在があったからでした。

その為か、いくらリーダーが優秀な人達を説得して動いてくれたとしても

 「君達だけだよそんなに頑張ってるのは」

 「何やってんの?」

 「簡単にしっぽを振って、恥ずかしくないの?」

という扱いを受けてしまっていました。

 

なかなか改革が進みません。

いくら優秀なリーダーでも人の子。

次第にイライラがつのっていき、ついつい口調も厳し目に・・・。

 

いつしか組織内の人達の間では

 「今度のリーダーは最悪だ」

 「みんな、従うんじゃないぞ」

 「アイツにはついていくような奴は狂ってる」

となってしまったのです。

 

困ったリーダー。

しかし、そこで打てたのは起死回生の一手。

 「誰もが簡単に社長の方針を確認しやすくする工夫」

でした。

 

そこから一転。

今まで我慢していたリーダーは

 「君達の行動は、社長の方針に沿っていないよね?」

という接し方でどんどん指摘し、改善を要求していきます。

 

今までダラダラ、ニヤニヤしていた人達は

 「あなたは社長の方針に反しているよ」

という印籠に反論ができません。

 

やがて組織はこんな雰囲気になっていきました。

 「見てよ、あの動かないで有名なSさんが走ってるぞ」

 「今度のリーダーはハンパじゃないぞ・・・」

 

それまでは

 「あの古株のSさんがああなんだから、私も焦る必要は無いよね」

だった状態から、誰もが

 「やばい、早く動かないと」

と変わっていったのです。

  

その結果、リーダーは

 ・メンバー全員の行動に常に目を光らせなくても

 ・自らが模範となって誰よりも長く働き続けなくても

 ・誰かのミスや不徹底を尻拭いし続けなくても

組織全体で数字も伸ばすことができていったのでした。

 

 

重要なのは、その組織に「何があったら?」正しい方向へと進路を変えて動き出していくことができるのか?

 「こんなのがあれば、うまくいくんじゃないか?」

その欠けた何かをイメージし、生み出してみることです。

 

そもそも社長の方針に沿わないことをはじめる人達が現れてしまう理由は、

です。

 

会社としてそういった対策をとっていなければ

 「私の発言は、社長の方針なんだぞ!」

 「従いなさい」

勝手に捻じ曲げられ、全員を自己都合で動かそうとする人が現れてしまいます。

 

部下達はその真偽について確かめようがありません。

仮に、ある部下が少し疑問に思ったとしても

 「リーダー、それは本当に社長の方針なのですか?」

など言えません。

そんな事を口にしたら

 「コイツは上司の命令に従わず、反抗的な人だ」

という評価をもらってしまうからです。

 

だからといって、直属の上司ではなく、違う部署に相談したとしたらどうなるのか?

 

その場合、うまく事が運べば何とかなるでしょう。

ただ、それが空振りに終わったとしたら・・・どうなってしまうのでしょうか?

 

もしかしたらその後は、その社員に「よろしくない事」が起き続けるかもしれません。

 

 

組織の全員を向かって欲しい方向に変えるのはとても大変なことです。

まして店舗ビジネスという、ただでさえ社長と社員やスタッフの距離が離れてしまう環境ではなおさらです。

 

社長の方針を勝手に捻じ曲げ、自己都合で皆を扇動しはじめる暴走リーダー。

そんな人達が生まれてしまうと、多くの社員やスタッフが被害にあいます。

彼らが被害にあうと、多くのお客様にも影響が出てしまいます。

 

よって、注視すべきは暴走リーダーの出現の予兆です。

それを見てから、事前に手をうち始めるのは可能だからです。

 

社員もスタッフも全員が社長派となっているのか?

社長は、常にこういった視点で確認することをお薦めします。

 

 

御社はいかがでしょうか?

 「これは社長の方針なんだからちゃんとやれ!」

 

「我が社にはそんな行為など無い」

「社長の方針は、勝手に捻じ曲げられないようになっている」

そう言い切れるでしょうか?