今週のマネジメント 第486号 お願いしても変わらない人がいなくなった事例

 「頼むからちゃんとやってくれ」

 「何度言ってもダメでした」

 「何かいい方法は無いでしょうか」

ある社長がおっしゃいました。

 

お願いしたはずなのに、しばらくするとまた同じような失敗を繰り返される。

店舗型のビジネスにおいて、そんな体験をされているリーダーもいらっしゃるのではないでしょうか?

 

こういったケースは社長にはもちろん、店長にもあることです。

 

 ・このまま言い続けると空気が悪くなっていってしまう

 ・あまり言い過ぎてもいけないか?

 

 ・ひょっとしてお願いする側があきらめるのを狙っているのだろうか

 ・だからといって放置してしまうと、悪化して波及してしまう

なかなかにやっかいな問題です。

 

どうするべきか?

 

この問題は一見、お願いするかしないかの二択のようにも見えますが、そんな時は別の視点で捉えてみてはいかがでしょうか?

 

それは

 ・そもそも何故こうなってしまうのか?

 ・こうならない選択肢がもっと前にあったのではないか?

 

確認していただきたいことはいくつかあるわけですが、今回のコラムではその1つを挙げてみます。

 

それは

 組織の雰囲気を「リーダーを助けて」

にしていないか?

 

それは例えばこんな事です。

 ・社長が大変そうだ。

  誰か、社長が抱えているあの件を担当してあげて

 

 ・社長が苦しそうだ

  我々はこれ以上わがままを言っちゃいけない

 

 ・店長がしばらく休めていない

  誰かシフトを増やしてあげられないのか?

 

 ・店長の顔色が悪い

  だからこれ以上問題を起こしてはいけない

 

ここで

 「それの何が問題なの?」

 「それも一つの方法では?」

といった声もあることでしょうか。

 

私は別にやってはいけないと言いたいわけではありません。

リーダーは人間です。時にそういった弱ってしまう面もあります。

そんな時、社員やスタッフ達からの支援があると心強く感じられるのではないでしょうか。

 

ただ危ないのは、意図して組織の雰囲気を「リーダーを助けて」にし続けていることです。

なぜならその状態は、仕事をする目的が「リーダーの為に」になってしまっているからです。

 

さて、そんな組織内にこのような考えをもった人がいたらどうなるのでしょうか。

 「私はお客様のために仕事をしている」

 「そして自分のために」

 「別にリーダーが嫌いなわけではないが、私はリーダーのために仕事をしているわけではない」

 

そんな人がある日、やらなければならない仕事や、困り事が多すぎて

 『頼むから私を助けてくれ』

 『私のために何とかしてくれないか』

といった雰囲気を醸し出しているリーダーから行動を変えるようにお願いされたとしたら・・・

 

はたしてその人は行動を変えてくれるのでしょうか?

 

更に、問題はこれだけにとどまりません。

 

もしそんな人が違和感を感じて、リーダーに言われたことを実施しなかった場合、どうなることでしょうか。

 

そんな人達とは逆に「私達はリーダーを助けなければならない」と考えてくれている人達の目には「あの人達は、今にも倒れそうなリーダーのお願いを聞かないで、いつも通りに平気で仕事をしている」という姿が映っていることになります。

 

さて、そんな組織は皆が一致団結して、成果を出していけるのでしょうか?

 

 

会社も店舗もそうですが、組織には目的があります。

 「何のために仕事をしているのか?」

 「それは誰のためなのか」

 

これはリーダーはもちろん、メンバー含めた全員が一致していなければなりません。

 

私はこれまで、リーダー自身が「私を助けてくれ」といった雰囲気を醸し出しているのに、成長を続けている組織を見たことがありません。

 

それとは逆に元気に成長している組織は、リーダーもまた元気です。

 ・社長が猪突猛進。「また社長が暴走しはじめた」とよく言われ、社員達が必死に社長を追いかけている状態だったり

 ・店長がエネルギッシュで、スタッフ達から「店長、少し離れて下さい」と言われるほど暑苦しいと感じられていたり

 

 

そもそも「注意」ではなく「お願いしている」という時点で危険信号です。

 

 

 「何度お願いしても変わってくれない人がいる」

もしかしたらその原因は、それぞれが抱いている目的が一致していないから、なのかもしれません。