今週のマネジメント 第487号 人の気持がよくわかっているリーダーなのに、結果を出せなかった理由

 「このままではダメなんです」

数十年間、自ら現場の先頭に立ってきた社長がおっしゃいました。

 

社長は数日前まで入院されていました。

仕事中に倒れてしまったのです。

 

社長ありきの仕事ばかりだった現場は大混乱。

従業員はもちろん、多くのお客様に迷惑をかけてしまったとのことでした。

 

 

店舗型のビジネスにおいて、どんなリーダーが組織を成長させていくことができるのか?

 

それは「人の気持がよくわかる」です。

 

しかし、逆に人の気持がよくわかるリーダーは組織を成長させていけるのかと問われますと、必ずしもそうとは言えません。

 

その理由は、これまで私が目にしてきた組織は次の2つのパターンに分かれているからです

 1.リーダーは暇。新たな事に時間を使える

 2.リーダーは忙しい。誰よりも仕事漬けで大変

 

ここで「だったら2は皆が頑張ってもらえるような1に変えればいいだけでは?」と言われるところでしょうか。

 

しかし、実際に変えようとする人はそうそういらっしゃいません。

 

おそらくその理由は、皆のためだからリーダーは忙しくあるべき。

そんなイメージをお持ちだからではないかと見ています。

 

2の組織のリーダーは一見、

 「模範となる頼れるリーダー」

かもしれません。

 

しかし少し言い方を変えればこういう事です。

 「リーダーがいつ倒れてもおかしくない危険な組織」

 

当たり前ですが、社長はもちろん、店長、各部所長はスーパーマンではありません。

普通の人間です。

 

時に体調を崩し、時に精神的に参ってしまったり、リーダーだけがそうならない特別な人というわけではありません。

 

適度な休息も休日も必要です。

ハッキリ言いますがリーダーが身を粉にして働いていて今、良い業績も出し続けていられている状態は、「たまたまうまくいってるだけ」です。

 

私はそんなリーダーから相談があった時、こんな質問をしています。

 「あなたが倒れたら、みんなはどうなるんですか?」

 

 

ここで

 「リーダーとは、忙しいのが当たり前と思っていたけど、もしかしたら違うのでは?」

そう感じている方に、持っておいて欲しい視点があります。

 

それは

 社員やスタッフ達の意志は尊重されていますか?

 

人はそれぞれ能力も考え方も仕事のスピードも違います。

リーダーはそんな人それぞれの特徴をよく把握できていることでしょう。

 

だからなのか、たまに見受けられるのが本人の意志が固まらないうちに「きっとAさんはやってくれるだろうから」などと、次のステップへと話を進めてしまう方がいらっしゃいます。

 

一見、空気も読めて、仕事も早いリーダーといったところでしょうか。

 

その結果がうまくいった時はこうなることでしょう。

 リーダー「Aさん、さすがですね」

 Aさん  「リーダーのおかげです」

 

では逆に、うまくいかなかった時はどうなるでしょうか?

 

Aさんが

 「リーダーが勝手に進めたからだ」

などとなることは無い、と言い切れるでしょうか?

 

 

組織として危ないのは、そういったスレ違いが重なっていくことです。

 

リーダーから見たAさんは

 「全然反省しない人」

 「責任感が薄い」

 

一方、Aさんから見たリーダーは

 「リーダーのせい」

 「私はやるなんて一言も言ってない」

 

しかし時間の流れ、お客様のニーズは待ってはくれません。

それでも会社や店舗を何とかいつも通りに回していく必要があります。

 

リーダーと皆の想いがバラバラなのに組織を回さなければならない。

 

その負担がのしかかる会社の責任者、店舗の責任者は誰でしょうか?

 

 

結果を出していける強い人とは、自分の意志が強い人です。

意志を周囲にはっきり示すことができ、最後まで責任を持ってやり遂げられる人です。

 

そんな意志の力を強くするのは実践を繰り返す事です。

 

自分がやると決め、その意思を周囲に示す。

そのサイクルを繰り返す。

 

 

社長は社員達にどんな力を磨いていってほしいですか?

 

店長はスタッフ達にどんな力を磨いていってほしいですか?

 

それは

 「どうしたら自ら責任を持って最後までやり遂げられるのか?」

 その決意力、決断力でしょうか?

 

それとも

 「どうしたら自分の意志を表明せずに、リーダーが自分の代わりに動いてくれるようになるのか?」

 その空気の醸し出し方でしょうか?