今週のマネジメント 第499号 店舗をキレイにしてくれる部隊は必要か

 「このマットを固定している黒テープがいいですね」

 「おそらく会社の指示ではなく、お店側の工夫でしょう」

 「お客様がつまずかないようにという、店員さんからの思いやりを感じます」

一緒に入った飲食店の入口で、ある社長がおっしゃいました。

 

最近、社長との会話で多くなったのは清掃面についてです。

 

やはりチェーン全体を揺るがす問題に発展した事件が立て続けに起きたからでしょう。

 

それまでお店の清掃が徹底できていない飲食店企業もやってこれていましたが、今はそういうわけにもいかなくなりました。

 

 

どうしたらお店はキレイな状態を維持してくれるのか。

 

日々頭を捻っている社長もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

ここで私はそんな社長にお伝えしたいことがあります。

 

それは
 「自力でキレイにできない店など無い」

 

 

と言いますのも「お店がキレイな状態を維持できないから」という前提のもとで手を打とうとしているケースが多いからです。

 

べつに社長が社員やスタッフ達に「自分が所属している組織をキレイな状態に維持できる人」を求めていなければ何も問題はありません。

 

ただ、その場合は店舗をキレイな状態に保つ役目はお店の従業員ではなく、社長含めた本部の仕事となります。

 
ことあるごとに対策をうってあげなければならなくなります。

 

 

しかし、社長が社員やスタッフ達に「自分が所属している組織をキレイな状態に維持できる人」を求めているのであれば話は変わります。

 

都度都度社長が、お店をキレイにしなければと気を配る必要はなくなりますが、その代わりに考えなければならないのは

 「どうしたら会社が、店舗をキレイな状態に維持してあげられるか」

ではなく

 「どうしたら店舗社員やスタッフ達が、店舗をキレイな状態に維持してくれるのか」

 

 

これを実現することは簡単ではありません。

 

その理由は工夫すること自体が大変だからですが、厄介なのはそう決心した社長には逆風が発生するからです。

 

 

現在、店舗型のビジネスには

 「いつまでもキレイにできない店」

がポツポツと存在しています。

 

そして、他社に目をやると

 「御社の清掃面をサポートします」

というビジネスがいくつも存在します。

 

問題なのは、日々こういった現状を目に、耳にしている人達の感覚です。

 

日々の目標数値を達成しなければならず、人手不足問題も何とかしなければならない忙しい店舗。

 

清掃ができていない店はいくつもあり、まわりに目をやりますと、会社がお金を払ってさえくれれば、お店の清掃を一部やってくれるサービスがあちこちにあるというのに、何故か社長からは

 「店舗は、そこで働く人達が自力でキレイな状態を維持するべきだ」

 

 

果たして、皆

 「確かにその通りだ」

と、素直に捉えてもらえるでしょうか。

 

 

これと似たような事例があります。

 

世の中に、カスタマーハラスメントというワードが普及する前のある会社でのことです。

 

そこでは商売柄か、常に一定の割合でお客様からの過度な要求が発生していました。

 

これを問題視していた社長がとった行動は

 「今後は過度な要求には屈しなくていい」

 「毅然とした態度で接しなさい」

 

それまで「お客様は神様」といったワードが定着していた時代に打ち出したものですから、社外からはもちろん社内からも

 「そんな態度をとっていいの?」

 「とんでもない問題に発展するんじゃないか」

 「下手するとマスコミにやられるぞ」

などの疑問の声が上がっていました。

 

 

しかし一番救われたのは、日々苦しみ続けていた各店長達です。

 

社長の方針転換から対応を切り替えた所、特に大きなトラブルに発展することもなく、お客様からの過度な要求はみるみる減っていき、通常の運営に集中できるようになったのです。

 

今でこそ、カスハラは悪という考え方が店舗型のビジネスにすっかり定着していますが、当時それを先んじてた社長にはどれほど辛い逆風があったことでしょう。

 

 

世間に定着している意識は、これから改革を進めようと動く社長の障害となります。

 

しかもその目的がキレイなお店の維持となると、その困難を乗り越えたとしても、すぐに利益が得られるわけでもありませんから、社長以外の人達から辛い反応があることでしょう。

 

 

「店舗で働く社員やスタッフ達が、自力で店舗をキレイな状態に維持してもらうには?」

 

これを達成することは割に合わない事かもしれません。

 

ただ1つ考えていただきたい点があります。

 

それは、キレイな状態を維持できていないお店に

 「もっとキレイなお店にしたい」

と思っている人がいたとしたら、その人は日々どう感じているのか、です。

 

 ・自分はキレイにしたいと頑張っているのに他の人達は平気で汚くします

 ・皆キレイにしようという意識が無いため、雑な行動が多いです

 

 ・自分がいくら頑張ってもキレイにはなっていきません

 ・時には「そんな事あとでいいから」と注意を受けたりします

 ・キレイにしようという意識が無い人でも、結果さえ出していれば会社からは評価され、昇進していきます

 

「お客様はもちろん、一緒に働く仲間達に気持ちよく仕事をしてもらいたい」

そんな考えで頑張ってきた毎日に意味があったのだろうか・・・。

 

 

御社の店舗の清掃状況はいかがでしょうか。

 

お店はキレイな状態を維持できていますか。

 

そして、キレイな状態を維持してほしいのは、どなたでしょうか。

 

お店以外の人達ですか?

 

それとも、お店で働く社員やスタッフ達自身ですか。