なぜか多店舗型ビジネスの社長だけが見落として、失敗し続けている「求人の基本」とは?
「伊東さん、これは求人方法に問題があったんでしょうか?」
ある社長からご相談がありました。
これから新たな取り組みを始めるとのことで人手が欲しく、過去一充実させた待遇を用意して求人広告を出したにもかかわらず、想定していた採用数に至らなかった原因を探りたい、とのことでした。
弊社にいらっしゃる社長のご相談内容は様々です。
多いのは多店舗型ビジネスのマネジメント面についての問題ですが、前述の社長のように、良い人材を効率よく採用したいという求人についてご相談もあります。
その求人についての相談内容は大きく分けて2通りです。
・もっと業績を伸ばしたい
・問題を解決したい
今回のコラムでは後者の「人手不足を解消したく求人を出したのにうまく採用に至らない」に焦点を当ててみます。
原因はそれぞれ企業によって違いますが、実は恐ろしい事に、その原因の大元を辿れば「どの企業も一緒」と言えるほど共通しています。
よって、多くの多店舗型ビジネス企業が「求人をかけても、良い人材の採用に至る事ができず、コストがかさんでしまったまま」・・・といっても過言ではありません。
ではその原因は何なのか?
それは「私はこのお店で働きたい」と思われる要素が欠けている、です。
言い換えると「私はこのお店では働きたくない」と思われている可能性が、どの企業も高いということです。
どんなお店がそうなのか?
具体例を挙げますと
・店員に笑顔が無い
・元気も無い
・まるで感情が無いロボットのように働いている
・店員同士の距離感、ギスギス間が感じられる
・おしゃべりに夢中な人達と黙々と仕事をしている人が別れている
・商品もしくはサービスを引きたてようとしていない
・ごちゃごちゃの陳列
・やっつけ減がある盛り付け
・店舗が汚い
・整理整頓ができていない
・備品が山積み、丸見え
・駐車場がゴミだらけ、雑草が目立つ
・誰も不備を見つけよう、修復しようともせず、放置したまま
・お店をまわすことだけに集中している
店舗がこのような状態のまま求人をかけてしまうと、どうなるのでしょうか?
もしかしたら、せっかく待ちに待っていた
「私はこの会社で働きたいかも・・・」と迷っている方
が現れてくれたとしても、その人が最終確認の為にお店に来てみたら、
「え・・・?」
「何これ?」
「・・・やっぱりやめよう」
となってしまっているかもしれません。
さて、こういった事を多店舗型ビジネス以外の方から見れば
「この伊東って人は 何、当たり前の事を言ってるんだ」
「お店、現場を良い状態にしておくのは当たり前の事じゃないか」
「そんな基本をすっとばして求人をかけている企業なんかあるの?」
と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実は、この当たり前の事。
驚くことに、多店舗型ビジネスの経験が長い人ほど気が付かないものなのです。
いや、気が付いてはいるけど、見て見ぬふりをしている・・・と表現した方がいいかもしれません。
そうなってしまっている理由の1つにあるのは、
どの企業の店舗も、その当たり前の事ができていない状態
だからです。
それはまるで
「店舗ビジネスとはこういうもの」
「店舗は細部まで徹底できていないのが普通」
「これが徹底できている企業なんて、まず存在しない」
「だけど、その異常事態を何とかしようとさえしなくてもいい」
「だって、問題を放置してたって上層部から何も言われないんだもの」
「きっと社長も『徹底できてなくていいんだよ』と容認しているんだよ」
と言わんばかりに。
現実に多くの企業で、今日も
「私はこのお店では働きたくないな」
と思われてもおかしくない状態なのに、求人を繰り返してしまっているという異常な状態が続けられています。
厳しい言葉ですが、こんな状態を放置してしまっている企業は「感覚がマヒしてしまっている」と言えます。
接客業に大切な「お客様視点」を軽視しています。
よって、会社が新たな頼れる人材を必要としているのならば各社の社長、従業員達は、これらの事態を客観的に見つめ、
「これはおかしい」
と捉え
「すぐに改善しなさい」
「そして維持しなさい」
と、社長が全員に号令を出すべきなのです。
実は、この「私はこのお店で働きたい」と思われる要素が会社に有るか無いかで、採用率は全然違ってくることはもちろんですが、それが有ると更に良い効果も得られます。
それは「優秀な人材」も増えていきやすいということです。
今回にコラムでは、実際に求人をかけては、高い採用率を出し続けられていて、しかも社長が直接評価したくなるほどの優秀な人材が増え続けている企業の、従業員さんの声をご紹介します。
「前の職場では、いくら頑張っても評価されませんでした」
「だけどこのお店は見えない努力まで評価してくれるのでは?と何店か利用してみて思いました」
「実際にそうだったので良かったです」
「以前は他の人が楽ばかりしていた為、私が多くの仕事を抱えてしまう職場で精神的にまいっていました」
「この会社はそんな事がありません」
「たとえ仕事が遅い人であっても新たな事を覚えよう、モノにしようと皆が必死なので負けていられないなと思えます」
「前に勤めていたお店では、採用されてすぐ店長からシフトを増やして欲しいと言われて困りました。」
「ここは、そうならないような仕組みあるから安心してます」
「今は家庭に多くの時間を割かなくても良くなってきたので、もっとシフトを増やしたいと、こちらからお願いして対応してもらえました」
これらの声のように、実は会社にとって良い人材、できる人達は他の人とちょっと考え方が違います。
そんな人達の目は鋭いです。
・ただ単に時給を上げました。
・週一でも働けますよ。
といった小手先の工夫に満足して応募に来て下さる方々ではありません。
真剣に自分の力をお客様や会社、世間の為に役立てたいと考えている人達です。
・自分の想いを実現してもらえる企業なのかどうか?
・もしかしたら自分の努力をうまく引き出せない企業で、ずっと苦労させられるところではないか?
十分な納得を得られる情報が本人に伝わらなければ、応募先として選んでいただけることはありません。
よって、社長が「人の力で業績を上げていきたい」とした時、
そういった、できる人達が「ここで働きたい」となっていただくポイントをおさえることはことはもちろんですが
「私はこのお店で働きたい」といった基本中の基本が店舗で実現できていることは必須なのです。
さて、もしかしたらここまでで
「当社はそれができていない」
「基本から手を加える必要があるが、多くの時間と労力をかけなければならなそうだ・・・」
と長い道のりを感じてしまう社長もいらっしゃるかもしれません。
しかし、逆に考えてみてはいかがでしょうか?
求人における基本の「私はこのお店で働きたい」は多くのライバル企業が徹底できていないということです。
つまりここを実現できれば、それだけで大きな差を付けることができる、ということでもあります。
多店舗型ビジネスには大きなチャンスが眠っています。
この求人の分野1つとっても、大きなチャンスが眠っている、と言えるのではないでしょうか?