今週のマネジメント 第474号 君は何年働いてるの?・・・疑問を持つ社長が見るべきポイント

「カスハラでも何でもなかったんです。」
ある社長が呆れておっしゃいました。
店舗スタッフが悪質なカスタマーハラスメントを受けたと報告があったため、
「来たか」
会社として
「不当な要求に真摯に対応する必要はない」
「毅然として対応しなさい」
と構えていた所、なんとその原因は店舗スタッフの不手際だったことが判明したからでした。
最近、世間ではカスハラはご法度といった風潮が生まれ、それが浸透しつつあります。
そのため、
今迄は、どんなお客様であっても「決して反論せず、耳を傾けなさい」といった形から
現在は、「不当な要求に応じる必要は無い。毅然と対応しなさい」
に変えた、という企業もあるのではないでしょうか?
一昔前までは、カスハラというワードさえ存在していませんでした。
「今思えば、あれは完全にカスハラだった」
「言いなりになってた事自体が異常だった」
とおっしゃる方も。
店舗型のビジネスにおいて、カスハラは身近な問題です。
困ったことに「店員とは、自分よりも弱い立場の人達だ」と見られる傾向があるからです。
私自身も過去に都内のある店舗で店長をつとめていたころ、週末のここぞという書き入れ時に発生しました。
大声を上げられ、何事だと場は騒然となったのですが、必死に対応し何とか事態を収拾。
しかし最悪だったのは、完全に解決するまで何日も尾を引いたことです。
それまで何度も同じ武勇伝を聞かされ、本当に参ってしまいました。
幸い、今となっては「不当な要求に応じる必要はない」となり、昔と違って仕事がしやすくなりました。
しかし、今だからこそ気をつけなければならない点があります。
それは、店舗勤務の社員やスタッフが「これはカスハラだ」と間違って捉えてしまうこと。
冒頭のケースがまさにそれです。
店舗型のビジネスでは、社員やスタッフ達に
「相手に非があるのでは?といきなり判断してはいけない」
「まずは自らを振り返ってみましょう」
としていただかなければなりません。
ただ、これだけですと
「そんなのビジネスマンの基本じゃないですか」
「何年も働いている人が、いきなり相手が悪いと決めつけたりしないでしょ」
「当たり前のことを今更?」
と言われることでしょう。
ではここで質問です。
Q:店舗型のビジネスにおいて、店長とスタッフ間に仕事上の関わりが無くても、まわる状態になっていませんか?
これの何が問題なのか?
そもそも店舗という組織は、会社の部署とは構造が違います。
大きな違いは、皆がリーダーと一緒に働くことがほとんど無い、という点です。
・営業時間が長ければ、朝から夕方の時間帯に店長がいても、それ以外のスタッフにはお会いできません。
・また店休日が少なければ交代での勤務が必要となり、出勤する曜日も異なります。
・店舗型ビジネスは主に接客業ですので、お互いに距離を置いて仕事をすることがスタンダードです。
このように、本部勤務の従業員達とは働く環境が異なります。
リーダーと皆との関係はどうしても希薄になりやすくなってしまうのです。
すると、以下のような状態が起こりえます。
・店長と話す事は世間話のみ
・ミスをしてしまったが何も言われなかった。これくらいのミスは許されるのだろうか?
・時給が少ないんだから、少しくらい自分のものにしてもいいのでは? 全然バレなかった。
店長になれる方は優秀ではありますが、スーパーマンではありません。
いくら気合を入れて目を光らせていても限界があります。
問題なのはここです。
長い間、店長とはビジネス上のやり取りがしばらくなかったスタッフがいざ、お客様から指摘があった時
「しまった、これは私のミスだ」
「申し訳ございません」
とっさに省みることができて、頭を下げることができるのでしょうか?
会社として
「社員やスタッフ達を悪質なカスハラから守らなければ」
といった姿勢は重要です。
また
「今は人手不足だから、辞められたら大変だ」
「待遇を手厚くしよう」
なども重要で、実際にそうしているという企業もあることでしょう。
しかし、だからといって教育や指導がゼロでいいわけではありません。
「まずは自分に非がないか?」
そんな、ビジネスの基本的な要素が社員、スタッフ間に欠けていては先に進めません。
基本がなっていないと、いつまでも人は成長していきません。
「彼らは何年も勤めているはず。」
「採用したてでもないのに、なぜいまだにこんなレベルなのか?」
この疑問は解消されません。
そうならないように、会社としてどんな手を打つべきなのか?
事前に整えておく必要があるのです。
