今週のマネジメント 第483号 各店長が人に困っているから、社長は新規出店を決定。どういう事なのか?

「ここに新店を出そうと思ってまして」
ある社長からのご相談でした。
私の返答は
A社には「よしたほうがいいのでは?」
一方、B社には「いいと思います」
そう判断した理由は立地条件や会社の収支を見せてもらい、それが悪かったから、良かったからではありません。
それらは会社がすでに調査済みのはずだからです。
私が真っ先に確認する点。それは
「店舗自体が、働きたい人が集まってくる形になっているか」
店舗型のビジネスにおいて、
「1号店がうまくいってる。だからどんどん新店を出していってチェーン化していきたい」とお考えの社長もいらっしゃることでしょう。
しかしそう簡単ではありません。
そう言えますのも
・1号店がうまくいってたのに、2号店は失敗した
・3店目をだしたら急に失速。まわすだけでいっぱいっぱいになってしまっている
など、残念ながらよくあることだからです。
なぜそうなってしまうのか?
その理由として多いのが
「店舗自体が、働きたい人が集まってくる形になっていない」
からです。
ちなみにこれは「自社がそうなっているのか」自己判別が困難です。
なぜなら
「実は当社の店舗は、働きたい人が集まってくる形になっていないんです」
など、自覚できる要素ではないからです。
人は自分で自分のことを完全に客観視することができません。
それは企業も同じです。
もし社長が「社外からの視点、意見が欲しい」ということであれば、弊社ピアーズをご活用下さい。
単発のスポットコンサルティングをご用意しております。
・つまづくことなく順調に拡大していきたい。
・今の計画がうまくいくか?
・何か見落としが無いか?
など、店舗型のビジネス経営者が利用しやすいように、東京での現地相談はもちろん、Zoomでも対応しています。
お気軽にご利用下さい。
「店舗自体が、働きたい人が集まってくる形になっているかどうか」
白黒ハッキリ判別したいというわけではなく、簡単でもいいから自力で判別したいという社長がいらっしゃるでしょうか?
それでしたら、オススメの方法があります。
それは
「各店長が今、どんな課題を抱えているのかを確認する」
です。
もし各店長が「人手不足で困っています」となっているのであれば、いくら出店エリアが好条件であったとしても、いくら会社の業績が良かったとしても新規出店は控えたほうがいいです。
しかしそれとは逆に、各店長が「もっとシフトに入りたいと言われてますが、空きが無く困っています」となっているのであれば、出店を決めるべきです。
さてここまでで「伊東さん、何を当たり前の事を・・・」と言われるところでしょうか。
しかし、その当たり前のことが当たり前にできているのか。
今、存在している各店舗型のビジネス企業も「できている」と言えるでしょうか?
もし、その当たり前が各企業で実現できているのであれば、
なぜ我々は「スタッフ募集」とデカデカと店舗に掲げられている状態を何度も目にしているのでしょう。
ここでコラムをご覧の貴方に1つ質問です。
あなたは御夫婦2人で、地元で商売を始めました。
1号店の売上、利益は予想以上に得られています。
貯金も順調に増えていってます。
一見順風満帆です。
しかし、ただひとつ難点があります。
それはスタッフ不足。
なかなか解消できず、御夫婦ともに生活の時間を削ってまでフル回転してやっとまわせている状態です。
そんな中
Q:「よし2号店を出そう」となるでしょうか?
・きっとお店が増えれば認知度も上がり、働きたい人もやってくるのではないか?
・オープニングスタッフ募集!という広告をうてるんだから、何人か来てくれるだろう。
・いざとなっても蓄えはあるんだ、何とかなるんじゃないか?
・2号店の出店地区で宣伝したら、そこに住んでいる地元の方が働きたいと言ってきてくれるに違いない
そんな希望を抱いて、見切り発車ができますか?
もしかしたらその通りになって、うまくいくかもしれません。
店舗数は2倍になったのですから、今まで以上の多くのお客様に喜んでいただき、蓄えももっと増やしていけることでしょう。
しかしもしうまくいかなかったら・・・?
1号店をまわすだけで、生活の時間を削っているのに2号店のことも考えなければならなくなってしまいます。
一体どうなってしまうのでしょうか・・・?
私が言いたいことは
店舗型のビジネスとは、売上や利益はもちろん、ここで働きたいと願う人が増えていく形になっていてはじめて成立する
もはや、働きたい人がそこらじゅうにいた時代ではありません。
もし人が集まらなかったとしても、スタッフ募集と掲げさえすれば、何とかなってしまうだろうという世の中でもありません。
重要なのは会社として、あらかじめ店舗自体を「ここで働きたいと願う人がやってくる形にしておくこと」なのです。
見切り発車で新店を出店して、もし人が集まらなかったら・・・?
一番初めに誰が苦労するのでしょうか?
その苦労をこれから常に背負い込むことになるのはどなたでしょうか?
今日はもう疲れたから閉店です、といきなりレジ停止!などできるのでしょうか?
ビジネスとは、それに関わる全ての人が笑顔にできて、初めてビジネスと言えるのです。
お客様が喜べて、売上、利益が得られる。
でも従業員は辛い。
私はそれをビジネスと言いません。
「ここで働きたい」
そんな人が次々にやってくる。
「店長、もっとシフトに入りたい」
そんなスタッフからの要望が絶えない。
これこそが店舗型のビジネスなのです。
