今週のマネジメント 第493号 自発的にキレイな状態を維持できている店舗。社長がうった手とは

「伊東さん、お店がキレイな状態を維持してくれる良い方法はありますか」
ある社長からの質問でした。
昨今、異物混入事件が世間を騒がせています。
清潔さが損なわれてしまうと会社の命取りになりかねません。
これはただ単に「きれいな状態を維持しなさい」「ハイ」などで解決できる問題ではありません。
今まさにその難題の解決に取り組んでいる、という店舗型のビジネスの経営者もいらっしゃるのではないでしょうか。
どうしたらお店がきれいな状態を維持してくれるのか。
結論から言いますと
「頑張った人が報われる形になっているか」
ここで「何を当たり前のことを」と言われるかもしれません。
ほとんどの仕事は、頑張れば報われるような形になっているからです。
しかし清掃面は違います。
頑張っても報われるとは限りません。
かつて忙しい店舗で働いた経験がある方ならわかることでしょう。
結果を出すことと、店舗をきれいに保つこと。その両立の難しさが。
・やることは山のようにあるけど、清掃を後回しにしていいわけではありません
・時間がないけど誰も掃除してくれず、見るに耐えない状態に発展してしまい「自分がやるしかない」と身を削って実行したり
・暇な時にやろうかと決めてても、そのタイミングはなかなかやって来ません
・ひどい状態を上司に発見され、大目玉となったり
・頼むから皆ちゃんとやってくれと言っても、反応が無かったり
・時間が出来た時、これでもかと頑張ってピカピカにしたところで、誰からも感謝されず
・意識改革が重要だとミーティングしたのにも関わらず、1週間もしたらいつも通りとなったり
・やっと頑張ってくれる人が現れたと思ったら、掃除に夢中で通常業務を軽視され、
・「掃除ばかりしてないで」と指摘したら「じゃあいい加減でいいんですね」など逆ギレにあったり
お店がきれいな状態を維持してくれることは簡単ではありません。
ここで多くの企業が取る一手があります。
それは、都度指示する。
「最近お店が汚いです。これではお客様に失礼です。掃除を徹底しましょう」
「ハイ」
この方法であれば、都度都度指示を飛ばせばキレイな状態は一時的には維持できます。
しかし社長が求めている店舗とは、都度指摘しなければ清掃ができない。
そんな店舗なのでしょうか。
そもそもキレイにしておく。
これは商売における基本です。
やれと言われてやることではありません。
できていて当たり前のことです。
それは例えば、見苦しい身だしなみのビジネスマンです。
何人ものお客様を相手にしているはずなのに、自ら身だしなみの悪さに気がついて改善しようとしてくれません。
ただ、上司から注意、指導を受けた時だけはしょうがなく身だしなみを整えようとします。
そんな人は存在するでしょうか?
仮に存在したとしても、その人は良い結果を出していけるのでしょうか?
お店がきれいな状態を維持してほしいと、もう一つよく見る手があります。
それは、リーダー自らが率先する。
これはリーダー自身が好きでやっているならそれでいいのですが、もし「私の背中を見て真似してほしい」というのであれば、効果は期待できません。
その理由はシンプルで、そもそも清掃を頑張る人が報われる形に変えられたわけではないからです。
効果があるとしても、せいぜいご機嫌取りが得意な人が、リーダーから見える範囲だけやってくれる程度です。
どうしたら店舗はきれいな状態を維持してくれるのか?
店舗型のビジネスを拡大していきたい社長にとって、この課題の解決は大変です。
うまい一手が見つからないからと、後回しにしている会社もあるかもしれません。
しょうがなく、都度都度店舗に呼びかけてキレイにしてもらうという選択をされている企業もあることでしょう。
しかし、忘れてはならないのは、
清掃を頑張っている人ほど報われないままだと、どんな社員やスタッフ達が離れていってしまうのか?
です。
先日、キレイにしようと頑張った人ほど報われる仕組みを構築できた社長がこうおっしゃいました。
「この前、お店の駐車場の片隅に空のペットボトルが置かれていたんです」
「ホット専用の小さい方です」
「普通なら店員さんが見つけられず、スルーされても仕方がないと思われるほど、目の届かない所にポツンと置いてあったんです」
「とても不安でしたが、翌日になって恐る恐る見てみたら、ペットボトルは無くなっていました」
「伊東さん、これですよ」
「私が求めていた店舗の姿は」
傍から聞いている人からすれば
「社長のくせに、たかがゴミ1つを気にしている」
でしょうか。
しかし、この心境。
組織の全員がキレイにしようと動いてほしいと願っているリーダーであれば、社長がどんなに嬉しかったのか。
よくわかっていただけるのではないでしょうか。
