今週のマネジメント 第494号 店舗スタッフの特典を廃止したのに、働きたい人が増えた企業。社長が変えた方針とは

「それは従業員特典です」
「今度から2倍にしようかなと」
ある社長がおっしゃいました。
ねらいはスタッフの応募を増やすためだそうですが、最終的に社長は廃止することを決定されました。
店舗型のビジネスの経営者を苦しめる問題をいくつか挙げるとすれば「店舗スタッフ不足」が入ってくるのではないでしょうか。
スタッフが不足していますと、各店長が店を回すことに手一杯となってしまい、社長からの指示を正確に反映することができなくなってしまうからです。
これでは企業として前進していくことができません。
よって、常日頃から人手不足にならないようにとあの手この手を打っていく必要があるわけですが、残念なことに、その1つ1つの対策が改善につながるというよりも、むしろ人手不足を悪化させてしまっている、といったケースが見受けられます。
今回のコラムでその例を1つ挙げますと
「どんな人に来てほしいかが不明確のまま人を集めている」
例えば
・従業員の特典を手厚くしました
・週◯日、一日◯時間からでも勤務可
など
ここで「なぜこれらがダメなんだ」と怒られるかもしれません。
こういった策は大手チェーンがよくうっている策だからです。
私は別にこれらの策自体がおかしいと言いたいわけではありません。
重要なのは
「社長はどんな人にスタッフになってほしいのか?」
その想いに沿った策をうっているかどうか
です。
もし社長が「我が社には労力が必要。だからスタッフを募集している」とおっしゃっているのであれば、これらの策は効果的と言えるでしょう。
しかし、もし社長が「我が社に求めているのは、個々の能力だ」とおっしゃっているのであれば、効果は期待できません。
なぜなら、上記の策の言い方を変えますと
「誰でもいいからウチに来てくれませんか」
「こんなに優遇制度が充実していますし、勤務条件のハードルも下げましたから」
だからです。
もしそれを見た人が
「ただお金を稼ぎたいからバイトしよう」
と考えていたとしたら、その人のニーズに合った訴求となっています。
しかし、もし
「私は自分の能力を磨いていきたい」
「自分も成長しつつ、会社にも貢献したい」
と考えていたとしたら・・・?
そんな上昇志向な人達がやってきてくれる策と言えるでしょうか。
問題はそれだけで終わりません。
運良く上昇志向な人、Aさんを採用できたとしたら、その後どうなっていくのか、です。
・Aさんのまわりには能力を伸ばしていきたいといった人達ではなく、対価さえ貰えればいいんだという人達ばかりです
・Aさんはもっともっと自分の腕を磨いていこうと積極的に働いているのに、他の人達は「ここまでやれればそれでいい」といった仕事をしています
・完成度が低い他の人達の仕事ばかり目に付いてしまうAさん。どんな心境になっていることでしょうか
・やがて店内には「多少手を抜いても誰か、つまりAさんがやってくれるんだ」という意識が定着しはじめていきます
・毎日毎日他の人の尻拭いばかり。Aさんは今後も頑張っていってくれるでしょう
私、伊東がよく口にするのは
「その一手に社長の想いが反映されていますか」
これは社長の想いがこもっている一手ほど、高い効果が得られるからという意味です。
少し言い換えればこういう意味にもなります。
「他社や大手がうった手をマネしていては良い結果が得られません」
ある社長がおっしゃいました。
「伊東さん、私は労力が欲しいのではなく、社員やスタッフさん達の個性を伸ばしていきたいんです」
社長はこれまでうっていた「誰でもウェルカム」といったニュアンスにとられる手は全て廃止しました。
そして、社長の想いに沿った手だけを次々にうっていきました。
しばらくして、店舗で開かれた飲み会で、ある女性スタッフがこんな事を口にしたのです。
「店長、私は◯◯(会社名)だからいいんです」
「他で働くなんてありえません」
「だって、どんなに頑張っても嫌われていくだけでしたから」
御社はどんな人に来てほしいですか?
それは明確になっていて、それに沿った一手をうてているでしょうか。
