今週のマネジメント 第504号 「指示を増やしてもいいか、抑えるべきか」店舗の状況を気にする社長が持つべき視点とは

「伊東さん、店舗の様子を見るカメラは必要でしょうか」
ある社長からでした。
防犯という面ももちろんですが、店舗が大変で余裕が無い時期に指示を出してしまい、キャパオーバーとなってもらいたくないからという優しさからでした。
店舗型のビジネスは社長が各店舗の状況を正確に把握することは困難です。
単に店舗の統括部やエリアMに「今、会社の指示を徹底できる状態にあるか」と聞いただけではわかりません。
当たり前ですが
「社長、私は今暇なんです」
などと言ってくる人はいないからです。
かといって
「社長、今店舗は大変な状況です」
「会社からの指示を増やしてしまっては危険です」
と聞いて、はいそうですかと鵜呑みにするわけにもいきません。
うまく判断しないと
・忙しいのに更に追い打ちをかけてしまい、混乱させてしまった
・暇なのに更に余裕を与えてしまい、貴重な時間を無駄にされてしまった
となりかねません。
「今、店舗の状況はどうなのか」
「どのくらいの指示をとばしたら良い結果を出してくれるか」
常に気にされている社長もいらっしゃるのではないでしょうか。
そんな社長が持っておくべき視点があります。
それは
そもそも店舗への指示を増やすか抑えるか、その状況判断は社長がすべき事なのか?
ある会社の事例です。
これまで新店は1年に1店のペースで出店できていたところ、その年だけは立て続けに出店契約が決まりました。
嬉しい反面、社長が気にされていたのは、全店出店するとなると人手が足りなくなり、社員やスタッフ達に負担をかけてしまうのではないか。
だからといって出店をやめるわけにもいきません。
会社が飛躍していけるまたとないチャンスだからです。
ここは皆に踏ん張ってもらおう。
その後、心配通り無理なスケジュールがたたり、毎日残業が当たり前となってしまいました。
困ったことに社内や店舗では
「忙しいので、これはできませんでしたと言えば怒られないのでは?」
といった手抜きの風潮も出てくる始末。
結果としては全ての新規出店は果たせたものの、その場しのぎの仕事が多くなってしまったため、新店とともに既存店含めた全ての店舗の運営レベルは低くなってしまっていました。
すぐに元に戻さなければ。
なあなあだったこれまでのやり方は許さないと、社長が号令をかけていた最中、ふと気がついた事がありました。
それは、ある新店だけは良い運営ができていたことです。
不思議に思い出店時の様子を聞いてみたところ、その店舗だけは他の新店とは違ってスケジュールに遅れが出ることはなく、順調にOPENまでの準備が捗っていたとのこと。
その理由は店長や店舗社員、店舗スタッフ全員の努力の成果だったからではありますが、特に効果があった事は店舗で働く女性社員が、かつての仕事仲間達に声をかけたからで、パート・アルバイトの一時的増員ができていたことでした。
なぜ一時的とはいえ、簡単にパート・アルバイトの増員ができたのか?
実はその時期はある有名テーマパークの閑散期。
女性社員は過去にそこで働いていた経験もあり、一時的に働いてくれたスタッフ達は、その時期だけは十分に働けず、時間に余裕があることがわかっていたのです。
店内ミーティングにおいて
・このままのペースではOPENまでに遅れが出てしまう
・何かいい案はないか
といった店舗内の課題共有に反応し、積極的に動いてくれた結果、スムーズな増員ができていたのでした。
店舗型のビジネスにおいて、会社の指示を徹底できる店舗の好機はいつなのか?
それを一番よくわかっているのは、店長と店舗で働く人達自身です。
社長や店舗運営部門のリーダーがなすべきことは、いちいち店舗の状態をチェックして
「今は大変そうだから支援にまわろう」
とか
「今こそ指示を多くすべき」
と動くことではありません。
それよりも、店舗で働く本人達が
「今は十分に動けないから、お店をまわすことだけに専念しよう」
または
「今は余裕がある。会社からの指示を細部まで徹底すべきだ」
などと、自ら判断して動いてくれる形を作るべきです。
やりたいことだらけの社長が
「店舗に余裕があるのはいつなのか」
と、いちいち縛られていてはスピードを出せません。
社長が店舗の状況判断を間違えて捉えてしまい、
・忙しいのに更に追い打ちをかけてしまった
もしくは
・暇なのに更にゆとりを与えてしまった
といった読み違えというリスクを、いつまでも抱えているべきではありません。
店舗型のビジネス企業の社長が何を求めているのか。
それは
・たとえ、社長とは遠く離れたところにある店舗がいくつあっても
・各店長の働く曜日が違っていても、
・本社、本部が勤務終了時間に店舗で働いているスタッフ達が何人いたとしても、
社長がイメージする「店舗はこうあるべきだ」という想いに沿って、皆が自ら考え行動し、それを実現できている状態ではないでしょうか。
