今週のマネジメント 第517号 やる気な人ほど辛く、やる気が無い人ほど手を抜けていた組織を逆転させられたエピソード

これはある社長、Wさんのエピソードです。
Wさんが初めて社会人となって数年目。
やっと仕事に慣れてきた頃に、ふと抱いた感情がありました。
それは
「もしかしたら仕事って、楽しくできるものなんじゃないか?」
当時、Wさんの仕事に対する考え方は、
「我慢が当たり前」
「何事も辛抱」
「誰よりも辛い仕事を進んでやれ」
「体を壊さず、いかに長く働けるか」
「不平不満を言わない人こそ立派」
仕事とは辛いことを我慢するからこそお金が貰えるもの、というお考えでした。
そんなある日、Wさんは取引先の担当者にこんな事を言われたのです。
「Wさん、感謝してます」
「月末近くになるとどこも買ってくれなくなりますから」
Wさんはヘトヘトになりながらも、その日も無事に仕事を終了。
いつも通り帰宅に車を走らせていた最中、ふとその事を思い出しました。
「取引先の〇〇さんから言われた言葉」
「あれは・・・どういうことなんだろうか・・・?」
いつもは月初に仕入れ予算のほとんどを使っていたWさん。
その月だけは月初に欲しい商品が見つけられず、そのままズルズルと月末近くになり
「使える予算を余らせていたらもったいない」
と悶々としていた中、運良く欲しい商品が見つかってラッキーと思っていたのですが
「ひょっとして・・・」
その後、Wさんは自らの行動を変更。
試しに月末になっても仕入予算を残す形をとってみたのです。
Wさんの予想通り、この仕入れスタイルは見事に的中。
競合各社は月初に仕入れ予算を使い切ってしまっているからか、月中や月末にポッと出るメーカーからの強力な商品が仕入れられず、次の月まで我慢していた中、Wさんだけがこれを総ざらいできる形ができあがったのです。
これがきっかけとなり、Wさんのその後の「前年比2ケタ増の連続快進撃」につながっていったのでした。
Wさんはこう思いました。
「仕事って辛いことばかりだと思っていたけど、自分の工夫次第で楽しく変えることができるんだ」
Wさんは
「どうしたらもっと仕事を楽しむことができるのか」
それまで辛い、つまらないと感じていた業務を次々に工夫して変えていったのでした。
その後、Wさんに対する周りの評価も次第に変化していきました。
「Wさんってなかなかやるよね」
「結果を出せる人だ」
「期待の新人が現れたぞ」
そしてとうとうWさんは、ある部署のリーダーを任されることになったのです。
初めてのリーダー。
初めての部下達。
緊張していたWさんが最初にみんなに言った事は
「仕事は自分で楽しく変えられるんです」
「だからどんどん工夫していきましょう」
ところがここからWさんの暗黒時代が始まりました。
うまくいかなかったのです。
その理由はシンプルで、皆、Wさんの考えているような工夫をしてくれなかったからです。
「おかしい」
「うまくいかないわけがない」
だって、現に部下達の仕事ぶりを見ると「ここをこうすればうまくいくのに」とすぐわかる。
なぜ皆、そう動いてくれないのか?
Wさんは諦めませんでした。
粘り強く「工夫しましょう」と言い続けました。
しかしうまくいきません。
いつまでも良い結果が出せない日々が続きました。
次第にこんな声も出始めたのです。
「Wさんはやり手だったけど、・・・リーダーには向いてない人だよね」
「一流選手は必ずしも一流の監督になれるわけではない」
「彼は人をまとめることができない人だな」
焦る毎日。
イライラも募っていくばかりです。
それは組織内にも表れ、雰囲気は悪くなっていく一方でした。
いつしかWさんの職場は
「やる気な人ほど辛く、やる気が無い人ほど手を抜ける職場」
となってしまっていたのです。
「この人にはついていけない」
Wさんの下から何人も去っていきました。
そんなある日、Wさんは思いました。
「これではだめだ」
「一からやり方を考えて変えてみよう」
Wさんが新しくうった一手、それは
「組織全体が楽しくなる工夫」
つまり
工夫をすることを他人任せにせず、リーダーである自分が実行する形をとった
ということです。
もともと工夫が上手だったWさん。
それから次第に結果が出はじめ、やがてはどの組織よりも良い数字が出続けるようになりました。
ついにその組織はかねてからのWさんの理想だった、
「やる気な人はもちろん、もともとやる気が無かった人も楽しく仕事ができ、良い結果が出せて、もっと大きな仕事をしてみたいとなっていく、自動やる気増幅型の形」
が実現できたのです。
私はこの前、しばらくぶりにW社長にお会いしました。
そしてこんな質問をしてみました。
「うまくいった理由は何ですか?」
社長はこうおっしゃいました。
「ある疑問を持ったからでしょうか」
「その疑問とは
『組織の仕事を楽しくする役目、それは誰がふさわしいのか』

