今週のマネジメント 二つ返事で動かない社員が増えてきた時、稼ぐ社長の選択肢とは?

1月27日の日経新聞に医学部合格率男女が逆転とありました。

それまで男性の合格率が常に高かったのに、ある騒動を境にこの結果ですので「何で今急に?」「もしかしたら今までの方が異常だったんじゃ?」などと、組織全体に対するイメージはマイナス面に働いてしまった結果になったのではないでしょうか。

今回ご紹介するコラムは、世間から求められる企業を目指していたのに、いつのまにか「ちょっとそれは違うんじゃないの?」とマイナスイメージを持たれ、稼ぎにくい組織になってしまう「きっかけ」についてです。

 

ある日、社内のマネジメント環境をガラリと変え、利益をそれまでに倍増された企業の社長がおっしゃいました。

 「伊東さん、見て下さいよこの数字」

 「とんでもない良いアイディアを持っている人って、社内にもいるんですね~」

 「それが社員じゃなくて、10年以上働いてくれていた店舗スタッフの案ですから驚きましたよ」

それまで社長は自分の言う事に「ヤレ!」「ハイ!」と二つ返事で動いてくれる社員だけで結果を出していこうとしていた状態から、今まで誰にも注目されていなかった人でも輝ける職場を築き上げられました。年齢、性別、役職も関係なく、会社の数字を変えられるアイディアを持っている人が社内に何人もいる事を実感し、興奮を隠せないご様子です。

 

困ったことにどの企業も、規模が大きくなっていくにつれて二つ返事で動いてくれる社員よりも

 ・「ハイ!」とは言っておきながら動かない

 ・またはズレている

 ・いい加減

 ・できない言い訳ばかり

 ・何を考えているのかわからない

などの社員は多くなっていってしまうものです。

チェーンビジネスは元から大所帯ですから、事業を始めて間もない段階でもそういう状態はすぐにやってきます。

それでも誰もが結果を出し続けたくなる組織を維持、向上していくには社長はどうしたらいいのか? 選択肢は大きく分けて2つです。 

 ① 諦めず「全員」に考えを伝え続ける工夫、努力を重ねる

 ② 「二つ返事で動いてくれる人」だけに絞り、スピードUPを図る

 

チェーンビジネスをスタートし「一言で動かない人がチラホラ出てきたな」というシーンに初めて直面した社長であれば、いきなり②を選択される方はまずいないでしょう。

ほとんどの経営者はまず①を選択し、奮闘されるのではないでしょうか?

 

しかし、多いのは「結果として②を選ばざるを得なかった」というケースです。

例えば①を選択してもなかなか自分の考えが伝わらず、5年経っても10年経ってもいまだ「ヤレ」といってもすぐに動かない社員がごろごろいる現状でしたらいかがでしょうか?

いくら人一倍ヤル気の塊だった経営者であっても、効果が表れてこなければ

 「言えばすぐ動いてくれる社員だけを相手にしよう」

 「動かない人達は知らん!」

 「できる人、動ける人達が死に物狂いでやってればいつか影響されるんじゃないか?」

 「もし足でも引っ張ろうものならそれなりの手は打たせてもらう」

などとなってしまうのではないでしょうか?

「いや、それでも①だ。どうしたら全員が本気を出し続けるのか? 伝え方が悪いのか? 何か別の方法があるのか?」

「たとえもう10年かかろうが組織の全員が本気を出し続けられる状態にしてやる!」

と本当に思えるのかどうか・・・

理想の状態にすることに時間がかかればかかるほど、その意志を継続するのは大変です。

 

そしてそんな社長のターニングポイントには「こっちの水は甘いぞ」と言わんばかりに世間には誘惑してくるコンテンツやサービスもあります。たとえば店舗の無人化、省人化です。

ちょうど人と組織のマネジメントに頭を抱えていた経営者にとっては

 「そうだよな~ やっぱりそっちかもな~」

とフラフラ~ッと足が向かってしまうことでしょう。

私は何も「無人化、省人化は絶対にやるな!」と言いたいわけではありません。

ただし、お勧めはしません。

なぜなら、チェーンビジネスにおいて最強の武器は何なのか?と問われましたらそれは間違いなく「働く人達の数」だからです。

これをいかに上手に引き出せるか?がチェーンビジネスの業績に直結するからです。

いくら経営者が優秀な人であっても会社を動かしているのはその人ひとりであるのならば、働く人達全員が本気を出し続けられ、その力が上手に束ねられた組織には何をやっても敵いません。

人々が力を合わせた時に発揮されるエネルギーを捨ててまで他の道を求めるという選択は非常に勿体ないことです。

また、二つ返事で動いてくれる人達、つまりイエスマンだけで組織を固めていきますと、他者からどう見られているか?の客観的視点も弱い為、気が付いた時には冒頭でご紹介したような「世間から見られた時、この組織はおかしいんじゃないの?」 などと捉えられてしまうリスクも高くなります。

 

チェーンビジネスの最強の武器は何なのか?

どうしたらその武器を他社よりも上手に使いこなせるのか?

きちんと設定でき、武器の磨き上げに努力と工夫を重ね続けられる企業だけが、その後に他社を圧倒するほどの結果を出し続けられるようになります。