今週のマネジメント 現場のリーダーは居る、居ない どちらが多いのか?
「普段から努力を見せない人達は、どうやったら本気を出すんだろうか?」
「たとえ些細な事からでも『やるぞ!』とその気になってくれればいいのに・・・」
とあるチェーン企業の経営者がつぶやいた言葉です。
数年前、これと同じような質問をチェーン企業Y社の社長から相談を受けた事を思い出しました。
当時社長は自社の業績が上がっていかない原因は「各店の店長のマネジメント力」にあるのではないか?と考えていたようで、
社長から質問をいただいた内容は
「どうやったら各店のスタッフは、数字を塗り替えられるほどの本気を出すんでしょうか?」
「当社の各店の店長は手取り足取り、どの企業よりも熱心に接してはいるんですよ」
「たとえ些細な事からでも『やるぞ!』と
その気になってくれればいいんですけど・・・なかなかそうならないんです」
「伊東さん、良い方法はありませんか?」
私は
「御社の各店長は各スタッフの傍に居る、居ないのどちらが多いですか?」
「そうですね~ 年中無休で、営業時間は1日12時間ですから店長は・・・」
「バックルーム作業もありますから・・・」
「どちらかといいますと、傍にいない方が多くなっちゃいますね」
「では、リーダーが各メンバーの傍にいることができない間
些細な努力を見逃さない為に、どういった工夫をされていますか?」
ここでいう些細な努力とは、例えば
・誰よりも商品の特徴、分類、売れ筋が頭に入っていて、その上で商品陳列を行っている
・誰よりも清掃をごく短時間で一番綺麗に仕上げられ、毎日続けている
などです
社長は
「・・・いや、そう言われますと・・・すぐ出てきませんねぇ」
と少しお考えになってから
「でもそういうの何か要るよな~」
「傍にいない方が多いもんな~」
社長は、すぐに何か思いついたご様子で
「ちょっとやってみます、ありがとうございます」
私はただ質問しただけなのに、社長はご自身で気が付かれて、すぐ会社に戻られました。
チェーン事業の現場は、Y社のようにその特性上
「現場のリーダーは不在の方が多い」という企業は多いです。
そしてチェーン事業のトップが常にいる場所はどこなのか?といいますと
現場とは真逆の「各部署は常にリーダーが傍に居て当たり前」のチェーン本部です。
これをしっかり頭に入れていないと、各店のマネジメント体制を見つめた際
「どうして各店長はスタッフのマネジメントに力を入れないんだ?」
など、そもそも現場のリーダーは不在の方が多いのに、常に居る前提で思考をめぐらせてしまう
事はよくあります。
そして危険なのは
「現場のヤル気が無いからだ!」
「人員配置を変えよう」
「社員、スタッフ向けの教育カリキュラムを取り入れようか?」
など、ズレた思考上でどんどん対策を練ってしまっていきます。
まるで少しの衝撃で液状化してしまうほどドロドロの土台の上に家を建てている状態です。
こうなってしまっては会社の重要な資金と時間はいくらあっても足りません。
日々、ドブに捨てているようなものです。
たまに本部から各店へのパイプ役を担う責任者(例えばエリアMなど)が
「今日、店長はいないの?」
「店長の次の出勤日はいつ?」
など、何をするにしても「店長は?」「店長は?」と「店長ありき」の言動になっている企業があります。
これは要注意です。
このような企業は、なかなか数字が上がっていかない事態にすでに陥っている可能性大です。
百戦錬磨のY社の社長は、今までのご経験から
「社員やスタッフにとって、誰かに評価されたいという感情はきわめて重要な要素だ」
「だから当社はすぐに手を打たなければならない」
とお気づきになったのでしょう。
その証拠に、今現在Y社は
コロナ禍の中においても同業他社が業績を落としていく中、自社だけは業績を上げられています。
現場のリーダーが不在の方が多い、同じチェーン企業でも
「どうしたらリーダーは全員から本気を出せるようになるのか?」
と動く企業と
「どうしたらリーダーが不在でも全員から本気を出せるようになるのか?」
と動く企業があります。
当然両社の業績躍進の違いはここから別れていきます。