今週のマネジメント 第463号 各店長にはスタッフ不足で苦しんでほしくないと願う社長が設定すべき事とは?
「◯◯さん、もしできたらでいいんで、これをやっておいてもらえますか?」
導く立場である店長のこの発言を耳にして、危機感を感じたから。
ある社長が弊社にご相談にいらっしゃったきっかけです。
人手不足の時代と言われて、もう10年以上が経過しています。
特に働く人達の人数が多くなる店舗型のビジネスをされている企業の社長にとって、この問題は、何をするにしても障害になっているのではないでしょうか?
私は当時、ある大手チェーンの社員でした。
業界No1だったにも関わらず、実は人手不足の時代と騒がれていたずっと前からこの問題は各店において顕著に現れていました。
そんな状況下で会社がとっていた姿勢はといいますと
「人手不足?」
「言い訳はいいから、結果を出しなさい」
それでもまだ何とかなった時代でしたが、それに比べて今はどうなのか?と言いますと、すでに気合だけでどうにかなる時代とはすでに言えません。
今までにない、新たな一手が必要とされています。
ここで、この人手不足の時代に私がおすすめしていることがあります。
それは、
各店長がスタッフとどう向き合うべきなのか? 会社として明確にすること
これについて「たかがそんなこと?」と捉えられるかもしれません。
しかしこれはとても重要なの事です。
なぜなら、設定していないということは、「人手不足の店舗をどのように運営し、結果を出していくのか?」は各店長に任せている、ということになりますので、下記のような店舗運営が起こりうるということです。
・店長なのに、いちスタッフとして働く
スタッフ達と一緒の目線、立場で仕事をし、リーダーという意識が無い
・スタッフ不足によって空いたシフトの穴を、問答無用で他スタッフを勝手に割り充てる
・スタッフ不足に我感せず。お店はスタッフが回すもの。
欠けたシフトはスタッフ達がなんとかしなさい。店長は何もしないのが当たり前
・立場、地位の力を悪用し、シフトフォローに出た人を特別扱いしたり、給料以外の報酬を与える。
「当社は、各店長達には自由に運営させている」
「だからどんな運営をしても構わない」
としているのであれば、何も設定しないのも1つの手と言えるでしょう。
しかし「そういった運営をされては困る」とお考えの社長であれば、設定しないことがいかに危険なことなのか、よくわかっていただけるのではないでしょうか?
また、なぜ設定しなければならないのか?
私が強くおすすめしたい理由があります。
それは
今スタッフにやめてもらっては困るからと、自分の身を犠牲にしてまでも皆のために頑張ろう、といったスタイルを選択する店長が現れるから
です。
お察しの通り、この方法は店長自身の身が持ちません。
社長の知らない間に、いつの間にか心身をすり減らしていて、ある日突然潰れてしまうかもしれません。
また、これは一見「店長が身を削ってまで動いてくれるんだから、スタッフ達にとっては働きやすい職場になるのでは」と捉えられるかもしれませんが、実はそうはなりません。
むしろその逆です。
そんな会社は、下記のような事態を招くことになるでしょう。
・いざという時、店長に頼っても、店長がスタッフ業務に拘束されていて対応できない
・ルールを乱し、いい加減な仕事をしたり、楽をしようとするスタッフを厳しく指導できず、そのしわ寄せが真面目にがんばっている他のスタッフ達の足を引っ張る
・誰かが頑張れば頑張るほど、他の誰かがその分、楽ができる職場
・徹底ができない店舗となり、あれもこれも中途半端。お客様が離れてしまう
皮肉なことに「スタッフ達のために」と、店長が身を犠牲にしてまで動きまわっているのに、結局はスタッフ達を逆に不幸にしてしまう、という結果です。
ところで弊社では、店舗型のビジネス経営者に
「スタッフに結果を出し続けてもらいつつも、仕事が楽しいと感じ、
知り合いを誘いたいくらい満足してもらえる仕組みを構築するお手伝い」
をしています。
言葉にするとシンプルですが、そう簡単に実現できることではありません。
その為、弊社がターゲットとしているのは、これまで力強く会社を引っ張ってこれたリーダーである社長です。
どんなに厳しい環境にさらされても、今日まで会社を潰さずに成長させてこれた並外れた心の持ち主にしか構築することができないことだからです。
つまり私が言いたいことは、
社長が、店舗で働く店長達が、スタッフ不足で苦しい思いをさせたくないとお考えなのであれば
・その課題を、各店長達にお任せしてはならない
・その課題は、まずは会社として解決すべきである
・そして各店長達には
「今の時代は、このようなマネジメントをすべきである」
「会社の言うとおりにすれば、スタッフ達には結果を出してもらいつつも、仕事が楽しいと感じられるようになってくれる」
「だから、そうしなさい」
とするべきなのです。
これが上手に確立できますと、今の時代であってもスタッフ不足に悩まされない店舗ができあがります。
そして、各店長達は運営に専念できるようになります。
やがてこんな循環が生まれます。
・スタッフの誰もが仕事に集中できる環境を、店長が整えられ、維持できる
・日々、強い数字獲得ができる人が育つ
・それが仲間に共有、共鳴、伝播していく
・やがて社員、幹部社員となるビジネスマンが生まれ、会社独自の強みが磨かれていく
ちなみにある企業では少子高齢化、過疎化が著しい地区においても
「私もここで働きたい」
そんな応募者が絶えなくなりました。
不思議に見られることですが、店舗から数百メートルも離れていない同じような業種のライバル企業の店舗では、人がいないからと店長が深夜に一人でシフトに入ってまでもまわしているのに、自社の店舗だけは応募が絶えない状態となっています。
しかもこの事例は都心部のような人口密度が高い地域の特別な例ではありません。
今なお過疎化が激しい、とある地方で実現していることです。
御社はいかがでしょうか?
社長に「各店長達にはスタッフ不足で苦しんでほしくない」とお考えはありますか?
そのお考えは今、実現しているでしょうか?