今週のマネジメント 第481号 店長もいちスタッフとして動いている店とそうでない店、どちらが良いのか?

 「伊東さん、やっぱり店長はいちスタッフとして動いてはいけないんでしょうか?」

ある社長から質問でした。

 

社長としては、店長は店舗の監督。

いちスタッフとして動くのではなく、これからは店舗全体を見る目を持ち、自ら判断して数字を上げていく監督者であってほしいという方針に切り替えたく、どう変えていこうか?

その具体案を探している際の質問でした。

 

 

店舗型のビジネスにおいて、同じように考えられている社長もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

さて、この疑問

 「店長もいちスタッフとして動いてはいけないのか?」

 

私の考えはどうなのかと言いますと、それは

 「どちらが良いという事はありません」

です。

 

 「答えになってないじゃないか」

と言われるところでしょうか。

 

その理由は、店長がいちスタッフとして働くべきかどうかは、その会社がどうするか決めることだからです。

会社によっては、1日数時間しか営業しない店もありますし、週に3日しか営業しない店もあります。

一概に「店長はスタッフの仕事をしていてはいけません」とは言えません。

 

 「うちの営業スタイルだと、店長はいちスタッフとして仕事をさせない方がよさそうだ」

社長がそう感じたのであれば、そうするべきなのです。

 

私ができることは、

 「社長、こうした方がいいですよ」

といった経営のアドバイスではありません。

 

社長ご自身が

 「今まで店長もいちスタッフとして動いていたが、そうではなく全体の指揮者として位置づけたほうが良いのではないだろうか?」

 「だとしたら、どうやって変えるべきか?」

そんな相談相手であり、または社長ご自身の考えにブレが無いかどうかの相談相手です。

 

 

ではもし社長に、

 「現状は、店長もいちスタッフとして動いてしまっているが、もしかしたら全体を見て指揮する監督であるべきかもしれない」

そんなお考えだったとしたら、「持っておいてほしい視点」があります。

 

それは

 店長がいちスタッフとして動いていると、スタッフ達にどんな影響を与えるのか?

 

まず1つ挙げられるのは、好意的な共感です。

 

きっとスタッフ達からは

 「あぁここの店長は現場主義なんだな」

 「スタッフの立場をよくわかってくれているに違いない」

 「きっとこの会社はスタッフを大事に思ってくれている」

と思われることでしょう。

 

ここで

 「だったらそのままでいいのでは?」

となるでしょうか。

 

しかし、良いことだけではありません。

一方では、こういった見方をされるということもあるということです。

 

 「もし店長にしかできないことが起きてしまったら・・・私はどうすればいいんだろう?」

 「この店はいざという時に店長に頼れない」

 「この会社は、緊急時にスタッフはどうすればいいのか? 何も考えていないのでは?」

 

またその時、肝心のお客様の心境はいかがでしょうか?

 

それはもしかしたら

 「なんで今、店長が出てこないんだ?」

 「みんな困ってるじゃないか!」

 「運営会社はどこだ? 一体どうなってる?」

 

 「店長自身は、自分がお店の責任者だという自覚が無いのか?」

 「会社はそういったことを考えていないのか?」

 

 

店長にしかできないことが発生する。

これはそうそうあることではありません。

滅多に無い事と言えるでしょう。

 

しかし、だからといって

 「当社は滅多に起きない事に対しては、何も準備していません」

でいいのでしょうか・・・?

 

例えば一大事が起きた時

 「みなさん、避難経路はこちらです」

 「念の為これを手に持っていて下さい」

 

 「ご安心下さい、◯◯には連絡済みです、数分後には来てくれるでしょう」

 「それまでお客様はこの体制をキープして下さい」

 

 「みなさん、こちらに移動して下さい。 安全確認は先ほど済んでいます」

 「何卒、ご年輩の方やお子様優先でお願いします」

 

そんな率先した誘導ができる企業と、

一方、店長も店員もずっとオロオロしている企業。

どちらがあるべき姿と言えるでしょうか?

 

持っておくべき視点はまだあります。

いくつか挙げますと

 ・「なんでそんなに頑張る必要があるの?」

  「だって、この店ではいくら頑張っても評価されないんだよ」

  「店長が見てくれないから」

 

 ・「あれ? もしかしたらバレてない?」

  「この店はいくら手を抜いても怒られないんだ」

  「やりたい放題じゃないか」

 

 ・「またこの仕事、誰もやってない」

  「私は毎日毎日誰かのいい加減な仕事の尻拭いばっかり」

  「もう嫌になってきた」

 

 ・「なんであんなやつが評価されてるの?」

  「そうか、評価されるのは店長の視界に入った人だけなんだ」

  「きっとこの会社は上司へのゴマすり人間が欲しいんだろう」

 

 

店長がいちスタッフとして動いている。

これは良い面がある一方、悪い面もまた存在します。

 

重要なのは

 ・会社としてそんな悪い面も認識、想定されているのか?

 ・その対策があるのか?

 

 ・もし無いとしたらどうするべきか?

 ・そもそも店長がいちスタッフと同じ動きをしていていいのか?

 

店舗型のビジネスの経営にとって大事なこと。

それは、そういった視点を会社として持っていて、更に手をうてているか、です。

 

 

最後にご紹介したいのは、ある社長の一言です。

社長は、「当社は店長がいちスタッフとして動いていたが、それではいけないのではないか?」
そんな疑問を前々から感じていて、どう進めたらよいか模索中でした。

その後、上手に体制を変えられた過去があります。

   

社長はこうおっしゃいました

 「会社を変えてから、ここで働きたいという人が増えてきました。」

 「ただ、まだ社内の人数は増えていってません」

 「辞める人達もいるからです」

 

 「でも私はこれでいいと思っています」

 「なぜなら、会社から去ってしまったのは、今まで見えない所で手を抜いていた人達だからです」

 

 「見えない所で手を抜いていた人達が去り、見えない所で努力していた人達が報われるように変えられました。」

 「私はこんな会社にしたかったんです。」