今週のマネジメント 第503号 昇進させたのに期待はずれ。偽エリート店長の見分け方

「伊東さん、店長経験者はどう活用すべきですか」
ある社長からの質問でした。
はじめて店長を任せたい社員も育ってきたし、このタイミングで誰かを本部勤務へと昇進させようか。
ある程度決めてはいるものの、不安な点があったので相談したいとのことでした。
不安とは
できる店長だと思って、昇進させたら期待はずれだった
となってしまう事。
残念なことに、店舗型のビジネスにおいてこれはあり得る事です。
社長から「これから君には本部勤務として全店の数字を上げてもらいたい」と期待を込めて昇進させたはずが、本当に数字が良くなっていってるのかと振り返ってみると疑問。
唯一頑張ってるなと思えるのは、本人からの「社長、私は頑張ってますよアピール」
もしかして、ただ高給取りを増やしてしまっただけだったのでは?
もし、こうなってしまっては
「また店長やってくれ」
などとは簡単には言えません。
店長経験者をどう活用すべきか。
これは慎重に見極めなければならない事です。
そんな時、社長が持っておくべき視点があります。
それは、できる店長とは、数字を上げられる人 になっていないか。
ここで「それの何が悪いのか」と言われるかもしれません。
これまでそういった形で評価してきているのであれば、この基準は何ら問題が無いように思えます。
しかし、これには見落としがあります。
それは
人を動かせない店長でも昇進できちゃう
ということです。
店舗型のビジネスにおいて、店長は大変です。
日々発生する様々な課題をクリアしつつも、会社の目標を達成しなければなりません。
とても店長一人だけの力では何とかできるレベルとは言えないでしょう。
そこで重要となるのは、いかに社員やスタッフ達に本気を発揮してもらえるか。
ここで今現在、何らかの組織のリーダーという立場の方からしてみれば
「それこそがリーダーのやるべきこと」
「なぜ今更そんな事を強調するのか」
と疑問に思われるところでしょう。
それは店舗のリーダーである店長にとって、これは簡単ではないからです。
何しろ、みんな働く曜日や時間が違うからです。
・「皆にこうしてほしい」そんな店長の想いを全員に一気に伝えられる場などそうそうありません
・もし、おかしな点を見つけても、どうしてこうなったのか、誰がやったのか、わかりません
・原因がわからなければ再発防止もできません
・同じミスが何度何度も繰り返されます
・いざ追求しようとすると、時間と手間がかかります
・そんな事に没頭できるほど時間的余裕があるでしょうか
だからといって放っておくと、改善してくれる人達が常に苦労し、いいかげんな仕事をする人達は楽し放題となってしまいます。
そんな店舗に「ここでずっと働きたい」となってくれるのはどんな人達でしょうか。
一緒に働いてくれている仲間達がリアルタイムでそこにいない。
これがリーダーにとってどんなに苦しいことなのか。
実際にそのような環境下で今まさに奮闘中という方でしたら、その歯がゆさはよくわかっていただけるのではないでしょうか。
ここで店長の立場に立ってみますと
・皆の本気を引き出したいけど、それが大変
・結果を出すまでの時間に余裕があるわけでもない
・「早くしなさい」と会社からつつかれている
「何とかしなければ・・・」
困っている時、ふと周りを見てみると、ありがたいことに「言えばすぐに動いてくれる人」がわずか1割くらいではありますがいらっしゃいます。
さて、その店長はこれからどういった形で会社の目標を達成しようとするでしょうか。
できる店長とは、どういう人の事を言うのか。
それは、人を動かせる人です。
店内の1〜2割の人しか動かせず、それでも何とか結果を出せてきた人を「できる店長」とは言いません。
社長が
「我が社には、こんな社員、こんなスタッフに育ってほしい」
その想いに従って、店内にそんな人をどんどん増やしていける人こそ「できる店長」というのです。
それはたとえ店舗という難しい組織であっても
・店舗で働く社員やスタッフ達にと働く曜日や時間が違っていても
・週に会えるのはたった5分しかなかったとしても
「店長のおっしゃる通りだ」
「私達が変わらなければ」
と変えていける店長ができる店長なのです。
商売には波があります。
・何をやってもいい数字がでる時
・何をやっても駄目な時
それは数日、数週間単位ではありません。
時には1〜2年も続いたりすることも。
ずっといい調子でやってこれているという人もいれば、
他の人の倍は動いているのにいつまでも芽を出せない人もいます。
もしかしたら社内に
「私は長年店長をやってきたけど、正直、動かせる人は組織の1割だけ」
「それでも会社は認めて昇進させてくれた」
といった事が現実になってもおかしくありません。
社長から
「君にはこれから本部勤務となって全店の底上げを頼みたい」
としたのであれば、どんな店長であれば社長の期待に答えられる結果を出し続けてくれるのでしょうか。
それは
「私はこれまで店舗の数字は上げてこれたけど、実際には店舗の人を動かせていたのは1割の人達だけ」
という店長なのでしょうか。
