今週のマネジメント 第509号 まとめられない店長がいなくなった会社。社長は何を変えたのか

「伊東さん、スタッフの中にはこんな想いを抱えている方もいたんですね」
「意外でした」
ある社長がおっしゃいました。
ご覧になったのは勤務歴数ヶ月目の店舗スタッフの本音。
なぜ今まで店長の指導に沿えていなかったのか?
それまでスタッフをうまく指導できていなかった店長が変わり、うまく全員をまとめられるようになったおかげで、過去に抱えていた彼女の本心を引き出すことができたのでした。
店長が変わった理由。
それは、店長の責任を増やしたから。
これだけですと、人手不足の時代になぜ店長達を更に大変にさせているのか、と見られるところでしょうか。
実はそれまで、どうしたら店長達の負担を軽くできるのか?
売り場や発注面、清掃面などの責任者を増やしては、店長の責任をどんどん軽くしていった経緯があったからです。
ところがその一手は空振り。
売上が上がっていくことはなく、店長達の残業時間も相変わらず多いまま。
そして様々な問題が発生していたのです。
・素人の仕入れの担当者が増えたせいか、計画性に乏しくバックルームや売り場は在庫だらけでごちゃごちゃに
・売れ筋がなくなり死に筋が増加。商品の回転が悪くなり売上は低下
・ロスが増え、各店舗の利益は減少
特に社長が「このままではいけない」と感じたのは、ある店長の判断。
「今こそ店長が顔を出さなければならない場面」に、自分ではなく担当者を行かせた事があったからでした。
ここまでで、こんな疑問を抱く方がいらっしゃるのではないでしょうか。
「お店をまとめられない人が店長でも、やっていけるのか」
「そもそも回せないのでは?」
これが店舗型のビジネスの不思議な面。
「店長は、店舗で働く人達をまとめられなくても、お店を回すことはできる」です。
ただし売上、利益を伸ばしていくことは難しくなります。
社長があれこれ指示しても再現することも困難です。
実行するのはいつも店長と動いてくれる数名のスタッフだけになってしまうからです。
多くなるのは「言われたことは実行はしましたが、ここまでしかできませんでした」
ここで明確にしておかなければならないのは、なぜそんな状態でもお店を回せてしまうのかです。
組織をまとめられないということは、リーダーの方針から逸れた脱線が横行しているということです。
店舗とは、それぞれが働く持ち場、曜日、時間は違えど、組織の一つです。
誰かの失敗は誰かが何とかしなければなりません。
例えばこんな人がいてもです
・売り場なんがグチャグチャでも何ともない
・客に挨拶なんかする必要などない。
・掃除?誰かがやるでしょ。
・暇さえあれば手を抜きたい
・いかにサボりつつ稼げるか
組織にはそんな脱線を見つけては、尻拭いをしてくれる人が現れます。
さて、そんな事をしてくれる人は一体どんな人でしょうか。
そしてその人は日々、どんな気持ちを抱えているでしょうか。
果たして、そんな人達は「この会社にずっといたい」となってくれているのでしょうか。
店舗型のビジネスにおいて、絶対に曲げてはならないこと。
それは「店長はお店の責任者である」
負担を減らすことと責任を減らすことは似ているようで違います。
いくら人手不足の時代だからといって、店長の負担を減らすのは問題ありませんが、責任は減らすべきではありません。
会社の責任者が社長であるように、
店舗の責任者は店長です。
何か問題が発生したらNo2に謝罪させにいくなどしてはならないように、店舗の形は
「お店の問題は自分で何とかしなければならない」
といった店長の心が鍛え上げられていく形にすべきです。
店舗型のビジネスにおいて最も重要な
「この人についていきたい」
という人が増えていく理由。
その1つが強い心を持った店長が各店にいて、店舗で働く人達をまとめられている、だからです。

