今週のマネジメント 第513号 「お客より数字」となってしまっている社員やスタッフ達を変えるには

「伊東さん、やっぱりお客様あっての数字じゃないですか」
ある社長がおっしゃいました。
社員やスタッフ達の優先順位がおかしいことに気が付き、なぜそうなったのか。
どうしたら自分の考えをうまく伝えられるのか、改革を進めているとのことでした。
会社の方針はそれぞれです。
弊社ピアーズには「店舗型のビジネス企業は全社がこうしていくべきだ」といった思想があるわけではありません。
それぞれの会社が独自の方針、強みを磨いていくことが重要だと考えているからです。
ただ、社長が「こうしていきたいけど、今の方法でうまくいくだろうか?」
ブレが無いかどうかなどの相談は我が社の専門分野です。
ぜひご利用下さい。
社長と社員、スタッフ達の想いにズレが生じている状態では業績を上げていくことは困難です。
誰がどんな考えなのか。
社長の考えに賛同しているのか、それとも違うのか。
常に確認し、都度都度修正していかなければなりません。
その点、店舗型のビジネスは大変です。
どうにか全員が社長の方針通りに動いてもらいたいところではありますが、店舗組織のトップである店長と社員やスタッフ達は常に近くにいるわけではありませんし、勤務曜日や時間も違います。
そのため店舗には普通の組織には無い、いくつかの工夫が必要となります。
今回のコラムでは、そんな工夫していく上で見落としてはならないポイントを1つ挙げます。
それは
上司とは、部下が失敗する前にブレを修正してくれるべき存在である
ある企業の事例です。
ある日、本部にお客様からクレームが届きました。
「当初、店員さんに言われていた予算よりも高くついた」
「あなた達は土壇場になってから『実はもっとお金がかかります』といった対応をして売上を上げなさい」という指導をしているのか?」
これをご覧になった社長は「そんなことをやれ」などと言ったことはない。
むしろ社員やスタッフ達には「お客様には寄り添うような接客をするように」と指示していたのに、どうしてこんなことになったのか。
調べてみたところ、店舗社員が実際にそう捉えられる言動をしていたことが判明したのでした。
社長は今回のクレームをきっかけに、社内を調査。
そして気がつかれたことがありました。
それは社内に
「これからどうするべきか」
先の事を考える風潮がほとんど無かったことです。
元々あった風潮は
「結果を出してからモノを言え」
これは「口だけではなく、行動しなさい」といった意味が込められている為、社員やスタッフ達が鍛えられていく良い一面がありますが、問題なのは悪い一面も存在することです。
それは
「結果さえ出せればそれでいい」
残念なことに、この悪い面が大事な接客の場面にも表れてしまい
「買ってさえくれたらこっちのもの」
「もっと多く買わせられないか」
そんな姿勢がお客様にも伝わってしまっていたのでした。
社内のマネジメントも同じく
「これからどうしていくのか?」
よりも
「どうしてこうなった?」
そんな、結果をつつく形の方が多くなっていました。
社長はそこから方針を一転。
結果重視よりも、これからどうするのか?
先の事をみんなでよく考える形に変えたのです。
これによって温かい接客がなされていったのは狙い通りでしたが、
更に効果があらわれたのは既存店の収益力UPでした。
例えば発注は、今までは過去のデータを見つつ
「このくらいでいいだろう」
そんな浅い考えの発注が減り、
「本当にこの品揃え、量でいいのか?」
事前のプロセスに力を入れなければならない形に変わったため、よりニーズにあった品揃えを実現することができ、ロスも減少したのです。
社長が何より嬉しかったとおっしゃったのは、収益力が上がったことや、社員やスタッフ達が変わってくれたことはもちろんですが、冷たい接客が減り「お客様の流出」を防げたこと。
社長は創業時からこれまで
「どうしたらお客様が来てくれるのか?」
集客にはとても苦労してきた経緯があったため、今の若い社員やスタッフ達に見られる「お客が来るのは当たり前」といった姿勢に疑問を抱いてはいましたが、有効な一手を見つけられなかった為「いつかは何とかしなければ」という想いをずっと抱えていたのでした。
優先するのはお客様か、数字か。
重視するのは先の事か、結果か。
それは会社の自由です。
誰かにどうこう言われて「ハイそうします」と決めるものではありません。
ただ一つ考えていただきたいのは、もしあなたに上司がいたとしたら
・失敗を責めてくる
・失敗する前に教えてくれる
どちらがいいでしょうか。

