今週のマネジメント 第520号 日々、楽をしていたい人が店舗で働きたがる理由

「前の会社を辞めた理由はなんですか?」
ある社長が社員時代についての質問にこう応えました。
「優秀な人達がいなくなっていく風土だったからです」
「残っていくのは口だけな人ばかり」
「不満だったのは、できる人が少なかったからというわけではなく、腕を磨き、できることが増えていってる人がほとんどいなかったことです」
「地位、権力だけを振りかざし『私を担げ』と仲間を増やしていこうとする人達が増えていく」
「そんな会社の将来に不安を感じたからです」
実はこれは店舗型のビジネスでは珍しいことではありません。
なぜなら
店舗とは腕を磨いているフリが通用してしまう職場だから
店舗は、本社、本部から離れた場所にあるため、社員やスタッフ達の働きぶりを逐一チェックするわけにもいきません。
また接客業ですから、それぞれが固まって仕事をしているわけでもありません。
お客様に即座に対応できるようにと、それぞれが距離をおいて働いています。
新たな事に挑戦し、自分の腕を磨くという行為は大変です。
ついつい「明日やるから」などとなってしまうこともあるでしょう。
もし社長として「皆には腕を磨き上げていってほしい」という想いがあったとしたら、
はたしてそんな店舗という環境下においても皆が
「やるぞ」
となってくれるのでしょうか。
店舗型のビジネスでは他業態から見れば不思議な事がまかりとおっています。
それは
何年経っても品揃えが悪い店
何年経っても無愛想な店
何年経っても汚い店
もしかしたら、あなたが普段から利用しているお店の中にもそんなお店があるのではないでしょうか。
子供でさえ「こうしたらいけないよ」「こうした方がいいんじゃない」と言ったら頑張って変わってくれるのに、
大の大人が働いているお店が「こうしなさい」としても頑張ってくれるかと言いますと、そうとも言えません。
こうなってしまう原因も、店舗型のビジネスは
店舗とは腕を磨いているフリが通用してしまう職場
だからです。
経営者として、いつまでも進歩してくれない店をなくすにはどうしたらいいのか。
そう構えた時に、問題となってくるのは人それぞれの努力は目に見えないことです。
・何もしていない人を処分してしまったが、実は陰でコツコツやっていた事があとになってわかった
・評価して昇進させた人が、実は皆を上手に動かしていただけで、自分だけはいつも楽をしている人だった
ということはありえます。
ある方から質問がありました。
「伊東さん、陰で努力している社員を見つけるとしたらどんな方法がありますか」
1つお薦めするのは、本人に直接聞くことです。
その場合
「貴方は日々腕を磨いていますか」
といったストレートな質問ではうまくいきません。
少しひねりが必要です。
たとえば
「貴方は◯年前より何ができるようになったんですか」
ある会社のAさんはこう応えました。
「地域で一番評判が悪く『またあの店か』と言われるようなお店を『あの店がそうしているなら間違いない』となるほど一番のモデル店に変えられました」
「そうできた理由は、これまでお店が変わるきっかけが何だったのか、その法則を見つけようと日々データをとっていたからです」
なぜAさんはそんな事ができたのか。
Aさんは社長から特別に
「君は自由に動いていい」
「担当部署は無しにするから好きなように動いていいんだよ」
などと言われたからではありません。
Aさんはいつも一週間でやるべき仕事を何とか早めにこなし、その空いた時間を活用して毎週コツコツと努力を重ねていたからです。
常に腕を磨いている人であれば、何ができるようになったのかといった質問に対する返答には、つい
「貴方は随分成長したんですね」
と言いたくなるような、濃密な返答があります。
しかしそうでない人は、ただのその場しのぎの返答です。
いくら「私はこんなに頑張っているんです」と言われても、その希薄さはすぐわかってしまうことでしょう。
会社として工夫すべき事とは
・常に腕を磨かなければならない風土を確立し
・社員やスタッフ達の目に見えない努力を正当に評価できる
そして
・いざ聞いた時に、濃密な返答ができる人達を増やしていく
ではないでしょうか。

