今週のマネジメント 第464号 部下のやる気を奪ってしまう、冷めた上司がいなくなっていく会社
「仲間達への配慮が無い!」
ある社長が怒り気味でおっしゃいました。
発端は数日前の店長会議後の懇親会。
一人の社員が抱えていた疑問を、社長に質問したことがきっかけでした。
その時社長は「君はいい質問するね〜」と上機嫌。
ところが次第に不機嫌に。
話し終えた頃には、イライラ、ムカムカ。
いつ爆発してもおかしくない状態となっていました。
ほんの数分程度のことなのに。
一体何があったのか?
原因は同席していた幹部達の態度でした。
社長としては、
「これから私が話す質問への回答は、全社員はもちろん、一番言い聞かせたいのは君達、幹部だ」
「しっかり聞いて、これまでの行為を考え直してほしい」
そんな思いがあった為、形としては社員の質問に応えてはいるものの、実は皆に言い聞かせるように説明していたのでした。
社長が求めていた幹部達のリアクションは、
「そうか、社長はそういうことをおっしゃりたかったんですね」
「我々も考え直さないといかんな」
「確かに、そうですね」
など。
ところが、実際の幹部達のリアクションはどうだったのか?
それは、質問をした社員に対して
「何だ、君はそんな事もわからんのか?」
「これまで一体、何を勉強してきたんだ?」
「こんな世間知らずがいるとは面白い」
「ハハハ」
後日、そんなエピソードを私に話された社長は
「伊東さん、これってありえませんよね」
「仲間達への配慮が無いんですから!」
「今思い返したら『じゃあ君はわかっているようだから、応えられるな?』と指摘すれば良かった」
「『私の代わりに今、答えてみろ』と」
「きっと、言葉に詰まるに決まってますよ」
「何もわからないくせに、知ったかぶりしているんですから」
「何故彼らは『社長がどう回答するか、私は知っている』という態度でずっといられたのか?」
「考えられない」
そこで私が気になったのは、幹部達のこれまでの仕事に対する姿勢です。
「社長、彼らはこれまで何か自分の範疇外の事があった時、『知ったかぶり』をしてきた・・・ということになりませんか?」
「そうなんです、伊東さん」
「君達は、今までそんないい加減な仕事をしてきたのか?と」
「自分はわかっているからとウソの見栄を張りつつ、立場の弱い社員を笑いものにしている」
「頭にきたのは、そこなんですよ」
「仲間への配慮ゼロ!!!!」
社長のイライラは止まりませんでした。
残念なことに今回のケースのように、会社の重要なポストに就いて、ある程度時間が経った人の中には「知ったかぶりを平気でできる方」が現れたりします。
そんな人達は何故か
「知らない事は素直に認めて、吸収しよう」
という姿勢を取ろうとしません。
明らかに知らないはずなのに
「それは私も知っている」「当然だ」「知らないヤツなんかいるの?」
そんな虚勢を張ろうとします。
さて、このエピソードおいて注目すべきはどこかと言われますと、
それは、社長にストレートに質問できた社員ではないでしょうか?
皆の前で社長に質問するという行為。
これはそう簡単にできません。
思慮が浅いと
「この人、よく考えてないよな」
「ただ思ったことを口にしているだけじゃないの?」
とか
「この人は、ただ自己アピールがしたいだけなんだろうな」
「社長にゴマすりたいだけなのでは?」
などと捉えられるからです。
また下手したら周りの人達からは
「君はそんなこともわからないの?」
と見られ、バカにされるかもしれません。
(残念ながら、今回のケースでは見事にそうなってしまったわけですが)
それでも社長を唸らせる質問ができたのですから、とても優秀な社員ではないでしょうか?
ここからは私の勘ですが、その社員は優秀ですから、もしかしたら
「君は無知だな」
「ハハハ」
私はそんな扱いを受けるかもしれないと、事前に覚悟していたのかもしれません。
店舗型のビジネスをとっている企業が
社内のマネジメント面の仕組み化を構築していく上で、
・いかに知ったかぶり上司をなくしていくことができるか?
・いかにリスクをとってまで挑戦したいとなる社員をポンポン増やしていけるか?
これらはとても重要です。
人を導く立場の人が「知ったかぶりをする」
このような組織はやがて停滞します。
知ってるふりをするという行為は、
「自分はまだまだだ」
「もっと頑張らなければ」
など、省みよう、磨こうとしなくなってしまうからです。
もし、人を導く立場に当たる人が「知ったかぶり」な行動を取る人であったら・・・?
とても考えたくないことではありますが、現実にあり得ることです。
コラムをご覧の貴方も、これまでそんな人に会ったことはあるのではないでしょうか?
私が言いたいことは2点
・多くの人を指導する立場の人ほど、自分を省みて、自分を磨こうとしなければならない
・店舗型のビジネスをとる企業では、そうなる工夫を事前に組織内に施していなければならない
店舗は社長とは離れた場所に存在し、働く時間帯も異なるケースが多いです。
ただでさえ社長の想いが伝わりづらい環境なのです。
・どうしたら多くの人を指導する立場の人ほど、知ったかぶりをしなくなるのか?
・どうしたら誰もが「自分に足りない部分を素直に吸収し、磨きあげようとしてくれるようになるのか?
組織を形成する上で、こういった課題は事前にクリアできていなければなりません。
なぜなら、どんなに社長が熱い想いを口にしても
「あ〜はいはい、それね」
「それは私はすでに知ってますから」
などと、捉えられてしまうからです。
自分は知らないのに、知ってますサイドに居座り、のんびりされる。
しかも大事な仲間なのに、知らないのか?とバカにさえしている。
そんな人が会社をダメにしてしまうからです。
御社はいかがでしょうか?
「おかしいな、あの人はできていないはずなのに、何でできる側にいて偉そうにしているの?」
そう思われる社内体制となってしまっていませんか?
それとは逆に
「そんな知ったかぶりな人は、社内には生まれないようになってますよ」
そう言い切れる形になっていますか?