今週のマネジメント 与えられた仕事しかやらない社員の心理とは?

あるスーパーで、飲み物をだけを買おうかと入ってから気が付いたのですが「しまった今日は2月3日だった」と後悔したのは店内の混雑ぶりを見てからでした。恵方巻売場には何人ものお客様で大盛況です。

10年以上前は関東で恵方巻と言われても「何それ?」と聞き返されるほどの認知度の低さで、当時売る側として働いていた私としては「どうやって売ればいいんだ?・・・」などと四苦八苦した思い出もありますが、今や我先にと沢山の種類の恵方巻を見て選んでいるお客様を目の当たりにしますと「ここまで変わるものなのか」と改めてマーチャンダイジングの重要性と各企業の努力の効果を認識させられました。

スムーズに会計を済ませられるかとレジ側を見てみたところ、ひときわ険しい表情で恵方巻売場の様子を傍から窺っているこのスーパーを経営されている社長がいらっしゃいました。

さすが「現場こそが我が職場」と常々おっしゃっているほど。声をかけてみたところ、店内の混雑ぶりとは裏腹に不満のご様子。どうやら社員、スタッフの動きが気に食わないとのことでした。

「なぜ彼らはいつもよりこんなにお客様がいらっしゃってくれてるのに、もっと盛り上げようだとか、一人一人に声をかける、丁寧に商品説明しよう、などと動かないのか?」

「こんなにお客様が来てくれて嬉しい、ぜひおもてなしをしたいという商売人魂が無い」

「まるで与えられた仕事しかやりませんよ、という態度・・・困ったもんですよ」

 

しかし私は社長の想いとは逆に見えていましたので

「そうでしたか、私はてっきり彼らは社長の欲しがるいい動きをしてるなぁ」と思っていました。

社長は普段から社員、スタッフには「利益率を上げなさい」と熱く言ってるとのことでしたのでそういった点で見た場合、その通りに動いているように見えたからです。

「特に長身の彼は全体を見渡して、ガラス越しに見える調理室に入ってはスタッフさんらと満遍なく話されていますから」

「この店舗は一番利益を上げられてるんじゃないですか?」

次の日、社長から「伊東さんがおっしゃったようにあの店舗の総菜部門は他店より一つ突き抜けた利益を上げていました」と教えていただけました。

 

私は何も「一目見ればその人がどんな人かわかる眼」を持っているわけではありません。ただ、働く人達に対して持っているイメージは社長とは違っていたと思います。私は「どんな社員、スタッフでも会社が求めている行為、考えは必ずある」と見ているからです。

その前提で人を見ていますと「あの人にはどういう点で自分の力を発揮し、会社に貢献しようとしているのかな?」と探そうとするからです。

 

ところで組織のリーダーが「うちの社員やスタッフは与えられた仕事しかやらない人達ばかりだ」と嘆きたくなってしまうケースは多いのですが、理由は2つあります。

①考え、強みを見つけようとしない

彼らの考えを探ろうという行為よりも先に「こうしなさい ああしなさい」となってしまうパターンです。「いきなり指示する」とどのようなリスクが発生するのか? それは企業の経営者が一番よくご存じでしょう。自分の考えを聞かれることもなく指示、指導されるということがどう感じるのか・・・

30年前ならどの職場でも「ヤレ! ハイ!」でうまく回っていましたが、現在はあらゆる情報が氾濫しています。特に「俺はこう思う、私はこう考える」「私も賛同する。それは違うと思う」などの人それぞれの考え方に対する情報のやり取りが多くなっています。このため二つ返事で動くような人のほうがおかしいのでは? 社畜じゃないの? などといった言葉も生まれ、使われてる始末です。

 

②考えや強みはわかってるが、リーダーの示す方向にマネジメントをしない

こちらは①よりも危険です。ありがちなのは「この人にはこの人なりにいいところがあるから、今厳しく言っておくのはやめよう」などマネジメントをしない言い訳になる可能性が高いです。

何かと理由を付けてマネジメントせずに二の足を踏んでしまっていますと社員やスタッフの方から逆に「社長!もっとこうしたらどうでしょうか?」などと主張が強めになっていき、次第にリーダーの権限、主導権を「私がやりますよ」と握られていきます。 

 

「うちの社員やスタッフは目の前にある与えられた仕事しかしていないんじゃないの?」と感じた時、それは本当なのでしょうか?

彼らは「なぜ会社はわかってくれないんだ?」とただへそを曲げているだけかもしれません。

もしかしたら彼らは彼らなりに努力し、すでに会社に大きく貢献できているのかもしれませんし、彼らのアイディア、努力は社内に共有しただけでドカンと会社の利益が上がるものもあるかもしれません。

彼らの努力を知らないままマネジメントする

彼らの努力を知っている上でマネジメントする

業績を伸ばせて行ける企業はここから違います。