今週のマネジメント 「派遣を利用する選択肢」が無いチェーンほど大きく伸びる

 「社長、またお願いなんですが、このスタッフを2号店で雇ってもらえませんか?」

「伊東さん、先日ある店長にこう言われました」

会社の体制づくりが順調な様子を肌で感じ、ワクワクされている社長がおっしゃいました。

しかしその数年前までは

「店長、君のところにはヤケに元気なスタッフがいるじゃないか!」

「一体どうやって育てたんだ?」

 「いえ社長、あの人は派遣スタッフです」

「なんだ・・・」

がっくりされることもあったほど苦労されていたようです。

 

2/17の日経新聞に

 派遣時給、1,622円に上昇 1月三大都市圏、26円高 ITなど6職種伸びる

とありました。

チェーン業界には厳しい今、オフィスワーク系では派遣のニーズが増しているようです。

 

ところでこの派遣というサービスについてですが、当社は東京にオフィスがあるものの、私自身はそれまでは地方勤務の方が多かったのでお目にかかることや実際に利用することはありませんでした。

派遣をよく利用しているチェーン企業と関わってから「なるほど、こんな使い方をされてるんだ」と初めて実感したわけです。

利用する理由として多いのは「人手不足対策」

その時は「恵まれてる環境でお仕事されてるなぁ」と思っていました。

 

なぜなら派遣というサービスが身近に無いチェーンビジネスの現場では「いつ何時、働いている人達のスケジュールが合わなくなるかもしれない」恐怖が常に身近にあるからです。

特に店舗で働く各店長にとっては大きな問題です。

シフトが埋まらなければ、お店を自分一人ででもまわさなければならないわけですから、そんなことになってしまいますと確実に自身の健康面に関わってきます。下手をすれば命に関わってくることも・・・

だからといって「本部、助けて下さい」なんてそうそう言えることでもありません。

上司がよほど寛大でなければ「この店長はシフト管理もできないのか?」と評価され、人もロクにマネジメントできないダメ店長というレッテルを貼られてしまうかもしれないからで、店長としては避けたいものです。

そのため

 「どうにかシフト管理に頭を抱える日々から脱したい」

 「何かいい手はないものか?」

各店長はこのようなことを常にお考えになっていることでしょう。

 

社長はそれまで「どうしてもスタッフ不足でまわらなくなった店舗は派遣を利用してもよい」と決めていました。

最初は各店、緊急時に利用していたのですが、なぜかいつまで経っても人手不足から脱却できない店舗が何店もある状態になってしまっていました。

その理由は派遣サービス利用の常態化。

中にはスタッフの休日取得の調整交渉を一切せず、ただマネジメントが嫌で利用するケースもあり、本音を探ってみると

 「派遣を必要以上に使いまくってたら本部から助け船があるんじゃないか?」

などとあきれた考えの店長もいる始末。

 

「甘えられても困る」

それからというもの派遣利用数に制限を設けたのですが、今度は各店舗社員達のサービス残業が増加してしまい、店舗の状態は

 「頼むから週末のシフトに入ってくれないか?」

と懇願するケースが多くなっていました。

スタッフはたった一言「ムリです」と一蹴するだけで店長より優位に立てる状態です。

当然マネジメント面では

 「〇〇さん、挨拶しようよ」

 「もっと笑顔出してね」

 「この売場はこうしてほしい」

など強く言えなくなり、妥協に次ぐ妥協の日々となって、店の状態はどこもボロボロだったのです。

 

その後は一転

「派遣の利用は一切禁止」という切り札を封印し、誰もが働きたくなる人気の職場として磨き上げなければならない」と日々死に物狂いでスタッフ不足から脱却し、やっと最近になって

 「もっとシフトを増やしたい、空きはありませんか?」

 「うちの子を働かせてもらいたいんです」

と懇願されるほどになっということです。

ほんの数百メートル離れた同じ業種の店舗では人手不足で店長が深夜も働いているのに、社長のチェーン店だけは働きたい人待ち状態を見事に実現できたのです。 

 

私は何も派遣を使う行為自体が悪で、チェーン事業では使ってはならないと言いたいのではありません。

派遣という切り札は便利なものです。

ただ、それにいつまでも甘えることが危険であり

「日々、魅力ある職場に磨き上げられて行っているか?」

が重要だということです。

 

チェーンビジネスが成長軌道に乗っているかどうか?

その判断基準は、チェーンビジネス経営者が胸を張って

 「当社は1~2年前より確実に店舗勤務の応募者数は増えてきていますよ」

と言えてる状態です。