今週のマネジメント 第492号 「あれもこれも今すぐやりなさい。」 社長から店舗への指示は抑えるべきか?

「伊東さん、店舗への指示の量はどのくらいが適正ですか」
ある社長から質問がありました。
私の返答は
「常に10割です」
まず、どういった経緯での質問なのか。
それはお米の価格が激しく変化している今、当社がいかにお客様のために企業努力を注いでいるのか。
お客様にアピールしなさいとしていたところ、その徹底度が店舗によってバラツキがあったから。
店舗型のビジネスは、店舗が多くなっていくにつれ、社長の指示を徹底してもらうことが難しくなっていきます。
たとえば
・徹底度が中途半端だったり
・やれと言われたから渋々やりました感が満載だったり
・やってますと、その場しのぎもあれば
・POP1つ付けただけなども
・酷いと、社長からの指示が出ている事自体を誰も知らなかったなどのケースもあります。
なぜ徹底されないのか?
その理由は各社、各店によって違うことでしょう。
では、なぜ私の返答が10割なのか。
その理由は、店舗とは会社の重要な販売部門だから。
日夜大変だろうからと運営判断そのものを、店長にお任せしている独立した部門ではなく、会社の一部であり、社長の制御が効かない部門ではないからです。
しかしだからといって、今日から社長の指示、要望を全てお伝えしていきましょう、と言いたいわけではありません。
そんな事をしてしまっては、店舗従業員の皆さんが潰れてしまうということもありえます。
大事なのは、社長がどこに力をかけるのか。
そのポイントです。
店舗型のビジネスにおいて、業績を上げていきたい社長が力を入れるべきは、
・各店舗の顔色、状態を伺いつつ指示内容を調整すること
ではなく、
・社長の指示がいつであっても、多かったとしても、常に店舗が10割の達成を実現できる土台をつくること
です。
商売において、チャンスやピンチはいつやってくるかわかりません。
今こそ従業員達に休暇を、といったタイミングで全然動ける人がいない時に限って、またとないチャンスが到来したり。
やっとこさピンチを凌いだと思ったら、また新たなピンチが立て続けにやってきたり、
会社が今どういう状況下にあるかなどお構い無しです。
よって会社を成長させていくには、
・チャンスが訪れた時には、たとえ満足に動ける人が少なかったとしても、今動ける誰もが全力を出そうとしてくれて
・逆にピンチが訪れた時は、社長の指示を守り、嵐が通り過ぎるまで踏ん張り続けられる
そんな事前の工夫が必要なのです。
店舗型のビジネスの社長は、歯がゆいです。
社員やスタッフ達が、常に社長の近くにいてくれるビジネスとは違います。
社長がいくら「疲れてるだろうけど今しかないんだ」「全力で攻め続けてくれ」と想っていたとしても、その励ましは店舗という最前線で戦っている人達には届きません。
社長がいくら「辛いけど、今だけはみんな踏ん張ってくれ」と想っていたとしても、その慈しみが伝わるのは近くにいる人達です。
常に社長の指示の10割を店舗に伝えられ、達成してもらえる状態にする工夫。
これの実現は困難です。
もしかしたら、試してはうまくいかずの繰り返しの日々が続くかもしれません。
時にはうまく行かないだけで終わらず、挑戦したがゆえに招いてしまう望まぬ結果が会社を苦しめることもありえます。
ただ確実に言えることがあります。
「だからこそ店舗型のビジネスにはチャンスがある」
店舗型のビジネスをよく知っている方や経営者が、どこかの店舗を利用した時、「できていない箇所」が見え、聞こえてくるように、社長の想いを店舗で働く社員やスタッフにまでブレ無く伝えられ、徹底された店舗ばかりの企業はほとんどありません。
「あれもこれも今すぐやりなさい」と、社長の指示を10割出せる。
そして徹底することができる店舗型のビジネス企業。
そんな企業が他社に差をつけていけないわけがありません。
