今週のマネジメント 「社長も結局お金ですか」と見られずに、利益追求型の経営に変えられるポイントとは?

「伊東さん、今度出す新店ではこんなマネジメントをしようと思ってます。いかがでしょうか?」

ある社長のご相談でした。

社長は長い間「売上を上げなさい、お客様満足を上げなさい」といった経営を続けてきたのですが「何か違うんだよな~」「本音は『利益を上げなさい』だけど、どう伝えたらいいものか・・・」とお考えだったのです。

企業を経営されている方には社長のように

 ・本当は「利益を上げなさい」と言いたい

 ・しかし、そのまま伝えてしまったら「社長は結局お金ですか・・・」となって呆れられたり

 ・下手したら「こんな会社ついていけない」となったりするのでは?

 ・利益獲得ばかりに夢中になって利益倍増どころか、クレームが倍増となっては困る

さてどうしたものか・・・と二の足を踏んでる方もいらっしゃるのではないでしょうか?

社内のマネジメントを変えたいときのポイントは「全員一気に変えよう」ではなく「全員一気に変わりたがるようにする」です。

 

まずお勧めしない「全員の意識を一気に変えよう」の手法として挙げられるのは

 ・会議で多くの社員に社長講和で打ち出す

 ・社内通達で〇月〇日から変えます

 ・新しいシステムを導入して変えざるを得なくする

など。

なぜお勧めしないのか? その理由は輪が乱れるからにほかなりません。

 

昨年の12月、ニューヨーク州バッファロー地区にあるスターバックスに労働組合が発足されたのはみなさんの記憶にも新しい事でしょう。マスコミは、国内だけでも約8,000店もあるスタバに影響が波及するのではないか?と報道していました。

結成の発端には、お客様からの注文をモバイルオーダーできるシステムを導入したことでスタッフは「少々お待ちください」とすることができず、一方通行な注文ために負担が増加したからともいわれております。

スタバの例のように「これを導入したから使いなさい」など、何かのシステムを導入して従業員の意識を一気に変えようとするマネジメントについてですが、まずメリットを挙げますと「経営陣が時間を掛けなくて済むところ」です。いちいち一人ずつ対話する必要がありません。新しいシステムが導入されたからには四の五の言ってられず「やる」しかないからです。しかしデメリットは特定の人達にしか効果がでないところです。自分の考えが特に無く、他の人の動向を気にしては、それに合わせよう、波風立てずにいこうとする人達だけです。

問題なのは会社が最も欲する、結果を出し続けている優秀な社員やスタッフらがどう捉えるか?です。彼らは自分の考えをしっかり持っていますので、その考えの延長線上に会社の方針が無ければ「えっ そっちですか?」「何でそんなことをしなくちゃいけないの?」となり、納得が得られず本気を出していただけるどころか反旗を翻されることもあり得ます。

 

そこで「やっぱり一気に全員を変えようとしない方がいいよな」「当社は一人一人じっくり話し合って、納得を得つつやっていこう」とする企業もありますが、弊社はこの時間をかけてマネジメントする方法もお勧めしていません。

なぜならマネジメントの変更に時間がかかるほど社員、スタッフ間には理解度にズレが生じるからです。そのズレに敏感な人達は

 「方針は判りましたけど、私が先陣を切るのは嫌です」

 「私が動くときはみんなが理解してからがいいです」

 「先陣を切っちゃうと『あいつ調子にのってるよな』なんてつま弾きされちゃいそう」

などとなってしまい、せっかく理解してくれたのに動いてくれないという残念な事が起きてしまいます。

 

よってマネジメントの変更方法で弊社がお勧めしているが 「全員一気に変わりたがるようにする」です。

 

そんな都合の用意方法があるのか?と言われたら「ひとつずつ仕組みを創っていきましょう」・・・と言いたいところですが、実は時間をかけずに一気にできる方法も存在します。それは他社が簡単にマネできない「自社にしかできない一手」を打ち出すです。

 

実際にこのような会心のマネジメントをされる企業はあります。

最近の例を挙げますと貸会議室事業をされている株式会社 ティーケーピーです。

私は前職のセブンイレブンで勤めていた時代に何度もこの企業の貸会議室を利用していたのでなじみの深い企業でもあります。

2月の日経新聞の業績着地予測では 「TKP、貸会議室低迷で最終赤字39億円 22年2月期」 とあり、デリバリー事業やリモートワーク事業が業績を伸ばしていていて「やはりコロナ禍においてレンタルスペース事業は厳しいか?」見られている中でも、営業利益を1年で赤字25億から9億へと大幅に減少させられています。 

その業績をV字回復させようと打った一手は、河野社長が当時の菅首相に直談判したことです。

その結果、9月までの3ヵ月間で100万人ほどがワクチン接種でき、更には職域接種ができた多くの企業とパイプができ「新入社員研修や社員採用試験で貸会議室を使わせてほしい」という依頼が増えたとのことです。

 

一方、他のコロナ禍のレンタルスペース事業を行っている企業が打っていた手はどんなものか?といいますと「当社は3密回避を徹底しています」という方針でした。方針に沿って備品を揃え、宣伝し「どうぞご安心ください」と動いていたわけですが、TKPと比べてみてみるとかなりの違いがあります。

 

「それは大手企業だからできることでしょ!」とおっしゃられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ポイントは会社規模に応じた一手を打てるかどうか?というところではありません。

他社が簡単にマネできない「自社にしかできない一手」になっているかどうか?が重要なのです。

経営陣が自社にしかできない一手を打つと、おのずと社員やスタッフらは「私達は誰もマネできないこんなことができているんだ!」という独自意識が生まれ「もっと社外の人達から『あんたのところの会社、凄いよね』って注目されたい」と全員一気に変わりたがるようになります。