今週のマネジメント スタッフ不足の業界でも、自社だけ働きたい人待ちになれるのか?
12月18日の日経MJに 「居酒屋バイト争奪戦 時給上がり1400円超も」
12月26日の日経新聞には 「バイト時給1800円越も」 との見出しがありました。
緊急事態宣言が解除されてから各社業績を伸ばしていきたいところ、チェーン事業を運営している企業にはいきなり大きな壁が立ちはだかる状況です。
あるチェーン企業の社長がおっしゃいました。
「これからジャンジャン稼いでいきたいのに、現場では『人がいない人がいない』との声ばかり」
「何をするにしても、すぐ音を上げてきて困ったものです」
当社の人手不足は何も今に始まったことじゃないんです。
だからこそ前々からあらゆる手を尽くしてきました。
・セルフレジを一斉に導入したり
・自動洗浄機を買い揃えたり
・清掃業者と契約し、サービスを受けられる箇所や範囲を広げたり
・日々のルーティンで使用するシステムもより使いやすくしたり
「これでもか」と現場の負担軽減に本部はコストを割いてきたんです。
ところがそれでもスタッフ不足は解消されていかない。
求人コストはまるで湯水のごとく無くなっていきますよ。
より効果的な求人媒体を探しては、毎度安くはないお金を払っているのに
結果は 「一件も応募がありませんでした」 なんてザラですよ。
「伊東さんの周りのチェーン企業はどんな状況なんですか?」
社長のおっしゃる「周り」の意味は当社がお手伝いして自走式のマネジメントの仕組みを確立できた多店舗展開企業のことと意味します。
自走式ですからもちろんスタッフ不足という課題にも経営陣が頭を抱えることもありません。
私が返答したのは
「どこもスタッフの求人コストはほとんどかけていません」
「今年の求人コストは0円でしたよ」 とおっしゃる社長もいらっしゃいます。
なぜなら店舗では「スタッフの働きたい人待ち」状態となっているからです。
とはいっても、彼らの企業も仕組み構築前までは どこも求人、現場負担軽減に莫大なコストをかけていました。
仕組みが確立し、それがうまくいくと各店にこんなスタッフがまず最初に現れます。
「店長、シフトを増やしたいんです。 他の曜日で空きはありませんか?」
「なんでしたら別の時間帯でも働きたいです」
「知り合いの子が働きたいといってるんです。 雇ってあげてもらえませんか?」
チェーン店のアルバイトの経験をお持ちの方はお分かりかと思いますが
「自分がいつも入っている時間帯と違う時間帯で働きたい」
と言われることはなかなかありません。
その理由は仕事内容が異なるから…もそうですが、一番のネックは既存の時間帯で働く人達に
「君はこんなこともわからないの?」
と言われてしまうかもしれないからです。
よってアルバイト歴が長い方ほど勝手が違う環境で仕事をすることを避けたがる傾向があり、店長が「他の時間帯にも入ってもらえませんか?」と提案しても快諾される事が少ないのはこういった面があるからでもあります。
仕組み構築が終わった企業の各店の店長はスタッフ不足の穴埋めとして自らも一人の作業マンとして働くことが一切なくなります。
実はこれは「同じ看板をつけているチェーン内」でも起こりうる事です。
K社はある大手小売りチェーンのフランチャイジーです。
ほんの北に数百メートル離れた同じ看板を掲げている店舗では万年スタッフ不足状態。
「人がいない人がいない」とオーナー自身が深夜に自ら働いてレジもうっているのに、
一方K社の店長はというと、一人で複数の店舗の店長を兼任しています。
約2hで1店分の全ての業務を終えて、次の担当店に向かっています。
「どうしたらスタッフ不足に悩まされなくなるのか?」
社長に質問をいただきましたが「それは〇〇だからです!」とお応えしたいのは山々なのですが、実際にはクライアント企業の業務内容や、会社の規模によって違ってきますので一律に「〇〇したらうまくいきますよ」とは残念ながら断定はできません。
ただ一つ、各社に共通してはっきり言えますのは
「スタッフ不足の原因は業界や企業にあるものではなく、各店にあるものだということ」
チェーン事業を営んでいる企業が
・いずれ慢性的なスタッフ不足に陥ってしまうのか?
・それとも働きたい人待ちの人気チェーンになれるかどうか?
私は一発で見抜ける質問があります。
それは
「店舗のシフトに穴が空いた時、御社の対策はありますか?」
この返答に「現場任せです」とお応えになる企業はスタッフ不足の暗い未来が待っています。
なぜなら現場任せだと「一番やってはいけない行為」を店長が行ってしまいやすいから。
それは 「シフトに入ってくれませんか?」
この言葉を店長がスタッフにお願いすればするほど業績はみるみる下がっていくのです。
その理由は簡単で 主導権をスタッフに握られるから。
日ごろから
「店長に怒られたくない」
「あれこれ言われたくない」
と考えているスタッフにとってこの言葉はまさに大チャンス。
「Aさん。 日曜日、シフトに穴が空いたので入ってくれませんか?」
「え~ ムリです」
なんとも簡単なこと、 拒否するだけで店長より優位に立てるのです。
組織のリーダーがメンバーに頭を下げて断られるほど結束が緩くなる危険な状態になるのは当たり前です。
その後の店舗がどうなっていくのか?
「週末はこうしてがっちり売上を上げたいんです」
「みなさんよろしいでしょうか?」
店長がいくら熱く語ってもメンバーの反応は薄く、中には「やりたくないなぁ~」とあからさまに態度に示す人も・・・
「なんとかお願いします」
などと、一方的にお願いし続ける状態。
スタッフの落ち度を見つけても店長は強くマネジメントもできません。
なぜなら 「強く言ってしまうと、シフトに入ってくれなくなっちゃうかも・・・」
一方、業績をどんどん上げられている組織はどんな状態か?といいますと
リーダーは 「こっちだ! ついてこい!」 と力強く導いてくれる頼りがいのある存在です。
「シフトに入ってくれませんか?」
「この言葉は絶対に口にするな!」
「その代わり、こんな武器を用意したから」
対策がしっかり施されている企業ほど業績を伸ばせていけるのです。