今週のマネジメント 第476号 辞めさせ率が高い人を変えるには?

 「陰で後輩に辛く当たっているようなんです」

ある社長がおっしゃいました。

 

業績が良く組織もまとまっているかのように見えていたのに、ある社員の問題行動が原因で心を痛めている人がいるといった情報がチラホラと挙がってくることを気にされていました。

 

 

店舗型のビジネスは、それぞれが離れた場所で仕事をすることが多くなります。

そのため、社長の目の届かないところが多くなるのも避けられません。

 

普段は社長や上司には立派な姿勢を見せている人が、実は見えないところでは問題行動を起こしていた。

そんな課題を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

 

こういったケースは確証が無いため、有効な一手が打ちづらいです。

だからといって後回しにできる課題でもありません。

 

対応が遅くなるほど

 「辞めたいです」

そんな犠牲者が増えかねません。

 

また放っておきますと

 「なぜこんな人が普通に仕事を続けられるのか?」

 「会社はちゃんと我々を見てくれているのか?」

など、疑問を抱く人が多くなってしまうからです。

 

ここで早く解決せねばと、有効な一手を模索中の方に気をつけていただきたいポイントがあります。

 

それは

 「先手を打てる形になっていますか?」

 

最近もチラホラありますが某大企業や、ある有名人が失敗して、それをマスコミがこぞって取り上げて世間が大騒ぎといった事が起きています。

 

騒動が発覚した後になって、社長や本人が会見の場を開き謝罪。

今後はどうしていくのか?

そんなシーンを目にすることが多くなりました。

 

世間が注目する中、会見を開くのはとても勇気がいることです。

それでも発表するという選択肢を選んだのですから、よほどの心変わりがあったと言えるでしょう。

 

しかし残念な事に、いくら問題を起こした側が本気であっても世間は

 ・それならしょうがない

 ・水に流そう

 ・暖かく見守ってあげよう

となってはくれません。

 

 

同じように会社のマネジメント面を考えてみましょう。

問題を起こした人物が真剣に改心し、決意表明をしてくれて、更に社長が「みなさん暖かく見守ってあげてください」とフォローを加えたとしても、肝心なのはその人のまわりで一緒に仕事をしている人達の心境です。

 

もしかしたら

 「気にするな」

 「これから頑張れば良い」

と優しく言葉をかけてくださる方もいるでしょう。

 

しかし問題は、その他の人達です。

本人とは仕事上、直接関わっていない人達もまた同じように接してくれるでしょうか?

 

 

「事後に何とかしよう」とする形を選択して、うまく解決の流れが確立できていない企業は多いです。

 

ひとつ例を挙げますと

 「辞めたい人と言ってきた人に、社長が直々に面談している」

 

普段は関わることがない会社のトップがわざわざ本人の想いをじっくり聞いていただけるわけですから、貴重な場と言えます。

 

できることであれば、その後は

 「そうか、私は会社からこんなに期待されていたのか」

思いとどまってほしい所です。

 

ただ、ここで冷静に捉えてほしい事があります。

 

社長の説得によって、考え直してくれた人がいたとしたら

 「あの人は、社長に引き止められたから思いとどまった」

といった事になります。

 

果たしてこの事実。

傍からみた人達はどう感じるのでしょうか?

  

また、

  「会社はわがままを言ってれば振り向いてくれるんだ」

などと捉えられるリスクについてはいかがでしょうか?

 

私のお勧めしたいこと。それは、

 「事後に何とかしよう」

という形ではありません。

 「事前に何とかできる形を自力でつくりましょう」

です。

 

ただこれは簡単ではありません。 

これまで、世間という巨大な存在が変化したきっかけは何だったのか?

 

それは何かあってから、つまり「事後」ばかりです。

 ・ある会社が大問題を起こしたから

 ・ある有名人が大変なことをしでかしたから

 ・パンデミックが発生したから

など。

 

何も事件が起きないうちに、いくら

 「あれを用意しておくべきです!」

 「大変なことが起きてからは遅いんです!」

と叫び続けても

 「確かにそうだ」

 「すぐ用意しましょう!」

とはなってくれません。

 

事が起きる前に手をうっておくという行為は難しいことなのです。

 

 

本コラムの最後に私から

 「辞めさせ率が高い人をなんとかしたい」

 「自然に働きたい人が集まってくる会社にしたい」

とお考えの元、これから何か一工夫しようとしている社長にお伝えしておきたい事があります。

 

社長は

 ・事後に優しく接してくれる人

 ・問題が起きないように事前に導いてくれる人

これからもお付き合いしていきたい人はどちらでしょうか?