今週のマネジメント 第491号 指導を厳しくしたのに、働きたい人が増えた店舗の事例

 「前はお店に行くたびにイライラしてたのに、今は緊張してます」

ある社長がおっしゃいました。

 

 「店舗はここまで出来ていて当たり前」

社長の求めるレベルを常に維持できている状態に変えられた今、こだわっているのは「いかにスタッフ達の見えない努力を見つけてあげられるか」

 

イライラがワクワクに変わったと喜んでいた社長でしたが今度は

 「私がスルーしてしまってはスタッフさん達を悲しませてしまう」

 「それだけはやってはいけない」

といった想いで、今は緊張感を持ってお店をまわられているとのことでした。

 

 

店舗型のビジネスにおいて

 「私が厳しくすると社員やスタッフ達がついてこれず、リタイヤしてしまうのでは?」
とお考えの社長もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

しかし私の意見は

 社長が厳しいから、社員やスタッフがリタイヤする

これは直結ではありません。

 

そもそも業績の良い企業の社長は厳しいです。

社員やスタッフはどうしたら社長の要求に応えられるのか?

知恵を絞り、挑戦を繰り返してくれるからこそ企業のレベルが上がっていくものだからです。

 

ではなぜ「社長が厳しい=リタイヤされる」と捉えてしまうのか?

 

実際に、私はこれまでそういったお考えの社長に、何人もお会いしたことがあります。

 

私はそこで気がついたことがあります。

 

それは

 ターゲットが不明確なまま厳しくしている

 

 

今、どの店舗型のビジネスでも昔と比べて営業時間を長く、営業曜日を多く取られているお店が多いです。

 

そうなりますと、シフト制の勤務形態を採用されているところがほとんどです。

 

その分、それなりの働く人達の人数を必要とされるわけで、

働く人が多くなりますと、仕事に対する考え方も様々です。

 

例えば

 ・何でも気がついて動ける人

もいれば、残念なことに

 ・スキあらば楽しようとする人なども

も潜んでいることでしょう。

 

さて、そこで社長が、単に

 「店舗はここまでできていて当たり前。厳しくしなさい!」

とお触れを出したらどうなるのか?

 

 「確かに社長のおっしゃる通りだ」

 「ちゃんとやらなければ」

と感じて、すぐに動いてくれるのはどんな人達でしょうか?

 

一方

 「また社長が何か言ってる」

 「現場の大変さがわかってるの」

などと捉えられ、今までと変わらない仕事をするのはどんな人達でしょうか?

 

 

では、各店長を含めた各組織のリーダーとして指導する立場にある人達はどうでしょうか?

 

リーダー達は、皆に社長の指示を徹底させなければなりません。

できれば全員に伝えてほしいところです。

 

リーダー達は

 「何回言ってもなかなか伝わらず、結局動いてくれない事が多い人達」

にまでも伝えてくれるでしょうか?

 

 「たった一言だけ伝えれば、すぐに判ってくれて、即行動を変えて結果を出してくれる人達」
だけに伝えて終わることなど無いと、いい切れるでしょうか?

 

 

問題なのはここからです。

 

もし、社長のマネジメントのターゲットが不明確なまま

 「店舗はここまでできているべきだ」

と、指摘を続けていたとしたらどうなるのか?

 

普段から社長の方針など無視。

自分の考えを優先として仕事をしてきている人達にとって、そんな会社は

 ・方針が打ち出されても、直接自分に何か言われるわけではありません

 ・その代わりに、誰かが動いてくれます

そんな人達は「社長の言う通り、自分がやらなければ!」となってくれるのでしょうか。

 

一方、社長の方針に常に敏感な人達にとってはどうでしょうか。

 ・方針が打ち出される度に、実行をお願いされるのは自分ばかりです。

  他の人達は今までと何も変わりません。

 

 ・方針が打ち出される度に「私は関係無い」と無視する人達がいて、そのしわ寄せが自分にばかりふりかかってくる毎日です

 ・気がつけばいつも自分だけ辛くて、まわりの人達はマイペースで仕事をしています

 

そんな人はこれからも「まず私がやらなければ」「この会社でずっとがんばっていきたい」となってくれるのでしょうか?

 

 

冒頭でご紹介した社長に対して、先日こんな質問をした人がいました。

 「◯◯社長、なぜ御社は働きたい人が集まるようになったんですか」

 

その時社長はシンプルに、一言でお応えになりました。

 「今まで手を抜いていた人達が頑張るようになったからです」