今週のマネジメント 良いアイディアが勝手に出続ける職場
「君のアイディアは儲かるに決まってるよ」
「よくそこに目を付けたね」
「そっちの君のアイディアもいいじゃないか」
こんな、世間の常識を覆すようなアイディアが社員、スタッフから絶え間なく出続ける職場にしたいんだ!
そうおっしゃったのは、飲食チェーンのM社長でした。
M社長は、コロナ禍においても果敢に攻めの経営を崩すことなく
他社が苦戦している中、新たな試みを始めていて
「当社が始めたこの形は、まだどの企業もやってませんよ」
「コロナ禍でも稼げる奥の手です」
「伊東さん、ぜひ使ってみてください」
と店舗にお誘いいただいた時のことです。
「この発想はすごいですね」
他県ではまん延防止が適用されている現在でも
お客様に、安心してお互いの親睦が深められる飲み会ができる形を実現していました。
「うちみたいに、あの手この手で何とかしようと必死にあがいている会社もあるんですよ」
「それなのに行政は、一緒くたに各社が従わざるを得ない措置を取るもんですから」
「努力している会社にとってはえらい迷惑ですよ。」
そう憤る社長に私は
「これは社長のアイディアですか?」
と質問したところ
「そうです」
「でも私はいつも思うんですけど、新しいアイディアを出す役目が私ばかりなのが気に食わない」
「本当は、社員やスタッフからどんどん出て欲しいんですよ」
と冒頭の主張に続く形になりました。
M社長がおっしゃるように
アイディアを出すこと自体に役職はあまり関係ありません。
ところが誰にでもチャンスがあるはずなのになぜか
「儲かるアイディアを出す役はほとんど社長」
という状態の企業が多いです。
そして社長の次に幹部。
社員やスタッフからはほとんど上がってこない。
たまに出てきたアイディアは、どこかで見たような、聞いたような安易な内容ばかり。
「絶対儲かるだろう」というインパクトに欠けている・・・など
どの企業も大体このような形になってますので
「自社もそんな状態です」
となっていては、とても他社と大きな差をつけて利益を上げていくことは難しいです。
M社長から
「伊東さん、社員やスタッフから良いアイディアがポンポン出てくるような方法はありませんかね?」
「社長、良い方法をご紹介することはできませんが、うまくいった事例はありますよ」
それは、小売り業界のチェーン企業を経営しているT社の事例です。
T社が行ったのは
個人が素晴らしいアイディアを出しやすくする形ではなく
様々な人達がちょっとしたアイディアを出しやすくし、そして誰もが参考にできる仕組みを構築し、実装したのです。
例えば
Aさんは、何人かのお客様が売場で足を止めてくれる工夫をしました。
Bさんは、Aさんのアイディアに肉付けして、お客様が商品を手に取ってもらいやすくなる工夫を施しました。
Cさんは、そんなお客様に「どうぞお試しください」とスタッフが声をかけやすくなる工夫を重ねました。
などです。
T社は、この仕組みによって売りたかった商品が今までの倍以上の販売数にすることができました。
そして今でも、そのアイディアの連鎖は勝手に毎日発生し続けています。
その結果、T社の利益は倍増するほど伸びたのです。
M社長は
「なるほど、アイディアの連鎖ですか・・・」
「そうです」
「チェーン事業の『働く人が多い』という優位性を、T社はうまく仕組みに組み込むことが出来た結果ですね」
働く人数は他の企業よりも多いけど、良いアイディアを出せる人は少ない・・・
とお考えの経営者にとって有効な一手です。
業績を躍進させていける企業は
いかに良いアイディアを出せるか?よりも
いかに良いアイディアを出せる土壌を創るか?
そもそもの考え方から差をつけようと動いています。