今週のマネジメント チェーン店の店長という立場が、面白すぎてやみつきとなる企業には「伝説の武器」がある
「実は、その人達は店長ではないんです」
店長に求められる条件を満たしてはいないが、店舗の責任者が不在となってしまうのを避ける為、やむを得ず一時的に店長を任せている。
長らくチェーンビジネスを経営している社長には、そんな対策をとって窮地を潜り抜けて来たからこそ今がある、という方もいらっしゃることでしょう。
平成20年1月チェーン事業を営んでいる全企業には激震が走りました。
東京地方裁判所で、日本マクドナルドの店長が労基法上の管理監督者には当たらないとして、残業代等約750万円の支払いが命じられたからです。
それまで「店長は管理職だ」という位置づけだった企業は、店長の対偶についての見直しと改善を余儀なくされ、今日まで15年もの月日が経過したわけですが、その変化に「会社としてどう舵をきったのか?」その結果が鮮明に現れてきました。
舵の切り方とその結果は次の3つに分けられます。
1.対策を取って効果が表れた
2.対策を取ったのに効果が表れていない
3.何も変えていない
当時私は前職のセブンイレブン本部の直営店の副店長で、もうすぐ店長という立場でしたし、会社がどう対応したのか?などは自分自身にダイレクトに関わってくることでもあったのでよく覚えています。
ではセブンイレブン本部が上記の1~3のどれに当たるのか?
現状の業績や数字から鑑みますと、私の見方ではありますが残念ながら「2」と言わざるを得ないでしょう。
ここで「伊東さん、いくら何でもあんな大事があったのに、3の何も変えていないなんて企業なんかあるんですか?」と疑問を持たれた方もいらっしゃることでしょう。
実は3の企業は少なくないです。
どんな企業が「3」に当たるのか?
その1例を挙げますと 「ルールを付け足しただけ」 です。
それまで「店長、結果を出しなさい」 から
判例後は「店長、時間内に結果を出しなさい」に変えた等です。
大変革を余儀なくされたタイミングの前までの時代、チェーン店の店長を自ら経験してきた方ならわかると思いますが当時は、結果を出したい店長にとって「時間」はとても強力な武器でした。
「とにかく店にいる」「常に居る」「四六時中、居る」という手段をとることで、会社から与えられた目標が、まだ今の自分には手が届きそうもない高い目標であったとしても、何とか背伸びをして結果出すことができたからです。
実は私もその「時間」という強力な武器を何度も使ってきた立場ではありますが、上には上がいらっしゃるもので、一番驚いたのは「いつの間にか立ったまま寝ていて、お客様に起こされたことがありましたよ」とおっしゃる方も。
とても現代の若いリーダーには考えられない事かもしれません。
しかし当時は「チェーン店の店長なら、そのくらいやれて当り前だろ」「店長が店にいないなど、ヤル気が無い証拠」という風潮があったものです。
ここで重要なのは、チェーン事業を発展させていきたいとする経営者は
「当時、各店長が伝家の宝刀として扱えてた『常に店に居られるという強力な武器』に変わる『何か』を各店長に授けられているか?」ということです。
会社としてこういった捉え方が存在しないままだと「大変だ! 各店長には『時間』に代わる武器を一刻も早く授けてあげないと・・・」という考え方自体が生まれません。
そして恐いのは「結果が出せなくなったのは現場のヤル気が無いからではないのか?」と捉えてしまうことです。そういった企業のマネジメントにありがちとなってしまうケースが「店長、決められた時間内に結果を出しなさい」なのです。
この一言は、ただ単に判例前までの「店長、結果を出しなさい」という指導法にたった一言「決められた時間内に」を加えただけ・・・ではありますが、各店舗、各支店のリーダー達にとって、これほど重く、辛い言葉はありません。彼らにとってはとても大きな壁です。
例えれば、今までは猛獣を退治するのに「銃」を使えていたのに、今度は「素手でいけ!」と言っているようなものです。当然、こんな離れ業ができる達人はそうそう存在しません。
更に危険なのは「それでも結果が出てこないのは、まだまだ会社側が甘いからではないか?」という方向性で捉え「より辛く!」「より厳しくすべきだ!」などと、指導の重みをエスカレートしていくことです。
そういった企業において、よく耳にする言葉としては
「今の店長達は、我々の時代と比べてヤル気が無い」
「昔の店長は責任感が強く、結果を出すまでは恥ずかしくて帰れなかったんだぞ」
「何としてでも結果を出してやる!という根性を見せろ」
このようなマネジメントを続けている企業に共通する点は「気合い頼み」です。
とても「戦略的、戦術的だ」・・・とは言い難いです。
チェーンビジネスの業績を上げていくうえで、外してはならないポイントは、
・業績UPの要である各店舗リーダーそれぞれの手に「強力な武器」が存在するのか?
・その武器はどれだけの大きな結果を出していけるか?
・その武器は「鋭くかつ、使いやすいのか?」
これらのポイントをとことんつきつめていくという姿勢が大事なのです。
そのポイントを芯に捉えている企業は、たとえ世の中にどんな大きな変化が起きようとも
「君達、そんな古くて重くて切れ味もない武器はもう使わなくていいんだ」
「今すぐ捨ててしまいなさい」
「それよりこっちを使いなさい!」
となっています。
そして、各店舗リーダーの手にはそんな「光り輝く武器」が常に握りしめられていて、
「え? こんな凄い武器を私達が使ってもいいんですか?」
「やった! コレがあったら結果が出せないわけが無いじゃないか!」
などと驚き、感動され、各店からはバンバン好成績が生み出され続け
「社長、また勝っちゃいました!」
「今度はこんな結果を出せました、いかがでしょうか!」
「私も店長になりたい」
など、我も我もと勝利報告が尽きなくなるようになっていくのです。
更に不思議な事に、その武器は社外や他社で使おうとすると、途端にうまく機能しなくなり「あれ? おかしいな? これで凄い結果を出せてきたのに・・・」となってしまう流出防止機能さえも盛り込まれているのです。
ところが残念なことにあの判例後以来、そんな勝ち名乗りを上げ続けられている好調チェーンはほとんど存在しません。
逆にたまに耳にする声は?といいますと
「チェーン店の店長なんてやりたくない」
「今の店長は、スタッフよりも立場が弱い時代なんだ」
「もし、こんな事を言われたらもうお手上げですよ」
「もはや、力を発揮してくれている・・・ではなく、何とかお願いして働いてもらっている・・・そんな感覚ですよ」
そんな好成績を上げられないままの企業に寄って来るのは何か?と言いますと、ゲームによくある「ここから一発逆転の目が!」というチャンスではありません。
現実は過酷な自然界のように、抵抗力が衰えて弱った生物に寄ってくるのは「更なる追い打ち」です。
それは例えば
「え? そう動くと私達は店長より優位に立てちゃうんだ」
「さすが〇〇先輩だ。 私もマネしよう」
日本のチェーンビジネスを揺るがす一件から15年以上が経過しました。
御社のチェーン事業ではすでに各店舗リーダーが大喜びするような武器は出来上がっていますでしょうか? そして、すでに全員の手の内にそれは存在していて、各店舗から次々と好成績が上がってくる状態となっていますか?