今週のマネジメント 人手不足の今、多店舗型事業を伸ばせている社長の「狂った思考」 その原点とは?

 「あの社長は何もわかっていない」

 「現場はパンクするに決まってる」

周囲から見た時、ついそんな声が漏れてしまうような一手を繰り返すS社。

それはまるで人手不足の時代に逆行しているような、多くの人手が必要となってしまう一手ばかり。

 

ところがS社は失速するどころか、日々業績をドンドン上げて差をつけていく一方。
一体どこから人手を捻出しているのか?

多店舗型ビジネスには、稀にそんな企業が存在します。

 

現在、多くの企業がコストをかけて省人化、無人化を進めているのに、業績を伸ばすことができていません。

経営者としては無人化を進めて人手の捻出ができた分、新たな攻めの一手をうちたいところです。

ところが人手の捻出できて新たな一手をうてるどころか、長年続いている人手不足状態さえも解消できず、「無人化を進めているのに、なぜか依然人手不足のまま」という不思議な状態の企業も。

 

 「一体店舗では何が起きているのか?」

 

疑問に思った社長が店舗を視察してまわったりしようものなら、辛い現実が目に入ってくることでしょう。

それは例えば、無人化が進んだ分、「楽になったから」と手抜きが横行していたり、おしゃべりに夢中になっていた。必要以上に休憩をとられていたなど。

 

では、他社と差をつけている企業の社長は何が違うのか?

 

それは「ライバル企業達の弱点をよくわかっている」です。

社長の本音に、無理矢理スピーカーをつなげてみるとこうなります。

 「ライバル企業達は、多くの人手を必要とする仕事なんかできるわけがない」

 「できたとしてもせいぜい2~3人が結束したくらいの力だけ」

 

 「会社全体はもちろん、店舗でも『組織の全員で、何かを成し遂げよう』という結束ができないんだ」

 「だから、我々はその逆を突けばいい」

 「数十人、数百人規模の結束が無ければ成り立たない、そんな一手ばかりうっていけ!」

 

 

さて、ここで疑問を持った方もいらっしゃるでしょう。

 「なぜ多くの多店舗型企業は、従業員達全員の結束を得られないのか?」

 

その理由の一つに挙げられるのは

 「リーダーは自分の考えを明示しておく」

これが経営者にとって、大きな壁になっているからです。

 

これはマネジメントの基本です。

しかしこの基本は簡単なようで難しいことです。

ほとんどの組織のリーダーが、この基本ができていません。

なぜなら、企業で例えますと、社長がわざわざ自分の考えを明示しておかなくても、会社をまわすことだけならできちゃうからです。

逆に、社長が自らの考えを明示しておくという行為は、社長としての地位に居られなくなるリスクが跳ね上がってしまうからです。

 

そのリスクとは、例えば

 「社長の考えってどうなの?」

 「ちょっと・・・違うんじゃない?」

 「私は理解できない」

 「俺も、もうついていけない」

 「今の社長はおかしな人だ」

などと、否定的に捉えられるかもしれないからです。

 

ここで

 「伊東さん、だったら別にリーダーは自分の考えをわざわざ事前に明示する必要などないでしょう」

とつっこまれる方がいらっしゃるかもしれません。

その理由は細かく説明するまでも無いでしょう。
なぜなら

 「貴方は、リーダーが何を考えているかわからず、時には理由もわからないのに急に叱られたり、時にはまじめに頑張っているとは思えない他の人が評価されたりするような組織で、本気を出していきたいと思えますか?」

 

私は何も意地悪を言ってるわけではありません。

リーダーが自分の考えを明示しておくという行為は、商売においてお客様が「欲しい」と思った商品がいくらするのか?

あらかじめ値段が表示されているようなことと一緒で、当たり前の事だからです

逆に「欲しい」と思った商品に値段が表示されておらず、さんざん利用してから、さてお会計となった時に腰を抜かしてしまうような金額を言われる商売など、今現在存在するのでしょうか?

 

あるとしたら、ぼったくりバーでしょう。

「明示しておく」は商売の基本中の基本なのです。

 

ところがそんな商売を長年やってきている人でも、いざ組織のリーダーになった途端、その基本を忘れてしまい

 「自分の考えは表明しないけど、良いと思った時は評価するし、ダメと思った時はダメ出しはする」

という楽な道に走ってしまうリーダーが多いのです。

 

 

貴方はいかがですか?

組織のリーダーとして自分の考えをあらかじめ、明示していますか?

 

従業員の結束を得られ、業績を伸ばせている企業の社長に「自分の考えを明示していない人」など存在しません。

ぼったくりバーに「また行きたい」とはならないように、いつも何を考えているのかわからないリーダーに、ついていきたい、本気を出したいという人などいないのです。