今週のマネジメント 自社だけ店舗スタッフが増えていく募集法

景気の良い流れにのって、当社もバンバン稼いでいきたい!

今回うった一手には自信がある。これで結果がのらないわけがない

ところが結果を見てると、思ったほど数字がのっていなかった。

何故なのか?

原因を探ってみたところ、各店長が欠けたスタッフのシフトフォローに入っていて、まともに指揮が執れていなかったから。

 

チェーンビジネスの業績を上げていく上で欠かせない事。

それは「店舗スタッフの充足」です。

社長がどんなにすばらしいチェーンを確立できても、リクルート部門がどんなに良い立地に出店できても、商品部がどんなに良い商品、サービスを生み出せても、店舗のスタッフが充足していなければ数字につなげることができません。

数字獲得どころか、お客様に期待されてた分

 「せっかく買いに来たのに!」

 「一体どうなってるの?」

 「ここの運営会社はいい加減すぎるぞ」

など、逆に失望させてしまった・・・という事にもなりかねません。

各店長はもちろん、社長としても、店舗スタッフの不足は何としてでも回避したいところです。

その為、会社によってはスタッフの募集に大きなコストをかけていたり、募集業務を担う部署に人員も多く充てていたり、数年~数十年もスタッフ不足解消に長年取り組み続けているなど、大きなウェイトをかけている企業もあるのではないでしょうか?

 

一方、「我社は特にスタッフの募集コストはほとんどかけていませんよ」

もちろん専門の部署に多くの人員も充てていませんし、数年どころか数日も悩んだことがありません。・・・そんなスタッフ不足とは無縁のチェーンビジネス企業が存在します。

 

その違いはどこにあるのか?

 

1つ挙げますと、それはスタッフ募集の「形」が違うところにあります。

 

それがどういう形なのか? 比較してみますと、

スタッフが不足している企業は「誰でもいいから来てください」

スタッフが充足している企業は「貴方でなければダメなんです」

という違いです。

   

そんなことを、長年チェーンビジネス事業をされていて、スタッフ不足にずっと悩まされて続けてきた社長に私がお話しした際、社長はこうおっしゃいました。

 「なるほど、やってみます」

 

しかし、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、この変更は簡単に見えて簡単ではありません。

仮に、ただ募集の形を変えたとしても、いざ採用された人はこう思うでしょう。

 「あれ? 別に自分じゃなくても良くね?」

 「騙された!」

 

募集の形だけ「誰でもいいから」を「貴方でなければ」に変えても、中身、つまりチェーンビジネスのマネジメント面もそうなっていなければ意味がありません。単なる嘘ツキ企業となってしまいます。

今の時代ですからたちまちSNSで騒がれ、企業の信用はどんどん下がっていってしまう事になるでしょう。

よって、社長は店舗運営部門のリーダーを呼び出し

 「我が社のスタッフ募集の形を『誰でもいいから来てください』から『貴方でなければダメなんです』という形に変えなさい」

と指示して「ハイ、わかりました」となっても、自社の首を絞めるだけなのです。

 

そしてもう一つ大きな問題があります。

それは今現在、チェーンビジネスを営んでいる企業のほとんどが「誰でもいいから働ける形」として、すでに確立されている点です。

接客方法やレジ業務はもちろん、発注、販売、掃除に至るまで「いかに誰でもできるか?」を追求してきた企業がほとんどです。

よってそれを変えるとなると、根本から見直す必要が出てきます。

単に、社長が店舗運営部門のリーダーを呼び出して

 「君が責任者となって変えていきなさい。私が進捗状況をチェックするから」

などという形でチェーンビジネスのマネジメント面をバンバン変えていけるほど甘くはありません。いざ変えるとなると、ほぼ事業全体の大改革となります。

社長が主軸となって動かなければならないほどの一大イベントとなることでしょう。

それはとても大変な事であり、かつ手順を間違えてしまうと取り返しがつかなくなってしまう恐れもある為、当社はそうなってほしくないからと、当社主催の各セミナーの内容には全てその正しい手順を盛り込んでいます。

 

ここで「そんな大改革などやってられるか!」というお考えの社長もいらっしゃることでしょう。

私は別に「即変えた方がいいですよ!」などと触れ回りたいわけではありません。

「自社をどのようにしていくべきか?」それは社長が決める事です。

その想いが強いほど、自社を強化していけるからです。

よって、重要なのは社長が推し進める自社の方針が、世の中の流れと比較してどうなのか? 我が社はどうあるべきなのか?

かつての船の船長が、常に羅針盤から目が離せなかったように、それを確認し続ける必要があるということです。

 

 

ここで質問です。

あなたは「⚡電流戦争(War of the currents)」というワードをご存じでしょうか?

 

簡単に言えばエジソンとテスラのケンカのことです。

当時のアメリカでの電力供給の仕組みは、エジソンが開発した直流電流を使用していました。

しかし、テスラは「グラム発電機(発電機とモーターの機能を併せ持つ直流電流の発電装置)」がモーター回転時に火花を発しているのを目にして、そこにエネルギーの損失が起こっていることを見抜き、その5年後には世界ではじめての交流電流の発電装置を発明(二相交流モーター)し、これをもとに交流電流による発電・送電のアイデアを発展させていきました。

テスラが考えた交流電流による送電方法は、直流電流よりもコストがかからず、利用者の扱いやすい電圧に変圧できるというメリットがあります。

しかし、エジソンは直流電流の優位性を保つために、交流電流は危険だと広める活動を活発化させます。たとえば、死刑用の電気椅子に交流電流を採用させようと働きかけるなど、えげつない手法をとっていたのです。

 「あの発明家のエジソンが、そんな事をしていたなんて・・・」

びっくりされた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

しかしその後、テスラの努力の甲斐あって、交流電流の有用性と安全性は次第に人々に認められていきます。

1893年、シカゴ万博やナイアガラの滝での発電事業に交流電流が採用されると、世界中が交流へと大きくシフトしていくことになりました。

電流戦争の結末はテスラの軍配となって幕を下ろしたのです。

今現在、我々の家庭のコンセントが交流電流となっているのは、過去にそういった経緯があったからなのです。

  

ここで私が何が言いたいのか?といいますと、

「すでに世の中に普及しているモノが最良」とは限らないということです。

 

チェーンビジネスも同じで、

 ・スタッフ不足は何故いつまでも解消されないのか?

 ・どこに問題があるのか?

 ・そもそも人はどんな職場で本気を出したくなるのか?

そんな疑問に対する応えを、組織を率いるトップは「我社はこのままでいいのか?」「どうあるべきなのか?」を正しく見据えていなければなりません。

ただ単にウチはずっとそうしてきたから・・・とか、大手がそうしているからうちも・・・とか、ライバル企業がそうしているから・・・など、疑問視していなかったり、他社の真似を続けていると、エジソン時代の直流電流を主として扱っていた企業のように、一気に世の中に置いて行かれてしまう・・・

そんな恐ろしい未来が待っているかもしれません。

 

そして逆に「今普及しているチェーンビジネスの形がそもそも時代にあっていないのではないか?」と疑問を抱き、いち早く行動を起こせた社長は、テスラが推奨した交流電流市場にいち早く参戦した企業達のように、他社と圧倒的リードを広げ、飛躍していくことができるのです。

 

 

コラムをご覧の貴方にもう一つ質問です。

あなたは 「誰でもいいからきてくれ」 と 「あなただから来て欲しい」

どちらの誘いが嬉しく、本気を出したくなりますか?

 

  

スタッフ不足に全く困っていないチェーンビジネス企業が発するスタッフ募集の形はまるで魔法ような表現となっています。

その募集を見た、聞いた方々は、誰もが「これは・・・私の事じゃないのか?」と思ってしまうほど。

そして、まるで吸い込まれるように気が付いたら会社の門をたたいているのです。

巷に溢れているような「元気のある人、やる気のある人募集!」といった、一部の人達から見れば「それは私の事じゃないな」と捉えられるような、せっかくの喉から手が出るほど欲しい人材なのに、会社側がいつの間にかフルイにかけてしまっているような自爆表現にはなっていません。

そして当然社内のマネジメント面もそうなっています。

 「この結果は、私だからこそ出せたんだ!」

そんな「その人ならではの喜び」が次々に生み出されていきます。

それを傍から見ている社員やスタッフ達は

 「さすが〇〇さんだ、負けていられない」

 「じゃあ私も」「僕も」「俺も」

と連鎖されていきます。

肝心のチェーン店の各店長は店舗組織全体の指揮に専念できるようになります。

 

つまり、スタッフ募集の形が「貴方でなければダメなんです」を実現できている企業は、社長がいちいち気にかけたり、手を掛けずとも勝手に業績UPの善循環がなされる「稼げる組織」となっているのです。

 

 

社長は、自社のチェーンビジネスの未来をどうイメージされていますか?

 ・「誰でもいいから」  の、敷居が低いままの未来ですか?

 ・「貴方でなければダメ」と、より高みに登っていける未来ですか?